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第5話 『薬草採取、慎重にいきたい』


 森へ入る前、俺は深呼吸をひとつした。


(よし……今日の目標は“薬草の観察”と“採取練習”。慎重に、確実にいこう)


 村デビューを乗り越えた俺は、さらなる準備として森の実地訓練を重ねていた。

 今日は“薬草”を覚える第一歩として、自分の目で確かめ、触れて、確認する計画だ。


 とはいえ――俺はまだ調合なんてできない。

 知識も乏しいし、薬効もあやふやだ。けれど、それでもやっておきたい理由がある。


(いつか、いざってときに薬草の知識があるかどうかで、生死が分かれることだってある……!)


 救命士時代の感覚が、そう言っていた。


 毒草と薬草を誤認したら?

 間違って煎じたら?

 正体不明の草を口にしたら?


 ――全部アウトだ。


 だからこそ、薬草は早めに見ておくべきだと思った。今のうちに、目を慣らしておく。


(現代の世界でも、山に入る仕事なら草の識別は重要だったし……こっちでも、似たような植物はあるはず……)


 その根拠は、日々の観察にあった。


 この家の台所、治療部屋、兄上たちの遠征準備――

 さまざまな場所で乾燥させられていた草束を、俺はずっとこっそり見てきたのだ。


(たとえば、兄上が「切り傷によく効く」って言ってた草。あれ、葉の縁がギザギザで、茎が赤っぽくて、根っこに細かい毛がついてた)


 それと似た草を、森の入口で見つけたとき、俺は思わずしゃがみこんだ。


「……たぶん、これだよな」


 触れて、匂いを確かめ、葉を1枚だけ摘む。

 手のひらの上にのせたそれは、乾燥していた束とそっくりだった。


(よし。これが“実物”ってやつか)


 少し離れた場所に生えていた別の草にも目を向ける。


(これは違う……見た目が似てるけど、葉の裏に斑点がある。多分こっちは……毒草かも)


 慎重に、ゆっくりと判別していく。


 実際に手に取るのは怖い。でも、いざという時のために、今は“観察”が大事だ。



 森の奥へと進むと、空気がひんやりとしてきた。

 湿度も程よく、魔力の流れも穏やか。


 そのとき、ふと目を引く茂みがあった。


(……あれ?)


 妙に光沢のある葉。太くまっすぐ伸びた茎。

 それだけじゃない。根元の土壌が、異様に柔らかい。


 俺は慎重に近づいて、しゃがみこむ。


(この薬草……育ち方がちょっと……いや、かなりおかしいぞ?)


 明らかに“異常に元気”なのだ。

 葉はピンと張り、根はスルリと抜け、根元には魔力の流れすら感じられる。


(これ……なんでこんなに育ちがいいの!?)


 魔力の巡りが整っている。土も柔らかく、栄養たっぷり。


 まるで、誰かがわざわざ“栽培していた”かのような丁寧さだった。


(えっ……いや、まさか……俺が……? 最近、魔力制御の訓練をしてたし……それが環境に影響した?)


 確かに、魔力量は増えてきた。

 でも、それでこんな明らかな成長補助が起こるだろうか?


(……うーん、ありえなくは……ない、のか?)


 混乱する思考を、慎重さで抑える。

 今はあくまで、観察。深掘りは後回しだ。


(一応、記録しとこう。場所も形も覚えておいて……帰ったら図に起こす)


 俺は薬草を丁寧に置き、深く一礼する。


「ありがとう、草さん……育ってくれて……」


 声をかけることで、感謝と冷静さを取り戻す――救命士時代に身につけた、ささやかな儀式だ。


 そして、もう一つ。


 俺は知らない。


 森の奥のさらに奥で、小さな狸型の神獣が、ちゃっかりこの辺りの土壌をいじっていたことを。


 魔力の流れを整え、水分量を調節し、薬草が“ちょうど良く採れる状態”にしてくれていたことを――



 採取を終えた帰り道。


 俺は森の風の音を聞きながら、ゆっくりと歩いていた。


(薬草の判別、もう少し精度を上げたいな……今日はまずまずって感じかな)


 手には、観察用に摘んだ薬草が数本。

 それを束ねて、簡易ポーチに収める。


(次は乾燥方法とか、保管の仕方も調べてみよう……まだ調合は無理でも、準備はしておきたい)


 慎重な性格が、また一歩、行動を次の段階へと進ませる。


 だが――そのとき。


(……ん?)


 背筋が、ぞわっとした。


 風じゃない。

 でも、確かに空気が揺れた。


 気配、というには弱い。

 でも“何かがいる”――そんな、感覚。


(気のせい……じゃない)


 俺は身を低くして、森の影に隠れた。


 索敵。呼吸調整。気配遮断――即座に行動。


 だが、気配は一瞬で消えていた。


 ほんの、数秒。


(……通りすがりの動物? でも……なんか、違う)


 俺は立ち上がり、周囲を見渡す。

 誰もいない。ただ、森の静けさだけが残っていた。


 でもこの時、俺の知らぬところで――


 少し離れた木陰。

 三人の冒険者の目が、俺の姿を“遠目に”捉えていた。



▶次回:第3章 第6話『駆け出し三人組、目撃する』


読んでいただきありがとうございます。

本作品は生成AIと協力して執筆しています。


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