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マリア姫の護衛として

ディルさんの誘いに乗り、俺達はマリア姫の護衛に当たることになった。

正確には護衛兼討伐部隊という感じらしいけどな。

モンスターの襲撃などに対応する為に動くこともあるって感じ。


ディルさんはかなり多忙の身らしく、今まではマリア姫の身の回りの世話や

国王や后の護衛などを行なっていたそうだ。

何かあればモンスターの討伐まで請け負ってたそうだ。


ディルさんは主にマリア姫の護衛を行なっているようだが

マリア姫が取引や交渉などで国から出る際にはマリア姫の意向により

国王や后の身の安全と心身のケアとモンスター討伐を請け負ってたらしい。


国王はかなりご高齢。后も50代と中々な年齢と言える。

更にだ、マリア姫の護衛に兵士達が何人も付いている。

あまり兵士が居ないこの国、リーバス国からしてみれば

マリア姫の護衛に多数の兵士を割くとなると

確実に国に残っている国王と后の護衛が甘くなってしまう。


そのタイミングにモンスターとやらの襲撃が来れば被害が甚大。

その可能性を懸念していたマリア姫はディルさんを2人の護衛に回していたそう。

今まではそれで何とかなっていたらしいが、今回の件でそれは危ないと分かった。


だから、ディルさん、国王、后は何とかマリア姫専属の護衛が欲しかったそうだ。

彼女はご高齢となりあまり動くことが出来ない父親の代わりに

各国を渡り歩き、同盟などを結ぼうとしている。

他にも貿易に関する協力体制だとか、そう言うのを結束しようとしているそう。


「うー…」


だが、そこには問題があるそうだ。

今、マリア姫はテーブルの書類と睨めっこをして居る。

その書類に書いてあるのは、前回の遠征で赴いた国で渡された書類。


その書面を簡単に解釈すると

リーバス国には名産が無いから協力しても俺達には意味が無いと言う内容。

お互いに安い値段で取引をしたところで、こっちに良いのが無いのであれば

向こう側にはそんな取引で発生するメリットなど存在しないからな。


「リーバス国の名産品って何よぉ…」


名産品を何とか探そうとしているが、マリア姫はそれが見付からないと。

正直、この国にと言うか、この世界についてあまり詳しいことは分からないから

どんな品にどんな価値があるのか、なんて俺達には分からない。

だから、この件ではあまり協力できないのが現状だ。


「うぅ、国土は狭いし…海が無いから海産物は無いし…

 山の幸って言っても沢山の数は取れないし…

 待って、落ち着くのよマリア。冷静になって分析しないと。


 私達、リーバス国が誇れる物は…そう、国民達が素晴らしい事…

 だけど…うぅ、それは確かに誇らしいことだけどお金には出来ないし…

 何か加工技術とか…そう言うの私達に無いかしら…

 

 一応、狩りをするときの武具生産には自信はあるけど

 うぅ…でも、それを証明するにはモンスターを倒さないと…

 大体モンスターの素材から作るし、でもそれは危険というか…」


マリア姫がずっと頭を抱えながら唸っている。

その光景を何もすることが出来ず眺めることしか出来ない。

こう言う場面ではやはり何かを発掘するのが無難か?

近くに馬鹿でかい山があるんだし、何か鉱脈とかありそうだ。


「うぅ、何か名産を作らないと…このままじゃ」


取引をするとなると、やっぱりお互いにメリットが無いと駄目だからな。

一方的な取引って、取引と言えるのかよく分からないし。

あまりそう言う勉強はして居なかったけどそれ位は分かる。


「ご主人、僕達に協力できる事ってあるかな?」

「協力したいが…」


浅はかな知識で助言をするのは駄目だと言う風に俺は思う。

そんな中途半端ではきっと何も出来ないし、何の意味も無い。

むしろ変に混乱させてしまう可能性まである。


「俺達に出来る事は、今の所マリア姫を護ることだけだ」

「そんなぁ…うぅ、何だか不甲斐ないよぉ…」


ポロがこう言う場面で悔しそうな表情を見せるとは思わなかった。

ただいつも能天気なだけだと思っていたが、そんな事は無かったんだな。

何かあれば辛いと感じるし、助けたいと思っていたのか。

普段の態度からは正直、そんな部分は殆ど見えなかったんだけどな。


「しかしポロ、俺はお前の事、ただの能天気な奴としか思って無かったが

 こう言う場面で辛いとか、不甲斐ないとかそんな風に考える事があるんだな」

「あるに決ってるよ…だって、僕はご主人のペットだよ?

 そんなの、ご主人に似ていくのは当然だと思うよ」

「いや、俺はそこまで積極的では無いんだけど…」

「わはは、ご主人は何かあれば絶対動くじゃん。

 衝動的に動くのがご主人で、僕はそのご主人に似たの。

 何も出来ないと感じれば辛いし、どうすれば助けになるか考えるよ」


俺はそんなことは無いと思う。無関心な人間だ。

きっと俺は…いや、そんなマイナスな事ばかり考えるのは止めた方が良いのか?

ポロみたいにポジティブに何かを考えているのが1番楽かも知れない。


…それに、うん…確かにポロの言うとおり

俺は今、何も出来ない自分を少し情け無いと感じている。

知識は中途半端な部分しか無いからあまり知恵を貸すことは出来ない。

……はぁ、元に戻る方法を考えたり、どうすればこの国の名産を作れるか考えたり

考える事が多すぎて、そろそろ頭の処理がしんどくなってきたなぁ。


「マリア姫様」

「うー…あ、ディル? どうしたの?」


マリア姫が頭を抱えて机に頭を伏していると

ディルさんが部屋の扉をゆっくりと開けて入ってきた。

その表情は少し険しい物となっている。何か深刻な問題でも起きたのか?


「ウィップ山にて、モンスターの姿が確認されました」

「嘘!?」


ウィップ山というのは何処の山だろうか。

そこら辺の知識が無い俺達には分からない。

とは言え、マリア姫の驚き方から察するにかなり近い山なのだろう。

もしかしたら、リーバス国を包囲している山なのかも知れない。


「冗談じゃ無いわよ…あの山が制圧されたら国民が休まる日は無いわよ…

 それに、ただでさえ食糧問題に難があるって言うのに

 リーバス山が制圧でもされたら、より深刻な問題になってしまうわ…


 現状、金銭的な面から他国からの輸入だけでは国が破綻してしまうし…

 何が何でも取り返して! どんなモンスターか知らないけど!」

「報告によればブラッドニードルです」

「な…超危険な奴じゃ無い!」


ブラッドニードル…血の針って意味だけど、どんな奴なんだ?

名前からはどんな化け物かってのがまるで想像出来ない。


「はい、兵士達を向わせるという選択は確実に愚策となります。

 奴は複数体の相手に非常に強い。高い攻撃力と防御力…

 全身を覆っている針のせいで接近攻撃も困難ですからね」


この説明を聞いて、俺がイメージしたのはハリネズミだった。

で、多分クソデカいハリネズミ…針に血でも付いているのだろうか?


「うぅ! ただでさえ頭が痛いのに…そんなのまで出てくるなんて…

 接近戦は出来ないし、遠距離攻撃も大した効果は見込めない。

 全身を針で覆ってるし、その針には猛毒まである。


 擦るだけで危険な上に針を飛ばしてくる面倒な相手…

 ほぼ詰みよ…接近攻撃も不可。

 遠距離攻撃も露出してる腹部以外は効果は薄い

 こいつの討伐をするには…何人かに死ねと命令するしか無い…」

「どうして?」


マリア姫の独り言にポロが反応した。

最後の死ねと命令するしか無いという部分だろう。

だが、ポロの表情はそこまで悲痛な表情というわけでは無かった。

ただ疑問に思ったから聞いたというだけだろう。


「攻撃を通すにも、まずはブラッドニードルを転かせる必要があるからよ…

 転かせるにはまず接近戦を仕掛けて行く必要があるの…

 ブラッドニードルが持つ猛毒の針を受けないと転かすのは困難…

 だから、何人かの人間に…死ねと命令するしか無い」


他に何か方法があればその命令も必要無いんだろうけどな。

例えば爆弾とか、そう言うのがあれば爆風で転がすか

あるいはその爆発で仕留める事も可能だろう。


だが恐らく、この世界にそんな技術は無いのだろう。

しかし、魔法とかはあるんじゃ無いかな? そんな物信じられないけど

信じられない事が起きているのがこの世界なのだから。


俺は唐突に飛ばされたあげく、ポロが人の姿になって

更にゴブリンとか言う小さなモンスターの姿まで見たし

そのゴブリンが触れる事無く吹き飛んだ状況も見た。


今、この状況であれば魔法という存在があったとしても自然だ。

今まであり得ないと思っていた事があり得ている。それがこの世界。

魔法という物があれば、そのブラッドニードルも倒せるはずだ。


「ふーん…でも、死ねって命令することは無いんじゃ無いかな?」

「えぇ、出来れば命令したくないけど…放置して居れば被害が拡大する。

 少数の犠牲で……の、後の犠牲を抑えられるなら…

 でも、死ねなんて命令…私には出来ないわ…」

「だから、しなくて良いんだよ! だって、今はご主人が居るからね!」

「は? 俺!?」


ポロが滅茶苦茶良い笑顔で俺の方を向いた。

こ、こいつ…意外と鬼畜なのかな? なんてちょっと懸念を抱いたが

まぁ、ポロはそんな性格では無いだろう。そんな鬼畜では無い。

まだ人の姿になったこいつとは長くないが、それは分かった。


「どう言うこと? スルガが居て、どうして死ねと命令しないで良いの?」

「わはは! 忘れっぽいんだね! でも、分かるかも知れないね!

 あの状況は焦ってたもん。忘れちゃっててもおかしくないよ!

 ご主人もマリアも! 思い出してよほらほら! ご主人の攻撃!」

「俺の攻撃か…」

「た、確かスルガは…あの時」


そう、俺は接近すること無くゴブリンを粉砕している。

攻撃すると思った相手を手を触れること無く攻撃している。

魔法という可能性を考える際に、俺はその時のことを思い出していた。


だが、自分自身が戦うという状況をいまいち想定していなかったから

このブラッドニードルを撃破する際にこの手法が使えると言う事を

考えつくことが無かった…そうだな、確かに俺なら攻撃出来る。

手を触れること無く。容赦なく相手を粉砕する事が。


「ご主人は手も触れないで緑の奴を倒してる。

 だったら、ご主人は触れる事無くそのブラッドニードルも倒せるはずだよ!」

「確かにそうね、忘れてたわ、スルガ……お願い…出来る?」

「……答えは決ってる。出来る事ならやるさ」

「ありがとう! スルガ!」


中々に危険らしいけど、何人か死なせるよりはマシだろう。

出来る事はやる。俺が出来る事ならやる。

衝動的に動くべきでは無いが、動かないと駄目だ。


俺が倒せるというなら、俺が動いて倒すべきだ!

犠牲者が出る前に…少しでもマリアの負担を減らすためにもな。

…これはきっと正しい事…そうだろう……大丈夫だ、自信を持て。


俺は正しいと思ってきた事をやって成功した経験はほぼ無い。

だが、マリアを救ったときはきっと成功しているはずだ。

だったら、今回だってきっと成功する…させてみせる!

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