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第15話『ギルマスのスカウト、即決』


「……この子、私の弟子にするわ」


「早ああああああああい!!?」


 思わず全員が叫んだ。リヒト含む。


 ――いや、リヒトは叫んでない。口の中で「えっ」とか「いまの、なに?」とか呟いていた。たぶん。


「な、なに急に……ギルマス、本当にこの子の何を見てそう判断を?」


「直感と実績と、長年のカンよ」


 あっさり答えたのは、ギルドマスターのマルタ婆ちゃん。見た目は完全に好々爺……いや、好々嬢?


 小柄で白髪、たまにお茶をこぼすけど実力は元Sランク。いまは男爵領のギルドで穏やかに“隠居”している、らしい。


「でも、突然すぎませんか!?」


 長兄が慌てて抗議する。次兄も「弟が弟子って、語呂がすげー」とか言ってる。


「だいたい、まだ三歳で……」


「そこがいいのよ。伸びしろしかない」


 完全に“発掘された新人アーティストを見る音楽プロデューサー”の顔だった。


「それにしても、本人の意志が……」


「ほわ……? ……でし……いり……?」


 リヒトがきょとんとしながら“弟子入り”という言葉を反芻している。


 無理もない。なにせ、意味を理解する前に話が進んでいた。


「可愛い……もう、それだけで十分よ……」


 マルタがぽそっと呟く。


「こりゃ、将来とんでもない子になるわね……ギルドの宝よ」


「“将来とんでもない奴になりそう”って言われる三歳児って……」


 次兄が遠い目をしながらつぶやいた。


 しかし、次の瞬間――


「……いたた……」


 小さな声が部屋に響いた。


「リヒト?」


「おなか……きゅるきゅるする……」


 全員が一斉に注目する。


(ギャグでも誤解でもない。これは――ガチだ!)


「リヒト! 大丈夫か!? 一旦、部屋を出ようか?」


「……うん、ちょっとだけ……おやすみ、する……」


 小さく頷き、母に抱えられてリヒトは退室していった。

 残されたのは――異様な空気だった。



 重くなった空気の中、ギルマスのマルタが表情を変える。


 先ほどまでの“孫溺愛モード”から一転、“歴戦の冒険者”の顔へ。


「……さてと。本題に入りましょうか」


 父と母も、背筋を伸ばす。


「森のことですね?」


「ええ。……ここ最近、森の様子が明らかに変わっている」


 マルタは鞄から一枚の羊皮紙を取り出した。

 それは、ギルドが極秘で作成している“危険魔力領域マップ”。


 中心に、“淡い金のインク”で円が描かれていた。


「これは……」


「結界。しかも、精霊の加護じゃない。“神獣”のものよ」


 母が眉をひそめ、父が小さく頷く。


「……やはり、気づいていたか」


「魔物が、中心に近づかないのよ。まるで、森そのものが“静かに制御されている”みたい」


「うちの薬草畑の方にも、影響が出始めています。回復効果が……常識外れの水準に」


 マルタが肩をすくめる。


「最初は“奇跡的な個体”ってことにしてたんだけどね。何度も出てきたら、さすがに誤魔化せない」


「……すべて、リヒの活動範囲だ」


「間違いないわ。彼の通った後、魔力の流れが整ってる」


 そこで母がぽつりと呟いた。


「でも……リヒ自身は、それに気づいていないの」


 マルタはしばらく沈黙した後、言った。


「……やっぱり、そうなのね」


「驚いた?」


「驚いてないわ。ただ、“確信に変わった”だけ」


 父が立ち上がり、窓の外――森の方向を見た。


「私が若い頃、“森の最奥”に入ったことがある」


 懐かしむような、苦笑のような表情。


「当時は“封印地”と言われていた。魔物の巣でも、精霊の泉でもない……ただ、“入ってはいけない場所”だった」


「結界があったの?」


「いや……何もなかった。ただ、空気が違った。異様に静かで、冷たくて……一歩でも奥に踏み込んだら、何かが崩れる気がした」


「それで、“二度と行かない”と?」


「そうだ。……だが、いまは違う。結界のようなものが広がって、森そのものが安全になっている」


「それは、“封印”が強化されたのか、“加護”が加わったのか……」


 マルタが静かに地図をなぞる。


「おそらく、“神獣が目覚めた”のよ」


「……それも、“あの子”が呼んだと?」


 マルタは、力強く頷いた。


「ええ。本人は無自覚。でも、魔力の質が“神域の核”に近い」


 父と母が、顔を見合わせる。


「リヒが……神域を?」


「まだ正確にはわからない。でも、“核”の素質を持ってるのは確か」


「“神に選ばれる”ではなく、“神が寄ってくる”側、か……」


「それが一番厄介なのよ。無意識で影響を与える子って、加減を知らないから」


 マルタは立ち上がると、静かに言った。


「だからこそ、私が“弟子”にしたいと思ったの」


「育てるために?」


「いいえ。――“暴走させないため”よ」


 一瞬、沈黙が落ちた。


 けれど、重苦しさはなかった。


 そこにあったのは、未来を見据える者たちの“共有された覚悟”だった。



 扉がそっと開く音がした。


 リヒトが、母に手を引かれて戻ってきた。


 ちょっとお腹をさすりながら、もじもじしている。


「……おなか、なおった……」


「よくがんばったわね、リヒちゃん」


 マルタが優しく微笑みかけると、リヒトは不思議そうな顔をした。


「……なに、はなしてたの?」


「ふふ、今日のおやつの話よ」


「……ほんと?」


 リヒトはじっとマルタを見つめた。


 その瞳に――一瞬、“何かを見抜く光”が宿ったように感じられた。


「…………」


「…………」


「……おやつ、たべる」


「ええ。たっぷり用意してあるわよ」


 まるで何事もなかったかのように、マルタは微笑んだ。


 でもその背中には、冒険者時代の鋭い緊張感が――ほんの一瞬、戻っていた。


(やっぱり……この子、ただ者じゃない)


(でも、本人は――何も、知らない)



 その夜。ギルドにて。


「マスター、本当に弟子にするつもりなんですか?」


 職員の問いに、マルタはお茶を飲みながら言った。


「するわよ。あの子は“鍵”になる。森の未来、神域の行方――すべてに関わってくるわ」


「でも……三歳の子ですよ?」


「関係ない。あの家の子ってだけで、“もう”規格外なのよ」


 静かに、薬草の束を手に取る。


 魔力の流れが、柔らかく、優しく、温かい。


「ふふ……“バカ弟子の子”が、“神獣の守り手”になってたら……笑っちゃうわね」


 そう言って、マルタはにこりと笑った。



次回▶ 第16話『神域育ち、修行始めました』


読んでいただきありがとうございます。

本作品は生成AIと協力して執筆しています。


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