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エンジェルウィング


《ヒロ様との決闘に勝利しました!》

《140000Gを取得しました》

《ロングソードを取得しました》

《始まりの鎧を取得しました》

《HPポーションを――》


チクチク、チクチクと。

動きが悪くなっていく彼に攻撃を浴びせ続ければ呆気なく終わった。


「……クソッ、なんで、なんで……!」


《決闘場から退出しますか?》


ぶつぶつと呟く彼は無視して。

そのアナウンスに俺は答える。


「『はい』、と。じゃあね」


戦利品としては上々。

それではさらば!


《決闘場から退出します》



「……『寄生』スキルか」



あの決闘中。

彼は気付いていなかった様だ。


明らかに、ヒロの『ステータス』が落ちていた事に。

そしてそれは、間違いなく寄生スキルの影響。



《――「全てにおいて、俺はお前の“劣化版”だ」――》



俺は嘘をついていた。

終盤。間違いなく――少なくともAGIに関しては、俺の方が彼よりも高かったはずだ。


必死すぎて、アイツは気付いていないだろうけど。

ステータスを見られれば……いや、挑発の意図に気付いて冷静になられていたら不味かった。


あんだけ短気な『パワーブレイク』君だからこそ気付かれなかったのだ。



「……無職、ねぇ」



戦闘に時間を掛ければ掛けるほど、『寄生』によるデバフ効果が強くなる。


得られるスキルは一度だけだが――案外強いぞ、コレ。

プレイヤー相手なら、ステータスを見られない限りバレなそうだし。


普段の狩りには全く向かないけど!



「ボスモンスター相手なら輝くか……?」



このFL、始まりの街を中心に――4方向に新エリアが待っている。

東は緑広がるエリア。

西は雪舞うエリア。


……北と南が何故抜けているのか?


それは、未だに踏破者が居ないからだ。

攻略によれば、そのエリアに踏み込む為にはボスモンスターを倒さなければならない。


そして、北南のボスを誰も倒せず――そのエリア情報は闇に閉ざされていると言う訳。


「まあ、まだ一週間だしな」


東西も中々困難だったようだが、北と南はそれ以上。

ボスのレベルも高く――『まだまだ早い』とゲーム製作者から告げられているようだったらしいぞ(攻略本並感)。


結果、『最前線』と呼ばれるトッププレイヤー達は新エリアでレベル上げ&スキル上げ中。

そしてその中には――当然『プロゲーマー』も居るわけで――



《――「分かりやすく言ってやろう。“モブ”なんだよ君は」――》


《――「覇気が無く、相手の弱点をひたすらに攻める……客が一番面白くないタイプ」――》


《――「君のそういう所が、“向いてない”」――》



「――っ!!」



『プロゲーマー』。

その単語で――仕舞い込んでいた言葉が蘇る。



「ああクソっ」



もう俺は、“あの世界”とは関係ない。

ただの無職。そうだろ!



「……はぁ」



嫌な事思い出した。

一週間で綺麗さっぱり、なんて上手い事にはならないか――



「!?」

「あ、あの~」



俯いていた顔を上げた。

すれば、一人のプレイヤー。


思わず尻餅。だっさ(無職)。



「大丈夫ですか?」

「……!」



差し出された手。

俺は、舐めていた。

『フルダイヴVR』――その真価を。


今。

目の前には、とんでもない美少女が居る。




《レイ LEVEL21 聖騎士》




髪は綺麗な白銀のボブカット。

輝くその瞳。

スレンダーな体型に、純白を基調とした鎧が美しい。


これがゲームのアバターだとしても。

言葉すら出ない――そんな容姿。

そして俺は、彼女を知っていた。


先程のトラウマワード。

ソイツは、『プロゲーマー』だ。



「……『エンジェルウィング』の」

「わー! 知ってて下さったんですね!」



エンジェルウィング。

このLFで名を上げているプロゲーマーチームの一つ。

その一人……プレイヤーネームはレイ。

プロフィール写真で見たとおり。

違った所といえば、装備ぐらいだ。


……そう、残念ながら彼女の素晴らしい容姿はゲームのアバターだからじゃない。

正真正銘――“現実”そのまんまなのだ。



《――「何より君って、ビジュアルがさ、ね?」――》


「……っ」



ああ。

本当に実感する。

彼女達と俺は――別の世界の人間なんだと。



「……どうも」

「あの! 無職ってどんな職業なんですか?」



手を取り立ち上がれば、そんな視線。

その純粋な瞳が。

こんな自分には、眩しすぎて。


曇ってしまいそうだ。

どす黒く、雨が降ってしまいそうな程に。



「試してみるか? レイ」

「はい?」



こんな世迷い言を、ほざいてしまうぐらいには。



「“闘おう”――それが一番理解(わか)るだろ?」


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