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第4話:気絶したら魔力量が上がってた。俺の修行、間違ってなかった……!


(まず、今日の反省点から──)


 


 魔力の巡回速度を上げすぎて、昼前に気絶。

 いつものことだが、今回のは少し長かった。目覚めたとき、夕日が差していて焦った。


 


 けれど、成果もあった。


(巡らせる感覚が……明らかに、広がってる)


 


 昨日まで“指先に届いたら成功”だったのに、今日は“指先から先に、ふわっと”感じたのだ。

 まるで、魔力の道が太くなったみたいに。


(もしかして、気絶するたびに、魔力の器……広がってる?)


 


 いや、仮説としては荒唐無稽すぎる。

 でも、俺は前世で物理学も応急手当もかじっていた。

 気絶は、極限状態に対する脳と肉体のリセット反応。

 そして魔力は、“精神と肉体を通じて流れる力”……とするなら──


(つまり、気絶=強制リブートで魔力回路の拡張が可能?)


 


 これは……アリだ。理屈が通る。


 



 


 そんな俺の研究心とは裏腹に、家族はほのぼのしていた。


「リヒちゃん、また寝てる〜♡」


「まったく……今日も天使か」


「よく寝る子は育つ、ってな!」


「僕も子供のころはお昼寝いっぱいしてたな……いや、たぶんここまでじゃなかったけど」


 


(ちがうんだ! 俺は寝てるんじゃなくて、訓練で気絶してるんだ!)


 


 叫びたい。でもできない。なぜなら、赤ちゃんなのだ。


 


 とはいえ、赤ちゃんだからってバカにできない。

 気絶をくり返して得たものは“魔力量の上限”だけじゃない。


(俺の感覚も、鍛えられてきてる……)


 


 魔力の“質”を感じるようになったのだ。


 昨日まで「冷たい」「熱い」といった感覚だけだったが、

 今日は「ちょっとざらざらしてる」「ぬるいけどとがってる」みたいな、微細な違いがわかる。


 


(これ……属性の違いなんじゃ?)


 


 世間の魔法常識はまだ知らないが、俺の推測では、

 魔力には属性があって、それに応じた“流れ方”がある。

 しかもこの感覚、訓練後の“気絶明け”のほうがずっとはっきりしている。


 


(やっぱり、気絶って……鍛錬効果あるな)


 



 


 ところで、最近俺の訓練法は進化している。

 ただ流すのではなく、負荷とリスクを減らすために“フェーズ管理”を導入したのだ。



魔力訓練フェーズ(最新版)

1.準備運動(深呼吸)

 魔力が乱れないよう、心を落ち着ける。泣きそうな顔をすることで油断演出も同時に達成。

2.第一段階:部分巡回

 右腕だけ、左足だけ、など限定ルートで試す。異常を感じたら即中断。

3.第二段階:全身巡回(低速)

 過去最大強度を超えない範囲で巡らせる。

4.リスク評価→中断or継続判断

 頭痛や視界のにじみが出たら中止。眠気=気絶予兆なので即ミルク補給待機へ。

5.記録

 脳内で今日の反省点をまとめて「訓練記録ノート(脳内)」に保存。



(赤ちゃんにしては、異常な計画性だと自分でも思う)


 


 でもそのおかげで、俺は死なずに、バレずに、強くなれている。


 



 


 しかし、その慎重設計も完璧ではなかった。


 


 その日の午後──俺はフェーズ2に入った直後、

 予想以上に魔力が太く、速く、力強く流れ出してしまった。


(やばい……暴走しかけてる!?)


 


 慌てて止めようとしたが、感覚がすでに遠い。

 頭がぼんやり、視界がかすみ、耳鳴りが──


 


 ──ぷつん。


 



 


 次に目を開けたとき、母の胸の中だった。


「リヒちゃん、よしよし〜♡ いい子ね〜♡」


 


 兄の声がした。


「また寝てたね、今日はぐっすりだ」


「寝顔、癒やされるわぁ〜」


「……にしても、最近やけに体温高くない? 気のせいかな?」


 


 ドキッとした。もしかして、バレ……?


「そうそう、赤ちゃんって熱あるくらいが普通なのよ〜」


「そっか〜、じゃあ安心かな〜」


(……セーフッ!!!)


 


 ギリギリのラインで正体はバレずに済んだ。

 というか、この一家、基本的にリヒちゃんを“癒し枠”として扱ってる気がする。


 


 だが、今回の訓練でわかった。

 俺はもう、通常の“巡回訓練”では伸びづらくなっている。


(……次のステップに移る時かもしれない)


 


 その名も──


(“属性干渉訓練”、略して“属性シェイク”。明日から試してみよう)


 


 こうして、世界一ビビりな赤ちゃんは、気絶と慎重の狭間で新たな進化を始める。


 


 ──もちろん、誰にも気づかれることなく。


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