第14話 『グランメル家が外部干渉を防ぐため家訓発動』
森が勝手に神域扱いされてから数日。
屋敷の前は相変わらず人でごった返していた。
「神童様にお会いしたい!」
「神殿建設の許可を!」
「せめて加護を一目でも!」
朝から晩までこんな調子だ。
俺は部屋の窓からそっと外を見て、そっと胃を押さえた。
(もうだめだ……これが続いたら俺の寿命、あと一週間もたない……)
昨日は王都新聞が「神域拡大!神童が世界を救う兆しか!?」とか勝手な記事を出したし、
今朝は「神殿の神官がリヒト様に会いに来る」とか意味不明な報告が入った。
俺はただの6歳児だよ!?
薬草拾って安全確認してるだけの一般人だよ!?
なんでこんなことに……。
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その時、父上が静かに立ち上がった。
「……もう潮時だな。忘れている者が多い。“グランメル家に手を出すと面倒くさい”という事実をな」
カイル兄上がニヤリと笑う。
「久々に家訓発動だな」
俺は青ざめて叫んだ。
「家訓!?なにそれ怖い!俺の胃に悪いやつでしょ絶対!!」
アルヴィン兄上が肩をすくめながら説明した。
「“やられる前に準備して潰す”――それがグランメル家の家訓だ」
「潰すって!物騒すぎるよぉぉぉぉ!!」
エミリア姉だけが無邪気に笑っている。
「リヒちゃんは安心していいよ〜♡お兄ちゃんたちが全部やっつけるから〜♡」
やっつけないで!!平和に解決して!!胃が死ぬからぁぁ!!
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父上は家族と師匠を集め、冷静に指示を出した。
「まず、屋敷に近づく巡礼者と神官は一切門前払いだ。騎士団を増員しろ」
「領外の貴族に、改めて“この家を荒らすと面倒なことになる”と伝えろ」
「王都の使者には正式な手順と条件を突きつける」
マルタばあちゃんがほほ笑む。
「ほっほ、昔の冒険者時代を思い出すのう」
カイル兄上が笑う。
「一度見せつければ、誰も好き勝手できなくなるさ」
俺は顔面蒼白になった。
「見せつけるって何するの!?剣を振らないでね!?お願いだから胃に優しくしてぇぇ!!」
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そしてその夜、家訓が静かに発動した。
屋敷の門に立っていた神官や巡礼者が、翌朝にはきれいさっぱり消えていた。
どうやら説得(?)が行われたらしい。
町では「グランメル家は絶対に怒らせてはいけない」と噂が広まり、遠くの貴族たちの使者が一斉に引き返した。
俺は恐る恐る聞いた。
「な、なにしたの……?」
アルヴィン兄上がさらりと言う。
「ちょっと本気を見せただけさ。誰も剣を抜かずに済んだし、平和的だよ」
「平和の定義おかしくない!?完全に恫喝系外交じゃん!!」
胃がまたズキズキ痛む。
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数日後。外の騒動は嘘のように静まった。
でも安心する暇はなかった。
父上が重い声で言った。
「王都から正式な使者が向かうことが決まったそうだ」
「お、お忍びじゃなくて……正式に……?」
「もう避けられん。王都に行く準備を始めろ」
俺はその場で崩れ落ちた。
「いやだぁぁぁぁぁぁ!!安全第一な人生が……終わった……!」
胃が再び寿命を迎えた音がした気がした。
こうして、外部干渉は封じられたものの、
王都行きという最大級の試練が避けられなくなったのだった。




