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第4話 『王都に到着、歓迎ムードに本人ビビり』



王都の門が見えてきた。


……見えた瞬間、俺の胃が、また死んだ。



「なんだ……あの人の量は……」


アルヴィン兄上が呆然と呟いた。


俺も窓からそっと覗く。


……見える範囲、全部、人。


王都の外壁の前、広場、道、建物の屋根の上まで。


人、人、人。


旗がひらめき、花びらが舞い、鐘が鳴り響いている。


「これ……まさか全部、俺らのため……?」


「間違いなくそうだな」


父上がさらっと言った。


「いやいやいや! これ国王様帰還レベルですよ!? 俺ただの子どもですよ!? 田舎の……村レベルの子どもですよ!?」


「“神の行列”が来るって、昨日から王都中が祭りらしい」


カイル兄上が冷静にメモを取っている。


「祭り!? 神輿!? 俺、担がれる系!?」


「可能性はある」


「うそだろおおおぉぉぉぉ!!!」


胃が限界突破した。



門の前で騎士団長が馬から降り、深々と頭を下げた。


「神域の守護者様、ここから先は王都の衛兵が先導いたします」


「いや、守護者じゃないですってば……」


声は誰にも届かない。


むしろ俺が喋っただけで、周囲から歓声が上がる。


「神童様がお言葉を……!」


「今日一日が、国史に刻まれる日となる……!」


「いやいやいや! ただのツッコミですぅぅぅぅ!!!」



門が開いた。


その瞬間、爆音のような歓声。


「神の子様がいらっしゃったぞぉぉぉぉ!!」


「おおおおおおおお!!!」


王都の大通りは、すでに“パレード仕様”になっていた。


道の両脇に群がる人々、上空に舞う花びら。


建物のバルコニーから紙吹雪が降ってくる。


馬車が一歩進むたび、俺の寿命が三日ずつ削られる感覚がする。


母上がのんびりと笑顔で言った。


「リヒちゃん、手を振ってあげましょう♡」


「無理です!! もう胃が爆発寸前です!!」


「ほら、にっこりと」


「無理無理無理無理!!!」


だが、父上が一言。


「リヒト」


「……はいぃぃ……」


逆らえない。俺は震える手を上げて、ぎこちなく手を振った。


その瞬間、沿道が地鳴りのような歓声に包まれた。


「神童様が祝福を授けてくださったぁぁぁぁ!!!」


「奇跡だ! 奇跡が降りた!!」


「いやだから違うんだってばぁぁぁぁぁ!!!」



狸はと言えば。


馬車の屋根の上で、王都の空気を満喫していた。


尻尾をふわふわと揺らし、得意げに胸を張っている。


「ああ、もう完全に神獣扱い……」


俺がぼやくと、狸は小さくくあぁぁとあくびした。


(お前も被害者仲間だと思ってたのに……裏切ったな……)


周囲からは「神獣様が神域を広げているぞ!」という謎報告。


道端の草木が揺れただけで「祝福が舞った!」と叫ばれる。


俺はもう泣きそうだ。



王都の中央広場に到着した頃には、俺の胃は完全に死んでいた。


広場中央には、王都最上位の神官や貴族たちが並び、地面に跪いて待っている。


その先に見える王城の大扉が、ゆっくりと開かれた。


「リヒト、陛下が待っておられる」


父上が馬車から降りながら言った。


「……胃が、もう無理です……」


「大丈夫だ。すぐ終わる」


「その“大丈夫”が一番信用できないんですぅぅぅ!!!」


こうして俺は、王都のど真ん中でパニックのまま馬車を降りた。


足は震え、心臓はバクバク、視線は四方八方から突き刺さる。


狸がぴょんと俺の隣に降り立つ。


「神童様と神獣様が、共に降臨された……!」


「国史に刻まれる瞬間だ……!」


もうやめて……。


誰か……この勘違いを止めてぇぇぇぇぇ!!



こうして、王都に入ったその日から、

俺は国民全員の前で“神童&神獣コンビ”として歴史に刻まれることになった。


胃痛と共に。


(……帰りたい……今すぐ帰りたい……)

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