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第10話 赤ちゃん、未来を見る? いえ、準備してただけです!

(ビビりながらでも、俺は進む……。準備だけは、怠らない……!)


 そう誓った翌朝。

 俺は、早速“転倒演技”の朝練に励んでいた。


 ベビーベッドの中、あえてグラつかせた重心移動。

 小さな足の角度、体幹の傾き、抱っこされたときの脱力方法まで、徹底的に研究した。


 要するに、“赤ちゃんとしての自然な事故演出”の習得だ。


(こっそり修行してるのがバレたらまずい。だったら……日常で偶然っぽく転べば、怪しまれない!)


 これぞ予防救命士魂。

 最悪の事態を想定し、対応マニュアルを先に作る。

 転倒時の衝撃緩和姿勢は、昨日30回試行してついに完成した。


 これで今日も完璧だ。


 ……と思っていた、のだが。


◇ ◇ ◇


 午前中、母上に抱かれて日向ぼっこをしていた時のことだ。


「ふわあぁ……リヒちゃん、ぽかぽか気持ちよさそうね〜」


(うむ、気持ちいい……が、気は抜けない)


 俺の耳が、カタ……カタ……と、どこか不穏な音を拾った。


(これは……木棚の振動音? あの上に……花瓶が乗ってる!?)


 ここは広間の窓際。

 陽だまりが心地よいソファの横にある古い木棚は、若干グラついている。


 母上が立ち上がれば、すぐそばを通る導線。

 そのとき振動で花瓶が――


(落ちる可能性……高い!)


 俺はとっさに泡を吹いた。


「ぷしゅー……」


「きゃっ、リヒちゃん!? また泡!?」


 抱いていた母上が驚きの声を上げる。

 その瞬間、俺は脱力モードに移行し、全身から力を抜いて“自然落下”を演出。


 母の腕からするりと抜け、ぺたんと床に着地。

 倒れる角度を細かく調整し、花瓶の予測落下範囲から外れる位置へ……。


 パリンッ!


「――えっ?」


 次の瞬間、予想通り棚の上から花瓶が落ち、俺のいたはずの位置に激突。


 床に水が広がり、花が無惨に散った。


 そして。


「……リヒちゃん……今……避けたの?」


「――え、えぇぇぇぇぇ!?」


 姉さんがすっ飛んできた。

 兄さんたちも続いて広間に集合。


「すごい! 花瓶の落下を予知してたの!? 泡吹いて危機回避したの!? リヒちゃんって、未来見えるの!?」


「うーん……もしかして“予知魔法”の兆候とか?」


「赤ちゃんでそれって、天才すぎない?」


(ちがああああああああああああう!!)


 叫びたい。叫びたいけど、赤ちゃんだから言葉が出ない!


 ただの“準備”なのに!

 事前に棚の傾きをチェックして、リスクを計算して、落下範囲を想定して、それに備えていただけなのに!


(これは、予知じゃない。訓練の成果だァアア!!)


 俺は心の中で涙した。

 しかもこの一件以降、なぜか家族の視線が「すごい……」から「神秘的……」に変わった。


 違う、そうじゃない。


◇ ◇ ◇


 そして午後。


 再び母の膝でくつろいでいた俺に、次なる試練が訪れる。


「ふふ、リヒちゃん、すっかり甘えん坊ね〜」


(……だって母上の膝は最高に安心できるんです)


 だが、その安心感の裏に潜む、重大なリスクを俺は察知した。


 母上の着ていたゆったりした服の袖口に、小さな虫が潜り込んでいたのだ。


(……あれは……刺すタイプ!?)


 すぐさま、泡を吹く。


「ぷしゅっ……!」


「わっ!? また!?」


 反射的に手を引く母。

 その袖から、ブンッと飛び出す羽音。


「……あれ、虫だったの?」


「え、まさか……リヒちゃん、虫まで察知したの!?」


 さらに高まる“予知能力者説”。


 いや違う、これただの観察力と警戒心と、虫に刺されると腫れるって知識があるだけです……。


(準備……準備してただけなのに……)


◇ ◇ ◇


 夕食時。


 ついに決定的な“事件”が起きた。


 テーブルの上、兄さんがスープ皿を盛ろうとした瞬間――


「おっと、滑った!」


 兄の腕からスプーンがこぼれた。

 スプーンが勢いよく跳ね、熱々のスープが宙を舞う!


 俺は即座に身体を丸め、後方転倒を選択。

 “頭を守る着地”を意識しつつ、見事にスープの射線から脱出!


 そして泡を一発。


「ぷしゅー……」


 ジュッ、と床にスープが垂れて湯気を上げた。


 直撃していたら火傷は免れなかっただろう。


「……これはもう確定じゃないか?」


「未来……見えてるよね?」


「赤ちゃんで“危険予知”って……すごすぎる」


 また家族の目がキラキラしている。


 やめてくれ。

 その称賛、ぜんぶ間違ってる。


 俺は未来なんか見えてない。

 ただ、危険な状況を事前に想定し、シミュレーションと準備を重ねていただけなのに。


(違うんだよ……。これは……“努力の積み重ね”なんだよ……!)


◇ ◇ ◇


 その夜、ベッドの中。


 俺は静かに天井を見上げながら、今日の“誤解ラッシュ”を振り返っていた。


 慎重すぎて、泡を吹いて避けるたびに、危険を回避してしまう。


 演技力を磨くつもりだったのに、その演技が誤解を生んでいる。

 これではまるで、“未来が読める超能力者”じゃないか。


(おかしいな……準備は完璧なはずだったのに……)


 でも、ひとつだけ確かなことがある。


(備えることに、意味はある。結果がどうあれ、命を守るためには“過剰な準備”が最善なんだ)


 そう、自分に言い聞かせて、俺は再び訓練メニューを考える。


(明日は……転倒演技の着地角度をもう少し改善しておこう)


 今日もまた、家族に“危険予知”と誤解されながらも。


 俺の“ビビりすぎる準備生活”は、着実にレベルアップしていくのであった。


読んでいただきありがとうございます。

本作品は生成AIと協力して執筆しています。


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