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転生したら猛毒ハーレム♡  作者: たんすい
第4章:集う仲間と深まる謎
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第41話:ラザムとの戦い

玉座の間の空気が、刃のように張り詰める。

ラザムは長剣を抜き、ゆったりとした足取りで間合いを詰めてくる。

その動きには一切の隙がない


「震えているぞ、小僧」

口元に笑みを浮かべ、ラザムが挑発する。

「仲間を救いたいと口では言うが……お前の腕で何ができる?」


俺は短剣を構え、喉の奥で息を押し殺す。

「やってみなきゃ、わからないだろ」


刹那、空気が爆ぜた。

ラザムが一息に距離を詰めてくる。速い!

身をひねって直撃を躱すが、あえて剣先を腕にかすめさせ、血しぶきを上げた。


「ほう……わざと当たりに来たな」

「ああ。お前に“恩”を返すためにな」


俺は低く呟き、魔力を解き放つ。


「――素早さ強化クイックブースト、対象・ラザム」


ラザムの瞳が、侮蔑から驚愕へとわずかに揺らぐ。

「……何の真似だ?」


この瞬間のために、俺は一人で訓練を重ねてきたのだ。

対象者への魔法の多重がけ――常識外れの荒業を。


「――素早さ強化クイックブースト! 対象、ラザム!」

(そうだ、こういうときの為に俺は1人で訓練してきた)


ありったけの魔力を込めて、立て続けに同じ魔法を放つ。

次の瞬間、ラザムの身体が弾丸のように跳ねた。

いや、壁に当たった銃弾のように、予測不能な軌道で空間を暴れ回る。魔力に肉体を引きずられ、その動きはもはや彼の意思の範疇を超えていた。


「もっとだ!――素早さ強化クイックブースト!」

「クソッ……! 体が……!」


ラザムは壁を蹴って軌道修正を試みるが、殺しきれない勢いのまま燭台に激突。油を浴びて床を転がる姿は、さながら暴走した魔弾だ。

彼の瞳が、一瞬、獣のように見開かれる。己の肉体に裏切られたことへの、純粋な恐怖の色が浮かんでいた。


「……ッ、止まれ……!」


その叫びは怒号ではなく、もはや懇願だった。

だが身体は命令を聞かず、弾丸のように空間を跳ね回り続ける。

威厳ある王は、ただの暴走する傀儡へと変わり果てていた。


油で滑る手足をもたつかせ、必死に立ち上がろうとするラザム。その隙を、俺は見逃さない。床に片手を突き、奴の影を睨みつける。


「――重力の枷グラビティ・バインド!」

「ぐっ…! 体が…鉛のように……!」


見えない力で床に縫い付けられるラザム。

「――これで終わりだ!」


俺は壁の松明を引き抜き、身動きの取れないその体めがけて投げつけた。

轟音と共に炎が燃え広がり、ラザムは生きた松明となって断末魔の叫びを上げる。


そのとき、ラザムの影から、ベニーの姿が音もなく現れた。

俺はラザムを縫い付けていた重力魔法を解き、叫ぶ。


「今だっ!!」


ナイフの煌めきが走り、氷のように冷たい声が響いた。

喉斬りスロート・スライス


煌めいた銀閃が、炎の轟音にかき消されそうな鈍い音を立てて肉を裂く。

炎に焼かれながら、ラザムは絶叫一つ上げなかった。崩れ落ちたのではない。最後の場所を選ぶように、ゆっくりと膝をついた。その瞳は、彼を包む炎よりも激しい光を宿し、俺を射抜いていた。


切り裂かれた喉から、血と煙の混じった呪詛が漏れる。

「……お前のことは……決して忘れん。

 死んでも……魂を追い詰めて……必ず、殺す……」


それは断末魔ではなかった。

滅びゆく王の、最後の呪詛――そして勝利の確信に満ちた哄笑だった。


「さっさと燃え尽きろ、化け物が」

ベニーは冷たく吐き捨てると、追撃のナイフをラザムの眉間に突き立てた。


「旦那さんの魔法、本当にえげつないですね」

「お前の刃もな。見事だ、ベニー」


俺たちは床に転がった鍵を拾い上げ、地下牢へと続く鉄扉へ急いだ。



地下市場の最奥――。

重厚な鉄扉の前に立ち、俺は固く鍵を握りしめた。

ベニーが託してくれた、希望への鍵だ。


「ここからは旦那さんの役目です。

 ……ちゃんと王子様の役目、果たしてくださいよ」


その言葉が脳裏に響く。柄じゃない。

だが、今だけは――俺が揺らぐわけにはいかない。

深く息を吸い、扉を押し開けた。


ひやりとした空気が肌にまとわりつく。

壁に打ち付けられた鎖。その先に繋がれた、俺の全てだった。


サリヴァは唇を噛み締め、ムーは虚空を見つめ、

ショウコは震えも忘れたように項垂れていた。

そしてファカ――赤い髪が床に垂れ、魂の灯火が消えかけていた。


「……みんな」


絞り出した声は、自分でも驚くほどかすれていた。


その声に、ぴくりと最初に反応したのはファカだった。

伏せていた顔がゆっくりと上がり、虚ろだった瞳が、俺の姿を捉える。


揺らぐ焦点が、やがてはっきりと像を結んだ瞬間、

その瞳から、堰を切ったように大粒の涙が溢れ出した。


「ご、しゅじん……さま……?」


信じられない、とでも言うように。

夢を見ているのかと疑うように。

その声は、希望と絶望の狭間で震えていた。


「待ってろ、今助けてやる」


俺は最初に、最も心を閉ざしているショウコの元へ駆け寄った。

鎖を外し、肩に触れると、彼女は幼子のように泣きじゃくりながら胸に飛び込んできた。


「旦那様……! もう、会えないかと……」


「もう大丈夫だ。俺は生きている」

震える背中を強く抱きしめる。


サリヴァは鎖が外れると、無言で俺の胸に額を押し付けた。

その肩が、悔しさと安堵に細かく震えていた。


ムーは俺をそっと抱きしめ、涙を流しながら呟いた。

「主様……ごめんなさい。わたくしが盾なのに……」

「お前がいたから、みんなの心は折れなかった。ありがとう」


ファカは鎖が外れると、震える手で俺の頬に触れた。


「ご主人様……また、生きて戻られましたね……」

「当たり前だろ。お前を置いていくわけがない」


彼女は笑おうとしたが、すぐに崩れ、俺の胸に顔をうずめて嗚咽を漏らした。

「怖かった……ご主人様のいない世界は、暗くて、寒くて……本当に、怖かったのです……」


四人の温もりが、俺を包む。

裸であることなど気にならなかった。

ただ、傷ついた彼女たちを、力の限り抱きしめ返す。


俺は自分の上着を脱ぎ、最も震えているショウコの肩にかけた。


「帰ろう。俺たちの家に、みんなで一緒にだ」


その言葉に、四人は涙に濡れた顔で、しかし確かに頷いた。


外に出ると、ベニーが馬車を用意して待っていた。

乗り込んだ馬車の中には、静かに座席に横たわるあの翠玉色のエルフの美女がいた。


俺たちは、お互いの存在を確かめ合うように寄り添い、

傷だらけの体と心を温め合った。


馬車は、光の差す俺たちの拠点へと、静かに走り始めた。

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