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第9話 『森が静かすぎて不安』


――おかしい。静かすぎる。


(風の音……鳥の声……木の葉のざわめき……全部、ない……!?)


 森に入った瞬間、俺の全身の毛穴が一気に開いた。


 俺、リヒト。三歳。

 世にも慎重な訓練系男子。目下の目標は“準備だけで生き延びること”。


 だが今日の森は、静かすぎた。


「……ちょっと、こわいんだけど……」


 呟いても、返ってくるのは無音。

 風が止み、枝も揺れず、虫も鳴かない。


(えっ……これ“何かが来る”直前の空気じゃない……!?)


 普段なら、鳥が飛び立ち、小動物が動き、葉っぱがサワサワしているはずのこの森。


 それが今日は――まるで時間が止まったかのように、沈黙していた。


 俺の脳内警報が、全力で鳴り響く。


(撤退か!?いやでも、ここは訓練エリアのはず……いやでもいやでも!!)


 体が硬直する。冷や汗が背中を伝う。


「ひ、一回……戻る? でもそれって、“恐怖に負けた子”になっちゃう……」


 ぎゅっと拳を握る。


 心の中では、理性と本能が命懸けでバトルしていた。


(落ち着けリヒト。ここは冷静に――)


 ――その時。


 ぽてん。


 木の上に、なにか小さな気配が降り立った。


 木漏れ日の影。ほわっと丸いシルエット。しっぽがふわふわ。


 狸……いや、神獣だった。


 神域の守護者にして、この森の異変の“元凶”でもある存在が、リヒトをじっと見つめていた。


(対象個体:安定行動中。魔力経路の流れ良好。今日も、よくがんばってる)


 小さな神獣は、満足げにうなずいた。


 今日もまた、魔物たちは遠ざけ、空気は澄み、リヒトのために“安全な森”が保たれている。


 ……そのせいで、


(こ、こわい……なにこの不気味な静けさ……!)


 ――ビビり三歳児は、疑心暗鬼の沼に沈みつつあった。


 



「……静かすぎるな、森が」


 その声は、男爵領の外れ、森を見下ろす高台から聞こえた。


 しゃがれた、けれど澄んだ声。


 その主は、ギルドマスター。


 しわの浮かぶ目元で、森の空気をじっと観察していた。


「魔物の気配も、精霊のざわめきもない……」


 それは、異常だった。


 森は本来、生きている。生き物たちの鼓動と、魔力の波動と、微細な気配で満ちている。


 それが、今日に限って――沈黙している。


「……精霊じゃないな。これは……神獣か」


 おばあちゃんのような顔が、ほんのりと笑みを浮かべた。


 まるで、心当たりがあるかのように。


「さて、どの子が原因かしらねぇ……ふふふ」



 一方そのころ、リヒトはというと――


「やっぱり今日、何かいる……!絶対、いる……!」


 と、足元の石にすらびびっていた。


(さっき、影が動いた気がするし……いや、気のせい? でも“気のせい”って思った瞬間に何か起こるのがこの世界!)


 ガタガタ震える。しゃがみこむ。物陰に隠れる。


 どう見ても“狩られる側”のムーブだ。


(風の流れも読めない……魔力の渦もない……逆に怖い!)


 慎重すぎるがゆえに、完全に疑心暗鬼の底に沈んでいた。


 そのビビりまくる姿を――


 神獣は木の上から、ぽてんと座って眺めていた。


(今日もよく訓練している……いい子だ)


 しっぽをふりふり、ご満悦の様子。


 その背中に、誰も気づかない。


 リヒトは今日も、自らの努力と錯覚しながら、神域クラスの訓練ブーストを受け続けていた。



 そのときだった。


 背後から、枝が「パキッ」と音を立てる。


「うわあぁぁぁあああああ!!??」


 リヒト、大絶叫。


 跳ねるように飛び退き、足をもつれさせ、転びそうになる。


 だが、なんとか踏みとどまり――木の陰に再びしゃがみ込んだ。


(な、なに今の!? 動物!? 魔物!? それとも……森そのものが、俺を呑み込もうとしてる!?)


 その“音”の正体は、ただ落ちた小枝だった。


 でも、リヒトにとっては全てが疑わしい。


「もう無理……今日は撤収だ……命あっての訓練だし……」


 全身を震わせながら、リヒトは森の出口に向かってよろよろと歩き出す。


(次は……もっと警戒装備を増やそう。あと気配遮断も強化して、あとあと……!)


 その後ろ姿を、神獣はしばらく見つめていた。


(……よし。今日もよくがんばりました)


 ぽてん、と立ち上がり、枝の上からすっと消える。


 森の静けさは続く――それは、守られているからだということを、本人だけが知らないまま。



 こうして今日もまた、俺は“何かに狙われている”という大いなる誤解を抱えながら、


 安全な森から全力で撤退した。


 慎重であるがゆえに、安心できない。


 まるで、守護されてることに気づかずに「呪われてる」と思い込む勇者のような姿で。


 ……うん、我ながらかわいそうだ。


 でもこれが、慎重派リヒトの“日常”である。


(次回こそは……平穏な訓練ができるように、もっと準備しておこう……!)



▶次回:第10話『ギルマス、森の異変に気づく』

神獣の気配を察知したギルドマスター。彼女の視線の先に、“あの子”の存在が浮かび上がる……!?


読んでいただきありがとうございます。

本作品は生成AIと協力して執筆しています。


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