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転生したら猛毒ハーレム♡  作者: たんすい
第3章:アマゾネスの戦士と新たな拠点
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第30話:幽霊と暮らしていた少女

俺とショウコは屋敷を巡り、祈りを捧げていった。

俺の支援魔法で祈りの効果は増幅され、ゴーストたちは安堵の笑みを浮かべながら光の粒となって消えていく。


そして、最後の部屋――屋敷の主が暮らしていたと思しき一室。

厚いカーテンの隙間から差し込む月光が、壁一面の大きな肖像画を照らしていた。


額縁は金色に鈍く輝き、そこには三人の子を抱く夫婦が描かれている。威厳を漂わせる父と、穏やかな微笑みを浮かべる母。その間には、無邪気な笑顔を見せる子供たち。三人目――一番小さな少女の顔に、俺は思わず目を止めた。


「……旦那様、この子、なぜか私に似ていますね……」


ショウコは絵に吸い寄せられるように近づき、指先をそっと少女の頬へと伸ばす。ほんのわずかに触れた瞬間、彼女の肩が震えた。視線は肖像画の少女から離れず、呼吸が浅くなる。


「胸が……痛いです。どうしてでしょう……」


その声はかすれ、今にも涙に溶けそうだった。俺はそっと彼女の隣に立つ。

「きっと、大切な人だったんだろうな」

「……誰なのか、わからないのに……どうして……」


そのとき、部屋の空気が凍りついた。

振り向くと、淡い光に包まれた二つの影が立っていた。

肖像画の夫婦と同じ顔だった。


ショウコは息を呑み、その場に膝をつく。震える手を胸に当て、俺の支えを借りながら、最後の祈りを捧げる。言葉はかすれ、時折嗚咽に途切れた。


二つの影は、悲痛な表情でショウコに手を伸ばす。まるで別れを惜しむように…。そして、無念のまま淡い光の粒となって静かに消えていった。


残されたのは、骨身に染みる静寂と――胸の奥に残る、耐えがたい喪失感。ショウコはしばらく立ち上がれず、ただ額を押さえ、静かに涙していた。


「……やっぱり、わかりません。これで、よかったのでしょうか?」


俺は彼女の肩に手を置いた。

「思い出せなくてもいい。大事なのは、これから一緒に作っていく時間だ」


ショウコは小さく頷き、泣き笑いのような表情を見せた。それは、長い孤独の終わりを告げる、優しい顔だった。



浄化を終え、屋敷に本当の静寂が戻った夜。俺はショウコに客間の一つを割り当て、別々の部屋で眠りについた。疲労もあって、柔らかいベッドに身を沈めるとすぐに意識は途切れた。


どれくらい時間が経っただろうか。


コン、コン……。


暗闇に響いた控えめなノックの音に、眠りの淵から意識が引き上げられる。ゆっくりと身を起こし、問いかけた。


「……誰だ?」


返事はない。だが、扉の向こうに誰かがいる気配は確かにあった。俺はベッドを抜け出し、用心深く扉に近づいて、そっと開く。


そこに立っていたのは、やはりショウコだった。

簡素な寝間着をまとった彼女は、扉の前で立ち尽くし、ただじっと俺を見つめている。月明かりに照らされたその瞳は、助けを求めるように不安げに揺れていた。


「ショウコ…? どうしたんだ、眠れないのか?」


俺が優しく声をかけると、彼女はこくりと小さく頷く。そして、俯きがちに、消え入りそうな声で呟いた。


「……部屋が、静かすぎて……怖いんです。それに…とても、寂しくて……」


ずっとゴーストたちと過ごしてきた彼女にとって、完全な静寂と孤独は、今夜が初めての経験だったのかもしれない。長い間一人で屋敷を守ってきた気丈な少女の、今にも泣き出しそうな横顔に、胸が締め付けられる。


俺はためらわなかった。

「わかった。少し話そうか」


そう言って彼女の手を引いて部屋に招き入れると、ショウコは驚いたように顔を上げたが、抵抗はしなかった。


「もう一人でいなくていい。眠れるまで、ここにいてあげるから」


そう言ってベッドの脇にあったソファを指さす。しかし、ショウコはか細く首を横に振った。そして、俺の服の袖を、震える指でぎゅっと掴む。


「……旦那様」

「ん?」

「……一緒に、寝ては、いけませんか…?」


潤んだ瞳で、上目遣いに見上げてくる。

その訴えは、あまりにも切実で、無垢で、断れるはずもなかった。


俺は一つため息をつくと、苦笑しながら彼女の頭を優しく撫でた。

「…わかったよ。ただし、何もしないからな」


その言葉に、ショウコの顔がぱっと輝く。俺がベッドに戻り、壁際に体を寄せると、彼女はおずおずと、そして少し照れくさそうにベッドへ上がり、俺の背中にそっと身を寄せた。

挿絵(By みてみん)

冷たい額が、俺の寝間着越しの肌に触れる。そして、小さな顔をうずめるようにして、ぎゅっと背中にしがみついてきた。


「……嬉しい、です」


背後から、彼女の小さな体温がじんわりと伝わってくる。布団が擦れる柔らかな音、そして彼女から香る微かな花の匂いが、静かな部屋に満ちた。いつしか、彼女の呼吸のリズムが、俺の鼓動と重なっていくのを感じる。


俺が「おやすみ」と声をかけると、背中越しに小さく頷く気配がした。間もなく、すーっ、すーっと穏やかな寝息が聞こえ始める。


長い孤独の夜は、もう終わったのだ。

俺は彼女の無防備な寝顔をそっと見やり、この温かい日常を必ず守り抜こうと、心に強く誓った。



朝、目が覚めたとき、隣にショウコの姿はなかった。

彼女が寝ていたはずのシーツには、皺一つついていない。まるで、最初から誰もいなかったかのように。


俺は昨夜の出来事が夢だったのかと、しばし呆然とした。

だが、枕元に目をやった。

そこには、彼女のものと思しき、一本の長い黒髪が落ちていた。

俺はそれを指先で拾い上げる。


俺は急いで部屋を出た。あの夜が夢だったのか、それとも現実だったのか――確かめずにはいられなかった。


扉を押し開けた瞬間、そこには、笑みで迎えるショウコがいた。

ふわりと香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

挿絵(By みてみん)

「おはようございます、旦那様っ」


(食事は、二人分だけ…)


それが、今の彼女の「答え」だった。


二人は席につき静かな朝食、窓の外では、庭の花が風に揺れている。

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