表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/120

記録『ある時代における偉人たちの足跡』

◎アンジェ・アクシア・アースの記録


出身は旧ミストルティア王国アース村。性別は心身共に女性。配偶者はニコル・アクシア・アース。


機械国ピクトにおける重鎮。魔力及び魔法研究の第一人者。悪魔教育学の開祖。


主な功績は『知識の海の発見』『悪魔に対する教育制度の確立』『性別学の提唱』『世界地図の作成』等。


著書は『魔術指南』『悪魔の子供の育て方』『親離れと子離れ』『異文化交流の掟』『趣味の開拓』『真剣無敗の田舎剣士、都会派組織で無双する』等。



◎ニコル・アクシア・アースの記録


出身は配偶者のアンジェと同上。心身共に女性。


世界的に有名な剣豪であり、竜人の末裔。独自の剣術による英雄譚が各地に残る。


主な功績は『未開拓地域の発見』『少数種族の保護』『龍族の再発見』『治癒魔法の開発』『世界地図の作成補助』『竜人の復興』等。


著書は『世界の歩き方』『偉大なる教師、アンジェ』『妊婦でもできる!健康運動』『死ぬほど気持ちいい夜のすすめ』等。



◎ビビアン・フォン・ランスロット・アクシア・アースの記録


出身は旧ニーズヘッグ帝国フヴェル領大釜の洞窟。性別は不明(公称は女性)。配偶者はニーナ・フォン・アーサー・アクシア・アース。


国王ニーナと共に、世界有数の先進国である機械国ピクトを治める。魔法工学の第一人者。

功績を残した分野が多岐に渡るため、現行のあらゆる魔法研究においてその名を目にすることになる。


主な功績は『悪魔繁殖生態学の確立』『魔力平和学の確立』『悪魔生理学の発展』『義体の開発・流布』『魔道具製品の流布』『知識の海の流布』『野生アウスの生態研究・保護・管理』等。


著書は『魔力通信の未来』『知識の海依存症の治療』『水の星から観る宇宙』『外世界概論』等。



◎ナターリア・ハイエロファント・ハイエルフ・アクシア・アースの記録


出身は旧ミストルティア王国サターン。性別は心身共に女性。配偶者は無し(複数の女性と愛人関係にある)。


ハイエロファント神聖国の国王であり、音楽家。隣国である機械国ピクトと強い同盟関係にある。

人間でも悪魔でもない新たなる種族『エルフ』を生み出した始祖であり、魔力を持たない唯一の生物。


主な功績は『音楽学の発展を含む音楽文化への多大な貢献』『自然魔道具の発展』『神聖王国の勃興』『ハイエルフ・ダークエルフ族の創立と統轄』等。


著書は『よくわかる魔道具のつくりかた』『ハイエロファント歌唱・演奏大会講評まとめ』『音楽が耳元にある暮らし』『漫画でわかる観葉植物』等。



※特記事項【エルフ族】


○エルフの歴史

エルフ族は人間でも悪魔でもない種族であり、ナターリア・ハイエロファント・ハイエルフ・アクシア・アースを起源とする。


始祖ナターリアはこの世界で唯一魔力が存在しない生物である。これは自死とともに後述のエイドリアンを生み出す際、魔力の全てを明け渡したからだと伝えられているが、詳細は不明。


ナターリアは美貌と歌唱力で数多の人間を虜にし、機械国ピクト首都インバースにて音楽を嗜む同好会を組織。これがハイエロファント神聖国の前身となる。


当時魔王による危機に晒されていたピクトは、ナターリアに対し最新式の魔道具を提供。エルフ族を象徴する長耳の魔道具は、周囲の魔力を操る機能があり、これを用いて魔王に備えさせた。


その際、ナターリアに追随して同好会も魔王討伐に協力。荒野を緑化し、防衛線を築き、この地をハイエロファントと名付け、ナターリアと同様の魔道具の耳で武装した。


やがて魔王が倒れると、防衛線を整備した民が土地の所有権を主張。その権利は認められてピクトの特区となった。

その後ハイエロファント神聖国として円満に独立。ヤマト連邦を含む周辺国から国として認められ、現在に至る。


○ハイエルフの特徴


ハイエルフはかつて人間だった者たちが魔道具や魔力操作などの手段によって人間を脱したことで生まれた種族である。


人間のような肉体接触や悪魔のような魔力供給ではなく、植物を介して生殖する。

周囲の魔力を乱す性質のため、詳しい調査は難航している。


現在ハイエロファントに居住しているハイエルフ族は、少量の魔力を繊細に操る技術と、改造ではない肉の長耳を保持している。また、個人差はあるものの一点の年齢まで成長すると老化が止まるため、寿命が理論上存在しない。これは老化が鈍化する性質の悪魔とは異なり、肉体的変化の完全なる停止である。


ハイエルフは植物を好み、住宅や家財を全て植物で作る。

食事も植物由来のものが多く、肉食は禁忌ではないがあまり好まれていない。

音楽が文化として根付いており、世界各地の音楽家が訪れる。


なお、始祖であるナターリアは以上の性質に当てはまらない部分が多いとされている。これは人間としての性質を色濃く残しているためである。


建国100周年のハイエロファントでは、著名作家によるナターリア二次創作本が大量に発行され、各国に輸出されている。今でも語り継がれる名著『ナターリア座敷牢監禁合同』が他国に渡った際、外部からハイエロファントへの政治的攻撃ではないかとピクトに疑われた件は特筆に値する。



○ダークエルフの特徴


ハイエルフから派生して生まれた、褐色の肌が特徴的な種族。

後述するエイドリアンが長。ハイエロファント神聖国の東部に位置する魔王の谷を本拠地としている。


ダークエルフとハイエルフは同じ種族だが、出生時の肌色、魔力量、成長後の筋肉量に違いが見られる。

一般的なハイエルフは内在魔力量が少ない傾向にあるが、ダークエルフは他の悪魔と比較しても多い部類に入る。

故に、ハイエルフの中でも魔力を豊富に生まれ持った者がダークエルフへと変異するのではないかとされている。


ハイエルフとは違い、国王に関する創作物の発行は許されていない。



◎エイドリアン・ハイエロファント・ダークエルフ・アクシア・アースの記録


出身は旧ミストルティア王国サターン。

性別は不明(公称は女性)。配偶者の有無は不明。


ハイエロファント神聖国国王ナターリアの実妹。ダークエルフ族の長。『英魔雄王』の異名を持つ。現代において魔王は彼女を指す。

出生に謎が多く、現在研究対象とされている。


主な功績は『先代魔王の討伐』『ダークエルフ族の統率』『植物魔法学の発展』『鉱物学・地質学・地理学への貢献』『異説魔法の安全な実用化』等。


著書は『よいこのえほん(シリーズ作品)』『剣術と魔法の実践的融合』『宝石図鑑』『自伝:母を名乗る狂人との温かく賑やかな日々』等。



◎ニーナ・フォン・アーサー・アクシア・アースの記録


出生は旧ミストルティア王国ピクト領インバース。性別は女性。配偶者はビビアン・フォン・ランスロット・アクシア・アース。


機械国ピクトの国王。前身である旧王国ピクト領の時代から領主として一帯を治めていた。

全身を義体化した悪魔であり、現在延命治療として主流になっている『サイバネティクス』の原型を作ったされている。


主な功績は『機械国ピクトの建国』『悪魔の保護』『各分野における偉人の擁立』『旧ミストルティア王国と旧ニーズヘッグ帝国の仲裁』『魔力産業革命の推進』等。


著書は『全世界の機械化に向けて』『革命なき民主主義への移行』『義体化に伴う知識の海を介した電脳への接続』『真珠の魅力と価値について』『大英雄ニコルに聞く世界一イケる性の秘密』『水を飲む』等。

※上記はいずれも別名義を用いて国王の立場を隠蔽した上で出版された。





◎ドイル(ヤマト名:ギンギラ・怒射る)


出生からその半生までは謎が多く、傭兵として各地を転々としていたとされている。

やがて後の機械国ピクトにてニーナの目に留まり、ミストルティア王国の特使としてヤマト連邦を訪問。

その際、ヤマト連邦ギンギラ国に滞在し、内部抗争を平定。客人の身分から、ギンギラ国大名となる。


その後ミストルティアにて特使の責務を果たし、ギンギラへと帰還。闘争と政治に明け暮れ、天下統一を成し遂げる。


尚、本人は常に不服であり、妻であるモズメに使われていたという説もあるが、歴史家によると「前人未到の天下統一を成し遂げた武将がそんな情けない人物であるはずがない」として、現在は有力な説と見做されていない。


剣の腕前は、各地で名を馳せた剣豪たちが目を剥くほどであったとされており、かのニコルも最も尊敬する剣士のひとりとして彼の名を上げている。


ヤマト連邦の居城寝室にて、妻であるモズメと、長く連れ添ってきた家臣たちに見守られ、死去。

「悪魔祓いは廃れていくだろう。俺が最後であるべきだ」と遺した。



◎モズメ(ヤマト名:ギンギラ・百舌鳥女)


ヤマト連邦将軍ドイルの正妻。タヌキの魔物の血を引く人間。

ドイルを将軍の座に押し上げた右腕であり、女性の地位が低かったヤマト連邦に改革をもたらした女傑。


ドイルとの夫婦仲は良好で、ドイルの死去までに23人の子を残した。

付き人であるサンガの日記によると「ドイルからモズメを求めることは一切なかった」「モズメの暴走を止めることができず、臣下として不甲斐ない」とのことだが、ヤマト連邦はこの記述こそ偽りであると否定している。


尚、現在も存命であり、ドイル亡き後は家督を譲って隠居し、晴耕雨読の生活を営んでいる。



◎ミカエル


出身は旧ミストルティア王国マーズ村。

機械国ピクトのビビアンやアンジェと旧知であったとされている。


旧ミストルティア王国と旧ニーズヘッグ帝国の大規模戦争において、頭角を表す。

戦記に残る『イオ森の戦い』にて、彼は魔法使いとして旧ニーズヘッグ帝国の密偵を退け、近隣一帯で武名を上げる。

その後サターンに渡った彼は悪魔祓い連盟と合流。当時の連盟長(詳細不明。勘が鋭いという伝聞が残るのみの人物)と結託し、民衆と共に蜂起。

最終的に機械国と連携し、王国内部に侵入した帝国勢力を殲滅。国王より勲章を受け、合意には至らなかったものの、両国の和平交渉の場に立った。


その後マーズ村に戻り、王都や機械国の優れた魔法技術を持ち帰る。以降は後進の育成に専念し、妻や子供たちに看取られながら95歳で死去。葬儀には当時の周辺国国王たちが身分を隠して参列したという。



◎ジーポント


出身は旧ミストルティア王国マーズ村。

幼少期の友人関係はミカエルと同様。


ミカエルの蜂起に伴い、マーズ村を出立。彼に合流し、戦地での戦闘支援に尽力する。

マーズ村で建築技術を学んでいた彼は、工兵として拠点設営に尽力した。

ミカエルとは異なり、人頭に立つ機会はほとんど無かったが、旧友として彼の内面を支え続けたという。


休戦後は各地の復興に貢献。特にサターンにおける彼の活躍は目覚ましく、各地で学んだ技術や貴族との繋がりを活かし、先進的で機能的な街を再構築することに成功した。

現在も彼が築いた街は都市計画の模範として世界各地で参考にされている。


晩年の動向は不明。マーズ村に一度帰還し、ミカエルの葬儀に出席した形跡が残るのみである。その際、義体で老いた肉体を補助していたという証言が残っているが、真偽は不明。



◎アルミニウス


旧ミストルティア王国ピクト領で活躍した軍人。

『大剣士』の異名を持つ。

独特な化粧や巨大な剣が特徴であり、故郷の村の伝統だったとされているが、彼が生まれ育ったというその村の情報は残っていない。


主に魔物の撃退などでピクト領に貢献した。

正確な時期は不明だが、エイドリアンとの真剣勝負で連敗を喫し、引退を決意。村があったという土地へ向かい、その後の消息は知れない。

当時の軍人の証言によると、無念の引退ではなく、剣技と志を託すことができたことにより、剣の道に満足したためだという。


現在のエイドリアンの剣技は、彼とニコルの影響が大きいとされている。



◎クリプトン・フォン・インカ


旧ピクト領で、当時領主だったニーナの義体を製造していた、工房の主任技師。

ビビアンの師にあたる人物として、機械国の教科書にその名が記載されている。


現在の実用的な義体を生み出したのはビビアンだが、その源流には彼の研究がある。現在も歴史的資料として博物館に記録が残っており、その叡智の一端を見ることができる。


彼は旧ミストルティア王国インカ領の出身とされており、領主一族に名を連ねる貴族として爵位を持っていた。

だがインカの貴族としての振る舞いは皆無であり、関係者も彼の出自に疑惑を向けていたという。

一説にはインカ家から勘当に近い扱いを受けていたとされているが、詳細は不明である。

なおインカ領領主一族は、旧ニーズヘッグ帝国に接触して密偵に関与したため、外患誘致の罪で処刑されている。


ニーナが機械国ピクトを建国した年に死去。建国の式典に参加した彼は、落涙するほど笑ったという。



◎ドムジ・フォン・ピクト


ニーナの父親であり、旧ピクト領に悪魔を受け入れた人物。

現在の社会の基盤を作った人物として、世界各国のあらゆる教科書にその名が載っている。


彼は魔力がもたらす武力と財力という実利的な側面に魅力を感じていたとされているが、現在の悪魔中心主義者の間では、彼がまるで無欠の聖人であったかのように語られているため、留意するべきである。


現在のピクト家は機械国ピクトの名家として知られており、議会に当選し国政を担う者も少なくない。



◎ガシャンドクロ


カブトムシの悪魔。先代魔王(食魔王とも呼ばれる)の側近を務めていた。

彼の立場の変遷は、悪魔社会黎明期特有の特別裁量として、悪魔に対する法律の参考資料にされている。


現在は庭師として王家の居城を清掃している。

毎年大規模な噴水を設置する計画を立ててはビビアンに却下されている。そして、城下町の酒場で嘆くのが春の風物詩となっている。

これが転じて、大切にしていたものを無碍にされる嘆きを意味する『虫のやけ酒』という慣用句になった。

『(こんなことをされては)虫も酒を呑む』『酒虫になる』とも言う。


現在も存命である。



◎フニフニ


まだ何処かで生きているとされている。アンジェによる『透過魔導法によるドウ解析試行』と、ビビアンによる『並行世界観測実験』により、その可能性は高くなったとの情報あり。





要調査。進展があり次第、追記する。

趣味の産物とはいえ、それなりにはこだわりたいし。

──アンジェとニコルの娘、ニーチェ。

今回でこの物語は完結いたしました。

思いがけず長いお話となってしまいました。ご愛読くださった方々には感謝の念が尽きません。


完走後のクールダウンとして、120話の位置に長めの後書きをご用意いたしました。本編ではございませんが、舞台裏にご興味のある方は是非お越しください。


感想・評価・見たかったエピソード等、お気軽にご記入ください。お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ