寄生スキル
☆
《始まりの街にログインしました!》
――「おい見ろよアレ!」「無職が居る」「無職が居るぞ」――
降り立った瞬間コレである。
こういう時、普通は周りのフルダイヴの景色に感動するところなんだが。
周囲の目線が突き刺さってます。
これが――“特別”――って奴か。
「――なぁアンタ、スクショ良い?」
「!? い、良いよ」
人気者は辛い。
これが特別か……。
無職サイコー!
「あ、アタシも!」
「どうぞどうぞ」
掛かる声。当然快諾。
パシャパシャ。
おいおい人生で一番輝いてるんじゃない?
☆
「写真――」
「いやもう勘弁して下さい……」
逃げる様に人目から外れた場所へ。
雑貨屋の裏である。
「はぁ……」
ようやく息を付けた。
ゲームさせて!!
さっきからスクショばっかりなんだけど。
というか、恐らく隠し撮りしてる奴らも居るし。どんだけだよ無職。
「……『ステータス』」
そうだスキルを見よう。
このFL、豊富なスキルが職業別にある。
いや無職のスキルって何だよ。
□
プレイヤー名:サトウ
職業:無職
LEVEL1
HP:1000
MP:100
STR(筋力値):5
INT(知力値):5
DEX(器用値):5
AGI(敏捷値):5
VIT(体力値):5
MND(精神値):5
ステータスポイント:残り0ポイント
罪ポイント:【0】
skill:
寄生LEVEL1
装備 :なし
所持品:HPポーション(小) MPポーション(小)
所持金:10000G
取得称号一覧
□
《スキル説明:寄生》
無職専用スキル。
モンスターなど、あらゆる対象に発動可能。
状態異常『寄生』を対象に付与し、対象のスキルを一時的に使用出来る。
対象によって、付加効果が付くこともある。
スキルレベルによって、寄生時に使用できるスキルが変化する。
□
「えぇ……」
ふざけてんのかコレ?
寄生って、まんま無職じゃないか(憤怒)。
……とりあえず試してから考えよう。
もしかしたらクソ強いかもしれないし。
「まずは武器だな」
☆
とりあえず歩いて、ハゲ頭の上にその表示があるのを確認。
流石フルダイヴ。このテカリっぷりも現実まんま。
《始まりの武具店》
『やぁ。武器を見ていくかい?』
「見ていくます」
□
ナイフ
120G
※職業制限により装備不可
□
ロングソード
120G
※職業制限により装備不可
□
ソード
120G
※職業制限により装備不可
□
アックス
120G
※職業制限により装備不可
□
ロッド
120G
※職業制限により装備不可
□
ハンマー
120G
※職業制限により装備不可
□
「……はぁ?」
どうやら無職に武器は使えない様だ(絶望)。そりゃそうだ、危ないもんね。
現実でも同じだ。というか犯罪。
……いやいや。
そんなとこまで忠実に再現しなくて良いって!
え、どうすんのコレ?
素手? 無職が素手喧嘩かよ?
もっとやばい奴じゃねーか!
「ああああああああ!!」
――「無職が叫んでる」「すげーRP」「どうせすぐ辞めるだろ」――
聞こえてくる声。
とりあえず、使えないけど買っておこう。
なんかこう、投げたりして使えるかもしれないし? ナイフとかね。
《ナイフを購入しました!》
《ロングソードを購入しました!》
《アックスを購入しました!》
《ソードを購入しました!》
《ロッドを購入しました!》
「……はぁ」
使えない武器を購入完了。
意味あるのかなこれ。何て考えてはならない。だって買うもの他にないし。
万を持していざ、戦闘エリアへ!
☆
《スライム LEVEL1》
「はぁ、はぁ……」
草原っぽいエリアに出て、現れたのは青色のゼリー。
とりあえず普通に戦ってみた。
5分ほど殴る蹴るの暴行をスライムに浴びせた結果、ようやく半分ほど減りました。
……周りは一瞬で倒している風景を、うらやましげに見ながらね。
『ピギ』
「あぁ……」
もう疲れた。
……なんて。
ここからが無職の見せ所よ!
「『寄生』」
そう唱え、スキル発動。
対象は勿論目の前のスライム。
発動と同時に――スライムに灰色のオーラの様なものが現れる。
《スライム LEVEL1 状態異常:寄生状態》
『ギ……』
めっちゃ嫌そうな顔するじゃん……。
そりゃ寄生されてるもんな。
『ギィ――!』
「!?」
いや、コレバグってない?
なんかさっきよりスライム、動き良いんだけど?
間違いなくこれ怒ってるわ!
「ぐぁ……!」
『ギ』
「ッ――」
何とか追撃は跳んで避けて。
目が“本気”になっているスライムに対峙。
……いや、これじゃタダのバフ――
《スライムの寄生段階が上昇しました》
《スキル:スライムタックルを取得》
「は?」
『ギ……』
「ッと――!!」
と思ったら、鳴るアナウンス。
スライムの動きは変わらないが、何か手に入った。
……こういうのは、とにかく叫んで試すに限る!
「『スライムタックル』!!」
『ギ!?』
刹那、身体に働くモーション。
前向きに慣性が行き、そのジェル状の身体に追突!
『ギィ……』
「めっちゃ減ってる」
さっきまでの無職パンチ(俺命名)は、せいぜい5%しかスライムのHPを削らなかった。
だがこのスライムタックルはどうだ?
なんと30%!
おいおい桁が違うぞ。
『ギ!』
「ッ、『スライムタックル』!」
「ギ……」
《経験値を取得しました》
《寄生対象が居なくなった為、『スライムタックル』スキルが消去されます》
「……消えるのかよ」
まあ良い、分かってきた。
この無職の使い方が。
とにかく『寄生』しろって事ね!
☆
「ギ……」
《経験値を取得しました》
《寄生対象が居なくなった為、『スライムタックル』スキルが消去されます》
《経験値を取得しました》
《寄生対象が居なくなった為、『スライムタックル』スキルが消去されます》
《経験値を取得しました》
《寄生対象が居なくなった為、『スライムタックル』スキルが消去されます》
☆
「……いやいや」
アレからスライムタックルをぶちかまして、スライムを倒す事早一時間。
レベルは早くも3になったが。
気付いてしまった事がある。
この職業、完全に相手依存じゃない?
もし寄生スキルが効かない相手とか居たら詰み。
しかも効いたとして、スライム相手じゃ『スライムタックル』のみしか使えない。
……周りの剣士とか魔法士とか、ソロでも凄い勢いでモンスター狩ってるし。
対して無職の俺は、寄生してスライムタックルを繰り返すのみ。
そして倒したら失って終わり。
「……この先大丈夫なのかな」
無職のままだったら。
いつか何も出来ないまま、無職パンチを繰り返すだけのカスにならないか?
というか、せっかく寄生スキルで相手のスキル? を奪っても倒したら消えるし。
成長した感じがない。
この先、未来への不安が生まれてくる。
……あ、あれ?
俺、無職のままで良いのかな……?
「現実と同じとか笑えねーよ」
ふざけんな。
なんでこんな気分にならなきゃならないんだ。このゲームの製作者は天才か?
「……」
ああ。
でも。
なんか、燃えてきたな。
「無職上等!」
呟いて、スライムに立ち向かう。
先行き不安、それでも良い。
どうせ今の俺はゼロ以下のマイナス。
それなら――這い上がってやる。
この職業と共に。
《スライム LEVEL1》
「『寄生』」
『ギ……』
さあ、楽しいレベル上げの時間だ。
現実と仮想世界の俺がリンクしていくのを感じながら、俺は戦っていき――
☆
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》
《『職業訓練』スキルを取得しました》
その、新たなスキルを手に入れた。