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拾われ少年と神獣の契約学園  作者: ヴェロフ
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第2話: 英霊殿のいたずら者──酒吞童子との邂逅

入学試験での憑依暴走――

あの日、神裂漣焔は初めて学園の門をくぐり、最強の使い魔「九尾・緋花」と共に戦いの渦中に飛び込んだ。

あの模擬戦で憑依の力が暴走し、ギリギリで試験に合格したものの、学園の長たちはその潜在能力に驚きを隠せなかった。


そんな漣焔に、数日後――ひと通の招待状が届く。

「英霊殿堂への招待」


「君の憑依の力を見極めるため、そしてこれからの契約を正式に結ぶために、我々は君を迎えたい」


招待状を手に、漣焔は深呼吸をして学園の奥深くにある英霊殿堂への扉を押し開ける。

そこに待っていたのは――


「まずは自己紹介からだな、俺は酒吞童子――戦いが大好きでな!」


「なあ、神裂くん。いきなり堅苦しくなってどうした?そんな顔してたら…“最強使い魔の神裂さん”が台無しだぜ?」

酒吞童子はにやっと笑って、漣焔の肩を軽くつつく。


「……だからって、からかうのはやめてくださいよ」

漣焔は軽く眉をひそめるが、どこか楽しそうだ。


「だってお前、憑依の時にビクビクしすぎだろ。俺のこと信じろって。楽しく遊ぶんだよ、遊び!」


「遊びって…戦いが遊びってのもなんか違う気が…」

漣焔は言いかけて、酒吞童子の軽いボディタッチに思わず顔を赤らめる。


「おっと、照れんなよ。俺はただのイタズラ好きな姐さんなんだぜ?でも、その照れ顔、嫌いじゃないぞ」

酒吞童子はいたずらっぽくウインクを投げる。


「……バカ」

漣焔は小声でつぶやくが、その目は確かに楽しそうだった。

酒吞童子はニヤリと笑って言った。

「よーし、神裂くん。戦いってのはな、遊びみたいなもんなんだぜ。楽しくて仕方ねぇから、やっちゃうって感じさ」


漣焔が真剣な顔で返す。

「遊び…ですか?」


「そうさ。無理に気負わず、力を信じて楽しめばいい。でなきゃ、長続きしねぇってもんだろ?」

酒吞童子は拳を軽く握り締めて構えた。


「さあ、俺と一緒に遊ぼうぜ!それが今回のお前の試練だ」


そう言うと、周囲の空気がピリリと変わり、試練の幕が上がった。

酒吞童子の目がキラリと光る。

「さあ、漣焔くん。俺の本気、見せてやるぜ!」


彼女は軽やかに構えを取ると、空中で指をくるりと回し、始まったのは“演武(龍竜舞)”。

それにより、酒吞童子の速さと力は一段階増し、まるで龍が舞うかのような流麗な動きで漣焔に襲いかかる。


「これが俺の“酒呑破嵐”だ!」

鬼の如き拳が嵐のように連打され、風が巻き起こる。


漣焔は体をひねりながら間一髪でかわし、反撃に転じる。

「“鬼烈焔牙”!」

漣焔の拳から火の如きエネルギーが放たれ、酒吞童子の打撃を打ち返す。


二人の技が激突し、轟音と衝撃波が周囲を揺らす。

酒吞童子は笑みを崩さず、次の技に繋げた。

「“鬼神乱舞”、見せてやるぜ!」

激しい打撃の乱舞が火花を散らし、まさに鬼神の乱舞そのものだった。

酒吞童子の猛攻をかわしながら、漣焔が小さく叫んだ。

「緋花、今だ!」


緋花がすかさず反応し、二人の息がピタリと合う。


「烈火迅雷撃!」

九尾の炎が閃光のように舞い、漣焔の“鬼烈焔牙”がその一撃を強烈に追撃する。


連携の一撃が決まると、酒吞童子は笑いながら手を振った。

「よしよし、なかなかやるじゃねぇか。でも、俺の本気はまだまだこれからだぜ?」


漣焔も息を整えながら答えた。

「遊びじゃない、試練だ。負けられない」


酒吞童子はにやりと笑って言った。

「よーし、それじゃあ本当の試練を始めようか!」

酒吞童子は勝ち誇ったようににやりと笑うと、ふっと力を抜いてその場に寝転んだ。

「さあ、本当の試練を始めるぜ……って言いたいけどさ、まずは一息つこうぜ、漣焔。ほら、一緒に横になろうや」


彼女のその無邪気な誘いに、漣焔は少し戸惑いながらも、どこか安堵の色が混じった目でそっと隣に腰を下ろした。

酒吞童子は空をぼんやり見ながらニヤリと笑った。

「なあ、漣焔。正直言って、こんなにおとなしく寝転がるとは思わなかったぜ?お前、案外マジメなんだな〜」


漣焔は少しムッとしながらも、苦笑いを浮かべる。

「うるせぇな。でもお前こそ、そこまでリラックスしてどうするんだよ」


酒吞童子は手を頭の後ろに組んで、ふわっと伸びをした。

「そりゃあさ、遊びは楽しまなきゃ意味ねぇだろ?試練だって肩張ってやるもんじゃねぇっての。まあ、俺が言うのも説得力ねぇけどな!」


漣焔が真顔で突っ込む。

「説得力ゼロだな!」

酒吞童子は笑いながら肩をすくめた。

「だって俺、普段は自由奔放が売りだからな。あ、そうだ、次の試練で負けたらお前、酒の買い出しな!」


漣焔が目を見開く。

「え、なんで俺が…?」


酒吞童子はにやりと笑い、ウインクした。

「だって強いって言うから、俺の分も飲ませてくれよってな!」


漣焔は呆れ顔でため息をつきつつも、どこか嬉しそうだった。

「わかったよ、覚悟しておけよ、姐さん」


二人のやりとりは、まるで長年の友人のように自然で、試練の緊張をほどよく和らげていた。


英霊殿の奥深く、扉も窓もない石造りの部屋。中央には古びた紋様が描かれた大きな円環――“共鳴陣”が刻まれていた。


 「へぇ〜、こんなとこあったんだ。結構ムーディーじゃん?」


 酒吞童子がニヤニヤと笑いながら、漣焔の隣に並ぶ。彼の足取りは軽く、まるで散歩にでも来たかのようだ。


 「ここが、“感情共鳴”の場だって……緋花が言ってた。憑依の精度を高めるには、互いをもっと深く知る必要があるって」


 「うぇ〜〜い、心のオープン会議ってわけか。おっけーおっけー、任しときな?」


 ふざけた態度を取りつつも、酒吞童子の瞳が一瞬だけ真っ直ぐ、陣の中心に向けられる。


 二人が陣に足を踏み入れると、赤く淡い光が足元を包み、空気がふと重くなる。


 「……手、出して」

「ん、いいけど……恋人繋ぎのほうが、効果あるとか言わないよな?」


 「……普通でいい」


 ぶっきらぼうに言いつつも、漣焔はそっと手を差し出した。彼の掌に、少し冷たい指先が触れる。


 ――その瞬間。


 目の前の景色が、静かに滲み、溶けていく。


 記憶の断片が混ざり合う。

 燃える社。雨に濡れた木々。抱きしめられたあの夜。

 誰かの背を追いかけた日。声なき叫び。

 孤独、怒り、哀しみ、そして――温もり。


 「お前……こんな寂しいもん抱えてたのか」


 呟くように漏れた酒吞童子の声には、いつもの軽さがなかった。


 「……お前だって。ひとりだったろ。最初から……」


 「へへ。見たな〜、オレの恥ずかしいとこ」

幻影の中、酒吞童子が照れ隠しに舌を出す。そして、不意に笑った。


 「でも、なんかさ――今は、ちょっとマシかも。オマエといればな」


 光が緩やかに満ちて、陣が消えていく。


 二人はまだ手を繋いだまま、現実に戻っていた。


 沈黙が数秒、流れたあと。


 「ま、これでオレらの“絆パワー”がバッチリ深まったわけだ。次の試練も余裕っしょ〜!」


 「……もう、真面目にやってくれよ」


 呆れたように呟きつつ、どこか照れたような漣焔の横顔を、酒吞童子が見上げる。


 「じゃ、ちょっと寝るわ〜。憑依、精神的に疲れるんだよね〜〜〜。……あ、そうだ」


 彼女はポン、と掌を叩く。


 「明日の夜、こっそり寮の窓から出といでよ。次の試練ってやつ、超オモロイの考えてっからさ!」


「えぇ……またお前の“試練”かよ」


 「ちっちっち、黙ってついてきな。後悔は……ちょっとしかしないと思うよ?」


 ウインクと共に、彼女はひらひらと手を振って部屋を後にした。


 残された漣焔は、ふと自分の掌を見る。そこに残るのは、あたたかさだった。

寮の部屋に戻った漣焔は、ベッドに倒れ込み、天井を見上げながらため息をひとつ。


 「……疲れた。ていうか、濃すぎだろ今日」


 共鳴の儀で見た記憶、感じた感情、そして――

 あの悪戯みたいな笑顔が、頭から離れない。


 「つか……あいつ、絶対バカだろ」


 笑いながら、そう呟いた瞬間、自分でも気づいた。

 ――こんなふうに素で笑うなんて、いつぶりだ?


 ふと、窓の外から声が飛んでくる。


 「漣焔〜! 今から寮の屋根登って満月見る試練〜〜! 準備しとけ〜〜〜!」


 「……おい、今“試練”って言ったか?」


 思わず吹き出す。


 「……バカだ、ほんとバカだあいつ……っはは!」


 笑いが止まらなくて、枕に顔を埋めた。


 でも、そんな自分が、少しだけ――ほんの少しだけ、好きになれた気がした。


 「……しゃーねぇ、付き合ってやるか。次の“試練”ってやつに」


 窓を開けると、月が笑っているように見えた。

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