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転生したら猛毒ハーレム♡  作者: たんすい
第3章:アマゾネスの戦士と新たな拠点
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第25話:帰還

ヒドラの死骸が崩れ落ちてから、どれくらい経っただろう。


ムーが戦利品の首を処理している。

洞窟の奥からは、まだ時々、岩がきしむ音が響いていた。


血の匂い。

焼け焦げた岩肌。

冷え切った空気。

――そして、沈黙。


俺はようやく体を起こした。

全身が痛む。骨が軋む。


けど、それ以上に重くのしかかっていたのは――胸の奥に沈んだ感情だった。


「……みんな……無事か?」


掠れた声に、ファカが振り返る。

彼女の指先は震えていた。


ムーは斧を杖にして立っている。

片腕は血に濡れ、力なく垂れ下がっていた。


そして――サリヴァ。


ヒドラの血だまりと、飛び散った肉片のただ中で、彼女は倒れていた。

鎖の魔法が解けた今も眠ったまま、その顔にはもう獣の面影はない。


「彼女がいなければ…自分たちだけではどうにもなりませんでしたわ…」

ぽつりとファカが言う。


「でも……」


その続きを口にできずに、視線を逸らした。


代わりに、ムーが低く告げる。


「主様。……あの方は、仲間を襲いました」


一瞬、空気が凍りついた。


俺が連れてきた助っ人。

俺が信じた戦士。

その力が……仲間を傷つけた。


「……俺の、判断ミスだ」


誰も責めなかった。

けど、誰も肯定もしなかった。


勝利の余韻なんて、どこにもない。

気まずい沈黙だけが洞窟を満たす。


俺はサリヴァの傍に膝をついた。

眠る彼女の顔には、かつての獰猛な笑みはない。


ただ――疲れ果てた少女がいるだけだった。


「彼女の中にある力は危険だ。……でも、それでも俺は、見捨てたくない」


二人の視線が俺を刺す。

複雑な感情が渦巻いていた。


「……主様がそう仰るなら、私は従います」

ムーが静かに頷く。


「私も……でも次は、次こそ、見極めてくださいませね」

ファカの声はわずかに震えていた。


俺は胸に刻む。

仲間を背負うと決めた責任を、もう二度と手放さないと。


「……ありがとう。俺は、もう迷わない」


サリヴァを背負い、洞窟の出口へ歩き出す。

その背に、仲間たちの足音が続いた。


血と傷と後悔を抱えながら。

それでも――俺たちは前に進む。



洞窟を抜けてからの帰路は、やけに長く、そして静かだった。

誰もが口を閉ざし、それぞれの傷と重たい心を抱えたまま歩いていた。


俺の背で眠るサリヴァの体温と重みが、

決断の代償そのもののように肩へ食い込んでくる。


やがて、城壁の向こうにヴァリスの街門が見えた。

俺たちは自然と足を止め、互いの顔を見合わせる。

そして、無言のまま小さく頷き合った。


次の瞬間。

ムーが巨大なヒドラの首を高々と掲げる。


「……!」

門前に集まっていた騎士や市民たちの目が大きく見開かれ、ざわめきが広がった。

恐怖と驚愕。いや、それ以上に「信じられない」という色が強かった。


俺は息を吸い込み、声を張り上げた。


「ヒドラは――この“毒沼の魔女”と、その仲間たちが討ち取った!

もう、この街に脅威はない!」


一瞬、空気が凍る。

だがすぐに、人々の間から声が上がった。


「ま、魔女が……俺たちを救ったっていうのか!?」

「見ろ! あの首だ……伝説の魔獣が、本当に倒されてる!」


ざわめきは波紋のように広がり、やがて大きな歓声へと変わっていく。

恐怖に染まっていた空気が、信じられないほど明るく熱を帯びていくのがわかった。


その光景を眺めながら、ファカが俺の隣でくすりと笑う。

唇に浮かんだのは、いつもの悪戯っぽい笑みだった。


「――『デッドリィ・バイン』の誕生ですわね」


「デッドリィ・バイン……?」


「ええ。英雄にはふさわしい名前が必要でしょう?

“命懸けの蔦”――わたくしたちのパーティにぴったりですわ」


「デッドリィ・バイン…いいな。決定だ!」


胸の奥で、その名が不思議としっくりと響いた。


(ありがとう、ファカ。いつもおまえは、空気を明るくしてくれる。)


血と傷を背負っても、それでも俺たちは進む。 茨の道を、共に。仲間として。

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