第4話: 《共鳴試練・弐──笑いあうための契約》
漣焔は酒吞童子と緋花と共に、静まり返った学園の闇夜に足を踏み出す。
「よし、今夜はお前の“憑依”の真価を試すぞ!」と酒吞童子がにやり。
試練はただのバトルじゃない。
酒吞童子の軽口とイタズラに振り回されながら、漣焔は自身の憑依スキルを制御する感覚を掴んでいく。
「お前、もっと楽しめよ! 戦いは遊びだぜ!」
緋花も笑いながら、「それに、私たちがついてるんだから安心しろ」 と励ます。
バトルじゃない試練、絆を深める時間。
これが漣焔の次なる一歩になる。
夜の学園は静かだった。
風がそっと木々を揺らし、月が雲の隙間から顔を覗かせている。
「……こんな時間にどこ連れて行くんだよ、酒吞」
「へへっ、夜にしか開かない“特別な場所”ってやつさ。ちょっとした悪戯心と、少しだけ大事な儀式──共鳴の儀式だ」
「共鳴?」
漣焔は訝しげな表情を浮かべながら、後ろを振り返る。
そこには緋花が、ふわりと尻尾を揺らしながら微笑んでいた。
「あなたの新しい力……ちゃんと信じてあげてね。彼も、あなたを信じようとしてる」
「え、マジで? 信じてくれてんの?」
「信じるってより、オレはお前と一緒に“遊びたい”んだよ! 遊びながら強くなる。最高じゃねぇか?」
酒吞童子はその場でふわっと宙に跳ね、腕を組んで笑った。
「じゃあ始めようか。“共鳴の儀”──つまり、もっとお互いのことを知るための、ちょっとふざけた試練!」
場所は学園裏手の封印広場。草の上にどさりと寝転ぶ酒吞童子。
「まずは、これだ。横になれ」
「は? なに言って──」
「横になれって! ほら、月がきれいだろ?」
渋々とながら、漣焔も隣に並ぶように寝転ぶ。
「なあ、漣焔。お前ってさ、笑うと可愛いな」
「は? うっせ! なんだよその軽口は!」
「はっはっは! ほら見ろ、また笑ってんじゃん」
「っ、笑ってねーよ……!」
くだらない会話。意味のないやり取り。
でもそこに、確かに心が重なっていく音があった。
「……なあ、なんで俺なんだよ。こんな面倒で、弱くて、自信もなくてさ」
「だからだよ。オレが“楽しめる”相棒って、そうそういない。
でもお前は、違う。真剣に悩んで、ちゃんと進もうとしてる」
酒吞童子は片目を閉じて笑う。
「そういうの、オレ──嫌いじゃねぇ」
その言葉とともに、彼の手が漣焔の胸元へと軽く触れる。
体に、ぬるりとした熱が流れ込んでくる。
──共鳴開始。
「じゃ、やるか。共鳴の儀の、最終段階」
酒吞童子の魂の欠片が、漣焔の中にすっと流れ込んだ瞬間。
“鬼神乱舞──発動。”
漣焔の瞳が紅に染まり、身体から紫炎が立ち上がる。
「……ふっ。楽しいじゃねぇか」
笑ったのは、ふたり同時だった。
共鳴の儀を終えた帰り道、漣焔は緋花の尾に寄りかかりながら、ぽつりと呟く。
「……オレ、最近よく笑うようになったかも」
緋花は小さく笑って、優しく撫でた。
「うん。きっと、それがあなたの本当の姿だよ──漣焔」




