第3話 『錬金術って、見て覚えるものなん?』
裏庭の朝は、昨日と同じはずなのに、なぜか胃が重かった。
今日の師匠はじいちゃん。無口すぎるじいちゃん。昨日のばあちゃんの優しさと違い、今日の空気はカッチカチに固まっていた。
縁側に座ったばあちゃんが「まぁ、頑張るんじゃよ~」と手を振る。
その横でじいちゃんは、無言で机に薬草、瓶、怪しげな粉を並べていく。
……うん、嫌な予感しかしない。
「……今日は、わしが見る」
「え、あ、はい……」
低い声が腹に響く。でもそれっきり何も言わない。
俺が戸惑っていると、じいちゃんは黙ったまま草を潰し始めた。手つきが迷いなく、しかもめっちゃ速い。粉をさっと混ぜ、魔力を指先に流し、瓶に詰めて封をする。カラン、と軽い音を立てて机に並べ終えるまで、30秒もかかってない。
いや待って、速すぎる! もっとゆっくり! 説明なしで4歳児が理解できると思ってんのか!
心の中で全力ツッコミを入れていると、じいちゃんは俺を見て、材料を指先でトンと指した。
……やれってことらしい。
仕方なく真似してみるけど、まず草を潰すだけで手がべちょべちょになった。粉もよくわからずドバッと入れちゃう。魔力を流そうとしたらボフッと泡が噴き出して、俺の顔面に直撃した。
「うわっ!? 熱っ、ぬるっ!? なにこれ失敗!? 絶対失敗したやつだ!」
慌てて瓶に押し込み、封をする。おそるおそる差し出すと、じいちゃんは無表情でじーっと瓶を見て、こくりと頷いた。
……え、合格? これでいいの? 基準どこ!?
じいちゃんは「……悪くない」とだけ呟き、次の材料を突き出す。あ、これ絶対“続けろ”のサインだ。
そこから地獄のループが始まった。
「……これです」
「ふむ」
「いや絶対匂いおかしいよねこれ」
「……悪くない」
「悪くないんだ……」
三十回くらい繰り返した頃には、もう頭が沸騰していた。救命士時代にも無茶な訓練はしたけど、これは別の意味でキツい。言葉のキャッチボールが無さすぎて、精神が削られる。俺が四歳児だから優しく教えてくれるとか、そんな甘えはこの家には存在しないらしい。
ラスト一本を渡したとき、ようやくじいちゃんが動いた。ノートを閉じ、ポケットから一本の小瓶を取り出す。そして一言。
「……飲め」
「またそれぇぇぇぇ!!?」
昨日と同じ謎の透明ドリンク。これを飲んだら胸がじんわり温かくなるのはわかってる。でも、説明がほしい。なにこれ?ご褒美?栄養ドリンク?修行の儀式?
それでも、飲まないと終わらない気がしたので一口だけ。すると、案の定、胸の奥がほわっと温かくなる。
「……なんか、安心する……」
「観察の礼だ」
短い。会話終了。いや褒めてるのか褒めてないのかどっちだ。
その時、縁側のばあちゃんがにっこり笑った。
「リヒちゃん、瓶詰めの腕もなかなかじゃのう」
「え、ええ!? ただ詰めただけだよ!? ぐちゃってして粉入れて泡出ただけだよ!?」
「保存と衛生、どちらも魔力をきちんと通せるのは難しいんじゃ。それを自然にやれるのはたいしたものよ」
「えぇ……」
俺、瓶詰め係だったはずなのに、なんかすごい職人みたいに評価されてる。そんな大層なことしてないはずなんだけど。誤解だ、これは絶対誤解だ。でも、胸の中がじんわりくすぐったくて、否定の言葉が喉の奥で溶けた。
ばあちゃんが立ち上がって俺の頭をなでる。
「リヒちゃん、明日はわしにも見せてくれんかの」
「えっ……見せるって、ただの瓶詰めを?」
「ふふ……楽しみにしとるよ」
いやいや、楽しみって何。俺がやったのただの瓶詰めだからね? 誤解されても困るんだけど。なのに、また明日も同じ地獄が待っている予感しかしない。
(ああ、明日が不安すぎる……!)
でも不思議と、胸の奥はまた少しだけ温かかった。昨日と同じ、認められたような気がして。
こうして、俺の錬金術(らしき何か)の初日が終わった。
そして翌日、俺の“瓶詰め作品”がばあちゃんの前に並べられ、さらにとんでもない誤解を呼ぶことになる。
つづく → 第4話『瓶詰めしただけで褒められた件』
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本作品は生成AIと協力して執筆しています。
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