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転生したら猛毒ハーレム♡  作者: たんすい
第3章:アマゾネスの戦士と新たな拠点
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第27話:青い瞳と甘い蜜

その日の午後、俺はサリヴァを連れて――二人きりで街へ出かけた。


ヴァリスの街は活気にあふれ、石畳の通りには人の声と笑い声が絶えない。

ついこの間まで命を賭けた死闘を繰り広げていたのが、まるで幻だったかのように。


(……不思議なもんだな。血と炎の匂いの中にいたのに、

今はこんな日常が広がってる。)


ファカとムーには宿で休んでもらった。

今日だけは、サリヴァとの時間を大切にしたかったからだ。


横を歩く彼女は、まだ街の喧噪に戸惑っているようで、きょろきょろと辺りを見回している。露店の色鮮やかな果物や、笑顔で呼び込みをする商人たちに驚きの光を宿す。


「……こんな場所、初めてだ」

ぽつりと漏れた声は、戦場で見せる勇ましさとは違う。

そこにあったのは、年相応の少女の素直な感情だった。


俺は思わず、そんな横顔に目を奪われてしまう。



俺たちが足を向けたのは、中央広場にずらりと並ぶスイーツの屋台だった。

山盛りに積まれた色とりどりの果物。その香りは、焼きたての生地と蜂蜜の甘さが混ざり合い、空気をふわりと満たしている。サリヴァの青い瞳が、好奇心でキラリと光った。その心は、もう目の前の甘美な光景に完全に捕らわれていた。


「おい、なんだあれは!? すごくいい匂いがするぞ!」


野生の獣が獲物を見つけたかのように、サリヴァは俺の腕に飛びついてはしゃぐ。その姿には、戦場で荒々しく戦っていた彼女の面影はまるでなかった。


俺は蜂蜜たっぷりのフルーツタルトを一つ買い、差し出す。陽光を浴びて、タルトの表面はまるで宝石のように輝いている。


「なっ……! なんだこれ……ジャングルの果実でも、こんなに甘いのはなかったぞ!」

挿絵(By みてみん)

サリヴァの目が驚きで丸くなる。次の瞬間、満面の笑みで俺を振り返った。


「おい、お前も食べてみろ!」


言葉を待たず、彼女は食べかけのタルトを俺の口に押し付ける。


「ちょ、おま……!」


抵抗も虚しく、口の周りはクリームまみれだ。それを見たサリヴァは、声をあげて笑う。


「あははっ! なんだその顔、クリームだらけじゃないか! まるで白い髭の爺さんだな!」


その天真爛漫な笑顔に、俺は思わず言葉を呑んだ。


「これ、みんなの分も買って帰ろうぜ!」


頬をパンパンに膨らませ、タルトを頬張る姿は、もはや戦士ではなく、ただの食いしん坊な少女そのもの。


道行く人々が微笑ましそうにこちらを見ているが、そんな視線すら今の俺にはどうでもよかった。しばらくの間、俺は――太陽の下で咲く花のような彼女の笑顔から、目を離せずにいた。



昼食は、店で落ち着いて食べることも考えた。

だが――サリヴァに食事のマナーなんて、できるはずがない。


(恥をかかせるのも、な……)


結局、屋台で買ったものを食べ歩くことにした。


もっとも――ここは異世界。

俺自身、見たこともない料理ばかりで、食べ方すらよく分からない。

串焼きやパンっぽいものを適当に買い、二人で分け合って歩く。


俺は串を手に取り、サリヴァの様子をうかがった。

彼女は何でも豪快に頬張り、気に入ったものを片っ端から俺に勧めてくる。


「おい、これも美味いぞ! 食え!」


「おいおい、無理やり口に押し込むなって!」


そして――不意打ち。

俺の口の端についたソースを、サリヴァがためらいもなくぺろっと舐め取ったのだ。


「なっ……!?」


「おい、少しは恥ずかしがれよ。文化の違いか……」


「なんでだ? 俺様がいた所では、獲物は群れで分け合うのが当たり前だ」


悪びれもなくそう言われると、感覚が狂いそうになる。


「じゃあ、口と口をつけるのも普通なのか?」


――その瞬間、サリヴァの顔がカッと真っ赤に染まった。


「~~っ!」


耳まで真っ赤にして、ぷいっと視線を逸らす。

その初々しい反応に、なぜか俺はホッと胸をなでおろしていた。


(……ああ、キスは別なんだ)


しばらく黙ったまま、手に持った串をじっと見つめるサリヴァ。

耳まで赤いまま、何かを考えているようだったが――


「……口と口は、なんだ…特別だ」


ぽつりと漏れたその言葉に、俺は思わず足を止めた。


「特別って、なんだよ」

意地悪く、わざと聞き返す。


「……群れでも、そういうのは……大事な相手としか、しない」


視線を逸らしたまま、絞り出すように言うサリヴァ。

さっきまでの快活な横顔はどこにもない。

そこには、不器用で、ひたむきな誠実さが浮かんでいた。


その表情に、ほんの少し罪悪感が芽生える。

だが、もう止まれない。


「俺は、サリヴァのこと大事な相手だと思ってるけどな」


「なっ……!?」


サリヴァの動きが完全に止まる。

見開かれた瞳が、信じられない、とでも言うように俺を射抜いた。

みるみる耳まで真っ赤に染まっていく。


してやったり、と思う反面、予想以上の反応に自分も少しドキドキしてきた。


……まずい、ちょっとやりすぎたか。


「い、いや、戦友として、だ! 共に戦って、命を預け合った仲間なんだから、当然だろ?」

焦ってそう付け加えるが、もう遅い。


「べ、別に……お前がそういう意味で言うなら……俺はいい、けど……」


俯いたまま、消え入りそうな声で呟かれる言葉。

それは紛れもなく、彼女の偽らざる本音だった。


――やられた。


完全に俺の負けだ。

串の香ばしい匂いも、賑やかな街の喧騒も、もう意識の外側。

さっきまで彼女をからかっていたはずの俺の胸に、今、とんでもない威力の爆弾が投げ込まれていた。



食事を終えた俺たちは、ふらりとアクセサリー屋に立ち寄った。


色とりどりの宝石がきらめく中――

俺の視線は、ある一点に吸い寄せられる。


澄んだ青を宿したイヤリング。

まるで、サリヴァの瞳の色をそのまま閉じ込めたかのような輝きだった。


(これを……彼女がつけたら――)


気づけば隣の横顔を見つめていた。

戦いの傷が残る耳朶。

細くしなやかで、動くたびに光を受けて影が揺れる首筋。

そして少女のあどけないまだ骨格の細さが残る肩先。


戦士としての強さと、まだ何色にも染まっていない繊細さが、

危ういバランスで同居している。

そこに、この青い石が揺れたら――きっと、誰よりも似合うはずだ。


「……サリヴァ」


呼びかけると、彼女は首を傾げて振り向いた。

風に揺れ、まだ結い慣れていない黒髪がふわりと乱れる。


「これ……お前に、似合うと思うんだ」


差し出した瞬間、サリヴァは一瞬だけ目を見開き――

すぐに視線を逸らし、頬を赤らめた。


「……俺様で、いいのか?」


「当たり前だろ。嫌か?」


「嫌じゃ……ないけど」


彼女はぎこちなく、それでも大切そうにイヤリングを受け取る。


そして、小さく呟いた。


「……お前のことは、二番目くらいに考えてやる」


ぶっきらぼうな言葉。けれど、耳まで真っ赤に染めて俯く姿は――

誰が見ても、照れ隠し以外の何物でもなかった。


……その時の俺は知らなかった。

アマゾネスの社会において、男性から女性へ装飾品を贈るという行為が何を意味するのか。


それが、生涯の伴侶を求める――つまり、求婚の証であることを。

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