第10話:『ギルマス、森の異変に気づく』
森に、静かに風が通り抜ける。
揺れる草木、澄んだ空気、満ちる魔力の流れ──
その変化を誰よりも早く察知したのは、森の奥にひっそりと潜む一柱の神獣だった。
(……また来たな。今日も抜かりなく“巡回”しているようだ)
木陰からそっと覗くその瞳は、穏やかな慈しみに満ちていた。
(身体の動きに無駄がない。魔力の制御も上々。……ふむ、わずかに偏りがあるか)
狸のような姿をした神獣は、尻尾を一振り。
すると微かな魔力が風に乗って漂い、草花の根元にふんわりと降り注いだ。
(この程度なら、干渉にはあたらぬな。自然の循環を整えただけ……ということである)
その様子はまるで、小さな旅人の背中を、そっと押すような優しさだった。
◆ ◆ ◆
一方その頃。
領内の冒険者ギルド、古びた木造の建物の奥──
ギルドマスターの老婆は、鑑定済みの薬草をじっと見つめていた。
「……また、限界値越え」
ため息まじりにそう呟くと、傍らにいた白髪の老錬金術師が頷いた。
「分析結果は正確だ。採取地の周辺、魔力濃度が異常に高い。しかも、濁りがまったくない」
老婆はその言葉に眉をひそめる。
「精霊の干渉でもない……結界魔法の影響も見られない……」
「純粋に、“土地そのもの”の質が向上している」
老婆の手が薬草を撫でる。
──柔らかく、瑞々しい。
魔力を込めれば、即座に反応して発光し、癒やしの力を発現する。
(……こんなものを、ぽいっと“弟が遊びで摘んできた”なんて言って納品してくるとは)
思わず笑みが漏れた。
(バカをお言い。あの家の子どもが“ただの弟”で済むわけがない)
老婆は薬草をそっとトレイに戻すと、ゆっくりと椅子にもたれた。
「まったく……あのバカ弟子の血筋ってやつは、本当に手に負えないねぇ」
静かに天井を見上げながら、ぽつりと呟く。
「最近、兄ちゃんたちが“弟が変だ”って話してたのを思い出したよ。ふふ……あの家じゃ、普通が一番難しい」
隣で静かに頷く錬金術師。
「……聞いてみるか?」
「ええ。ちょいと話でも聞きに行こうかねぇ」
老婆の顔に浮かぶのは、懐かしさと興味、そしてほんの少しの期待。
(まさか、ね)
◆ ◆ ◆
森の奥。光差す小さな丘のふもと。
神獣は、じっと“観察対象”を見つめていた。
(ふむ……本日は、薬草の選別をしているらしい)
しゃがみこんで、一本一本、丁寧に触れる小さな手。
(すでに芽吹きの段階で魔力の通りを見極めているのか。なれば、加護は不要か……)
一瞬考えたのち、神獣はそっと首をかしげた。
(いや。ほんの微調整だけ……根の魔力の通りを、少しだけ整えておこう)
魔力は、ごく自然に空気へと溶けた。
まるで風が草を撫でたようにしか見えないその働きは、本人にすら気づかれない。
(……これは、余の隠れ家周辺が少し“栄えている”だけである。加護とは異なる)
心なしか言い訳じみた思考をしながら、神獣はふわりと尻尾を揺らす。
(それにしても……動きに、まったく迷いがないな)
まだ言葉も不完全な人間の幼子が見せる行動ではない。だが、だからこそ興味深い。
(この成長が、誰に知られぬまま進んでいるというのだから……世界とは、実に不思議なものである)
木漏れ日の中で、神獣は小さく頷いた。
◆ ◆ ◆
その夜。
ギルドの奥、古地図が並ぶ資料室。
ギルマスは、森の地形図と魔力分布図を照らし合わせながら、静かに言葉を紡いだ。
「この範囲。ほぼ一帯が“神域”のような魔力循環を始めている」
錬金術師が眼鏡を直しつつ言う。
「理屈では説明できん。だが、これは……“誰か”の意思が働いている現象だ」
老婆は静かに目を細めた。
「神域の形成には“核”が必要。“中心”があるはずだよ」
そして、呟く。
「森に住まう神獣──あるいは、それに見初められた“何か”が存在している」
──あの森に、“何か”がいる。
“神に近い存在”が、その中心にいる。
それだけは確かだった。
◆ ◆ ◆
再び、森。
神獣は、丘の上に佇み、空を見上げる。
(そろそろ、余の姿に気づいても良い頃か……いや、まだ早いな)
(今はただ、己の力で歩むがよい。見守るのが、神の役目である)
小さく、頷く。
(……余がここにいることは、誰にも知られてはならぬ)
その誓いを胸に、神獣はそっと身を翻した。
だがその背中に──かすかに宿る、やわらかな笑み。
(今日もまた、“彼”は、少しだけ強くなった)
◆ ◆ ◆
翌日。
ギルドに、また薬草が届いた。
「えーっと、弟が取ったやつでーす!」
領主家の使いと見られる青年が、屈託なく笑いながら荷物を置いていく。
「……弟ねぇ……」
老婆は苦笑しつつ、受け取った薬草に視線を落とす。
──魔力の通りが美しい。いや、美しすぎる。
まるで、森が“祝福”したかのように。
「……弟。ふふ、そりゃそうだよねぇ。あの子が普通なわけ、ないもの」
老婆は、そっと呟いた。
「こりゃもう……弟子の家の“子”が、森で神と遊んでるって話かい?」
その言葉に、錬金術師が少しだけ顔を上げる。
「……さて、何者かな。神に選ばれたのか、神を選んだのか」
「その答え、ちょいと見届ける価値がありそうだねぇ」
そしてギルマスは、にんまりと笑った。
「“バカ弟子の子”が“森の主”になってたら──あたし、笑っちゃうよ?」
その笑顔の奥に、静かに揺れる戦闘者の眼差し。
彼女は、動くつもりだった。
調査を、本格的に始める。
──これはまだ、“前兆”にすぎない。
だが、すでに歯車は回り始めていた。
(※次話:誤解ギャグ爆発へつづく)
読んでいただきありがとうございます。
本作品は生成AIと協力して執筆しています。
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