4. 反響
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天文十四年(1545) 九月 山城国葛野郡 近衛邸
夏の熱い日差しも落ち着き、秋の訪れを感じさせる涼しげな風が吹く。
「姫様、朝餉の用意が整っております。起きてくださいませ。」
「うぅ〜ん、あとちょっと…。」
「姫様、晴嗣様もお越しになられますよ。早く起きてくださいまし。」
「うぅ〜ん…。」
侍女の幸が何度声をかけても、孝子は起きなかった。
ふかふかの布団に包まれて微睡むこの時間…。何よりの幸せだわ。
あぁ、まだ起きたくない。このまま二度寝しよう…。
「姫様!!!」
ついに布団がはがされた。
小西に頼んでいた布団が、出来上がった。
孝子は、初めにできた布団を父稙家と兄晴嗣に試してもらった。
初めて布団を使用した日の翌朝、近衛邸は大騒ぎになった。
「こ、これは…。なんと言うことじゃ。早速主上にお知らせせねば。」
「父上!お待ちください。お支度がまだ済んでおりませんぞ。」
晴嗣が引き止め、逸る稙家をなんとか押し留める。
「これを献上すれば、主上は必ずお喜びくださる。近衛家の覚えもより一層目出たくなるはずじゃ。」
その後、布団は帝へと献上され、その寝心地にいたく感動された帝は、布団が民に普及し、皆がこの夢のような寝心地を味わえるよう望まれたという。
実際、布団は帝御愛用の品として、堺の商人らがこぞって買い求めた。
今までにないふわりとした感触からまるで雲の上にいるようだと、雲布団と呼ぶものもいた。
布団が売れれば売れるほど、孝子には莫大な金が入るようになった。
この資金をもとに次は農業改革だ。
美味しいご飯をたらふく食べている自身の姿を想像し、孝子はほくそ笑んだ。