第8話 『足元を温めてただけなんですが!?』
森に行くのはもう日課になってしまった。
気づけば今日もじいちゃんとばあちゃんに連れられて、朝の空気の中を歩いている。
どうせ屋敷では、家族が水晶を囲んで実況しているに決まっている。
もう諦めの境地だ。
(今日こそは……何も起きずに帰りたい……!)
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森の入り口を抜けると、ひんやりした地面の冷たさがじわりと伝わってくる。
朝露が多いせいか、足先が少し冷たい。
(うわ、これ長くいたら危ないやつだ。体温下がったら動けなくなる)
転生前の記憶が警告を鳴らす。
俺はそっと魔力を足元に流した。
ほんのりポカポカ。じんわりと暖かい。
(よし、これで安全確保! 冷え対策ばっちり!)
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その瞬間、後ろからばあちゃんが息を呑む音がした。
じいちゃんが目を細め、低く呟く。
「……足元から炎の加護が……?」
「まるで聖堂の祝福みたいじゃ……」ばあちゃんが神妙な顔。
(えっ、ちょっと待って!? 俺ただ暖めただけだけど!?)
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そして案の定、屋敷の水晶前が騒がしくなる。
「見た!? 足元が赤く光ったぞ!」
「炎の精霊が護ってる!」
「リヒちゃん……もう聖人扱いじゃん!」
(だから安全対策だってばぁぁぁ!)
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その後も、冷えそうになるたびに温めた。
俺の周囲は淡い赤い光でふわっと包まれるようになる。
(キャンプで使えるなこれ……便利スキルだ)
でも後ろの二人は完全に信じ切った顔をしている。
「……神の炎の祝福……」
「……四歳でここまで精霊を従えるか」
水晶前もヒートアップ。
「祝福持ち確定だな!」
「神殿が放っておかないレベルだ!」
「リヒちゃん、もう祈れば天使が降りてきそう……!」
(いやいやいや! そんな大層なことしてないから!)
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帰り道、ばあちゃんがそっと俺の肩に手を置いた。
「リヒちゃん……今日は特別な日じゃったな。神様がついにお主を選んだんじゃ」
「……えっと、冷えないようにしただけ……」
「謙遜するな。あれは神の炎の証じゃ」
じいちゃんも頷く。「……間違いない」
水晶前で父が真剣な声を出す。
「外に漏れたら王都が動くぞ」
長兄が神妙な顔で。「家族だけの秘密だな」
次兄がぼそっと呟く。「弟、国宝になる未来しか見えん」
母は涙を拭いながら「リヒちゃん、もう立派すぎて……!」
(だからぁぁぁ! ただ安全管理しただけだからぁぁ!)
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屋敷に戻ると、ばあちゃんが俺の頭を撫でて微笑んだ。
「リヒちゃん、今日のことは神様と交わした秘密じゃ。誰にも言わんほうがええ」
俺はこくこく頷いた。
(絶対言わない……絶対……!)
こうして俺の中では“体温維持スキル”だった魔法が、
家族と師匠たちの中で「神の炎の祝福」として伝説に加わることになった。
つづく → 第9話『隠密→転移魔法』
仕事の都合上、不定期投稿になります。
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