第7話 『隠してたのに!誕生日パーティでスキルバレそうになった件について』
初の評価いただきました(涙)
ありがとうございます!!
最近、俺の“隠密修行”は、かなり順調に進んでいた。
魔力の流れを内に沈め、周囲に感じさせない。微弱に偽装して自然さを保つ。
誰にもバレずに修行を続けるという、慎重派・赤ちゃんスパイ生活。
(ふっふっふ……完璧だ。魔力の気配は抑えた上で、微かに“赤ちゃんっぽいレベルのゆらぎ”を再現してる。これぞプロの偽装!)
……そう、思っていたのだ。あの日までは。
俺が一歳の誕生日を迎えた、その日までは。
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「リヒト、お誕生日おめでとう!」
「おめでと〜、リヒちゃ〜ん♡」
「うむ、よくぞ無事に育ってくれたな。我が息子よ」
家族みんなが、俺を囲んでにこにこしている。
今日は、俺のために小さなパーティを開いてくれたようで、部屋は飾り付けされているし、ケーキっぽいものまである。
そして、問題の“それ”が出てきた。
「さ〜て、主役にはプレゼントだ!」
兄――いや、次兄が、にやけながら取り出してきたのは、木と金属でできた輪っかのような道具。見たことがある。というか、すでに警戒心が働いている。
(……その形、まさか……)
「これはね、簡易魔力量測定器! 手を入れると、魔力があるかどうか分かるんだよ〜」
(だああああああああっ!? よりによってそれかぁぁぁ!!)
「ほら、リヒちゃん〜♡ きらきら光るよ〜? てていれてみよっか〜♡」
姉ちゃんが天使スマイルで俺の手をそっと輪に向けてくる。
(くぅ……逃げられねぇっ……!)
だが俺は冷静だった。最近は、魔力の“偽装ゆらぎ”を日常的に使っている。
今も、微弱な魔力が一定のリズムで呼吸と同調して出ているはずだ。それなら、問題は――
(……って、あれ? 今日、ちょっと感情ゆらいでないか?)
目の前には、あたたかく微笑む家族。
俺を祝ってくれてる、こんなにもあたたかい空気。
前世では味わえなかった“愛されてる”という感覚が、胸の奥をぐっと満たしてくる。
(……すこしくらい……恩返し、したい……)
その気持ちが、ほんのわずかに、魔力の流れを強めてしまった。
「ぴこんっ」
測定器が小さく光を放つ。
「……あれ?」
「今……光った?」
「えっ、ええええ!? リヒちゃん、魔力出したの!?」
(……おぉぉぉぉおおおおおおい!!)
完全に油断した。これは“偽装魔力”の範囲を超えてる!
(やばいやばいやばいっ!!)
咄嗟に俺は“赤ちゃんモード”を全開にした。
「あう〜〜〜っ! ぶぇ〜〜〜〜! だぁ〜〜っ!」
口をぱくぱく、唾をぷしゅー! 泡をぶくぶく。
全身全霊で“赤ちゃんのふり”を演じ切る!
「うわ〜〜〜♡♡ リヒちゃん! 天使ちゃん!!」
「神の祝福だ……」
姉ちゃんと母さんは大喜び。脳がとろけてる。
だが、兄たちの表情は――違った。
「兄さん、今の数値……」
「ああ、見た。0.4。微弱だけど、通常の一歳児の魔力量じゃない」
「っていうか、これ……制御して出してない?」
「うわ、こわっ。逆に怖いわ、リヒト……」
(ヒィィィ! バレる!? いや、訓練のことじゃなくて、“やばい子”って方向でバレる!?)
再び泡を吹きながら俺は手足をばたつかせた。
ぐるんぐるん目を回し、赤ちゃんの演技を強化する。
(ここは“考えてない存在”アピールで乗り切る! 俺はただの赤ちゃん! 無垢なベビー!)
そして、背後から……あの人の声がした。
「……なるほど。だいたい分かった」
父さんだった。
低くて、落ち着いてて、何かを確信したような声音。
長兄がそっと尋ねる。
「お父様……様子は、どう見ますか?」
父さんは、目を細め、優しく笑った。
「焦ることはない。いずれ、本人が自分の力に気づくだろう。その時までは――見守ればいい」
(……っっ!!)
静かで、温かいのに……なぜか怖い。
この人、本当に全部分かってる。
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こうして俺の一歳誕生日は、測定器に魔力を拾われ、兄たちに驚かれ、母と姉に天使扱いされ、父には泳がされるという、まさに“カオスの祭典”となった。
俺はそっと誓う。
(……これからは、偽装魔力の調整も慎重に……もっと自然に、もっと弱く……)
赤ちゃんのくせに、スパイ映画の主人公みたいなことを考えながら、今日も俺は泡を吹いていた。




