15話(改稿版) 『小さな命をつなぐ』
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「頼む……!」
俺の声が震えていた。
小さな手は狸の胸の上に置かれている。
呼吸は浅くて弱い。体温も下がっている。
このままだと、助からない。
でも、三歳の俺にできることは限られていた。
それでも──やるしかない。
「大丈夫だから……大丈夫だからな……!」
自分に言い聞かせるように呟きながら、前世で覚えた手順を必死に思い出す。
首を横向きにし、呼吸の通り道を確保する。
口元に手をかざし、息があるか確認する。弱い……でもまだ生きてる。
(絶対助ける……!ここで見捨てたら、一生後悔する!)
怖くて震える足。
でも手だけは勝手に動いていた。
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◆ 屋敷・観察席
「おい……今見たか?」
カイルが水晶を食い入るように見つめる。
「あれは……俺でも初めて見る手順だ……」
アルヴィンが驚きを隠せない。
「リヒちゃん、三歳で救命術……!?そんなの教えてないわよね?」
母がぽかんと口を開ける。
「しかも魔力まで練り込んでる……普通あの年齢じゃ無理だぞ……」
父が真顔になる。
「……天才って言葉じゃ足りないかも」
姉がきらきらした目で呟いた。
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俺は両手に魔力を集める。
あったかい光がじんわりと広がっていく。
前世でできなかったこと。
この世界だからできること。
(頼む……毒でも病気でもいい……追い出せ……!)
小さな体から黒いもやが少しずつ抜けていく。
呼吸がほんのわずかに強くなった。
「……いいぞ……がんばれ……!」
何度も何度も魔力を送り込む。
力が抜ける。視界が霞む。
でもやめない。
こんな小さな命が、ここで消えるなんて嫌だ。
だから怖くても、絶対助ける。
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◆ 屋敷・観察席
「え……これもう治癒魔法超えてるよな?」
カイルが信じられないという顔をする。
「光の魔法で命を繋いでる……いや、神官級でも無理だろ……」
アルヴィンが青ざめる。
「神様が手を貸してるのかしら……?」
母がぽわんとした声で言う。
「……選ばれし子、確定だな」
父がぽつりと呟く。
「うちのリヒちゃん、国宝級だよ!」
姉がドヤ顔で胸を張った。
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狸が小さく震えた。
次の瞬間、弱々しいけど確かな呼吸の音が聞こえた。
「……っ……!」
目から涙があふれる。
安心したら、体が力を失ってその場に座り込んだ。
「……よかった……生きてる……」
震える声で呟いた。
狸が小さな目を開けて、俺を見つめる。
まるで「ありがとう」と言っているようだった。
「もう大丈夫だからな……多分……」
笑いかけると、狸はゆっくり立ち上がった。
まだふらついているけど、確かに自分の足で歩いている。
「……行くのか」
少し寂しくなったけど、元気に動けるならそれでいい。
俺はその背中を見送りながら、小さく呟いた。
「怖かった……死ぬかと思った……でも助けられてよかった……」
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◆ 屋敷・観察席
「なぁ……俺ら、今とんでもない瞬間を見たんじゃないか?」
カイルが水晶を持つ手を震わせている。
「三歳で救命術、治癒魔法、あの魔力量……」
アルヴィンが頭を抱える。
「もう……うちの子ってすごすぎるわ……」
母が感極まって涙ぐむ。
「いや、すごいなんてもんじゃない。伝説だ」
父が真剣に頷く。
「リヒちゃん、神様の化身かも!」
姉がきらきらした目で断言した。
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森を抜ける帰り道、風が柔らかく吹いた。
さっきまでの重い空気が消えている。
不思議と森全体が温かくなったように感じた。
(……気のせいかな?でも、さっきより怖くない……)
この時、俺は知らなかった。
あの狸が森の神獣だったことを。
そして、この日からずっと俺を見守るようになることを。
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家に帰ると、なぜか家族全員がきらきらした目で俺を見てきた。
そして母が言った。
「リヒちゃん、今日もすごかったねぇ……!」
俺はただ、ぽつりと呟いた。
「……怖かった……」
家族の間に、しばし静かな笑いが広がった。
読んでいただきありがとうございます。
本作品は生成AIと協力して執筆しています。
14話15話を改稿しています。




