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町の観光

うぅ、お金を手に入れる方法が分からない。

働くというのが無難な選択だが、すぐに金は手に入らない。

1番早急に金が手には入る方法としては何かを売るという行動だが

そもそも俺達は何か売るような物は持ってはいない。


「……はぁ」


持っているのはこのお札だけ。

財布からちょろっと出した千円札を眺めてみる。

しかし、この千円札はここでは意味ないんだよな。


「うぅ、腹減った」


畜生、そう言えば昨日こっちに飛ばされて何も食ってない。

あぁ、昨日のうちにマリア姫からごちそうとかして貰えば良かった。

ヤバいな…このままだと割とマジにヤバい。

餓死してしまう…なんて言ってみたが、餓死は無いか。

人は何も食わなくても1週間は生きていけると聞いた気がする。


今日の内に報奨金とやらが貰えるのだから、そこは大丈夫だろう。

しかしそう言えばこの国、あまり見張りの兵士とか見ないな。

こう言う西洋風の場所であれば、城壁とかありそうだけど無いし。


「うーん?」


城壁は無いし、家とかは結構木製の民家が多い気がするな。

そう言えば、宿もどっちかと言えば和風テイストだった気がする。

寝床はベットだったけど、他は木造だったしな。


あまり気には留めてなかったけど、1度気になるとドンドン気になる。

城は西洋のお城という感じだな。桃缶王女が住んでるような城を小さくした感じ。

…あぁ、そう言えば桃缶王女の城にも城壁とか無かったっけ…無いのが普通なのか?


「城下町には見えないな」


城が近くにあるというのに、全くそんな風には見えない。

意外と貧困そうな場所ではあるが、そこまで貧乏という様子はない。

住民達は全員楽しそうだし、貧困という風には見えないんだよな。

だが、裕福なようにも見えないがな。

裕福と貧困、どっちが近いかと問われれば貧困の方が近いと答えるかな。


「皆、凄く楽しそうだね!」

「そうだな、少なくとも辛そうな表情の奴は居ない」


あくまでこの一部に限って言えばの話なんだけどな。

今まで姿を見ていた人達は全員幸せそうだった。

決して裕福とは言えないが、心は貧しくないという感じだな。

幸せって奴は、身なりとは比例しないようだ。


貧乏でも幸せな奴は幸せだし、金持ちでも不幸な奴は不幸か。

所詮本人の感じ方次第なんだろうから、俺がどうこうは言えないが。


「そう言えば、ここは何が名産なんだろうか」


パッと見た感じ、この国だけで食料が回っているようには思えない。

あまり畑とかは無いし、そもそもあまり何かを作れる場所でも無い。

近くには大きな山があって、あまり広い範囲を耕せるようには思えない。


どうやってこの国は経済を回しているんだろうか?

…はぁ、変な事を考えてしまっているな、俺が考えてどうするよ。

マリア姫と知り合ったから、少しだけ政治に意識が向いてしまったのか?

俺が考えても意味は無いのに…我ながら、馬鹿な事を考えてると思うよ。


「…うーん」


でも、何だか気になるな…ひとまず城の方に行ってみよう。

もしかしたら褒賞が早めに貰えるかも知れないしな。

ま、それより気になるのが兵士とかなんだけど。

何せ、兵士達はゴブリンに負けていたほどだし…


「おぉ! お城に再び!」

「うん、そうだな」

「あ、ようこそいらっしゃいました、スルガ様」

「あ、どうも…」

「褒賞の件ですよね? そろそろ用意が出来ている頃です」

「そうなんですか、ありがとうございます! お金が無くて困ってて」

「お金が無いと? 今までどうやって過ごしてたんですか?」

「えっと」


この場合はどう答えるべきか…放浪の旅をしていたと言うべきなのだろうか。

流石に気が付いたらここに居ましたと言って信じて貰えるとは思えない。

下手に疑われたら、ちょっと今後の生活に影響がありそうだ。

元に戻る方法も分かってないし…今後生活が難しくなるのは辛い。


「今までは放浪の旅をしてたんですよ。

 その、こいつの仲間を探そうとしてて」

「ん? 僕…」


ポロに対し、少し目で合図を送ってみた。合わせろと。


「そ、そうなの! 僕の仲間を探してたの!」


よし! 良く理解してくれたなポロ! ふぅ、合わせてくれて安心した。


「そうなんですか。確かに彼女はパペットビーストとは違う

 変った種族みたいですし、仲間を探しているのも自然ですね」

「そうなんですよ、こいつ本当変ってるから」

「僕は普通にしてるだけなんだけどなぁ…」

「で、路頭に迷ってたら大きな音が聞えたんで、見てみたらマリア姫が襲われてて」

「あぁ、確かにここら辺には他に国はあまりありませんからね。

 でも、偶然に感謝しなくてはなりませんね。

 もしあなた方が近くに居なかったら、マリア姫がどうなっていたことか…」

「はい質問! 何でマリアの近くに居た兵士さんは負けてたの?」

「な! こらポロ!」

「その……実は、私達は満足な戦闘訓練を行えていないんですよ」


あ、あっさり話してくれたな……ちょっと予想外だった。


「何故?」

「えっと…実は高い戦闘能力を持つ者がおらず…ディル様がたまに教えてはくれるのですが

 ディル様も多忙の身…付きっ切りで指導するのが困難なのです。

 訓練設備もあまりありませんし…努力はしているのですが」


やっぱりあまり裕福な国では無いのだろうか。

彼の言う事が正しいのであれば、ここは結構他の国から離れてるみたいだし

そう言った指導を行なってくれる教官を雇えず能力が上がって感じなのかな?

訓練施設も同じ事が言えるのかもしれない。


「時間が取れれば指導は行なうつもりだけど

 こっちも人手不足だから申し訳ないわね」

「あ、ディル様!」


俺と番兵が会話をしていると、不意にディルさんが姿を見せた。

全く気が付かなかった。確かに彼女は突出して能力が高いらしい。


「対応、ありがとうね。今度からは私が対応するわ。

 スルガ様、ポロ様。こちらに、褒賞の用意が出来ました」

「すみません、ありがとうござ…あ、ありがとう」

「いえ、ではこちらに」


ディルさんに案内され、俺達は城の中へと入る。

流石は城、かなり広々とした通路だな。

カーペットも赤いし、周囲には綺麗な花が飾ってある。

まさしくお城って感じだ…こう言う豪邸というのは


今までアニメや漫画でしか見たことが無いが

実際見てみると、何だか圧倒されてしまう。

まるで自分が小さくなったかのような感覚を覚えるよ。


「では、こちらへ」

「は、はい!」


緊張するまま馬鹿でかい扉が開く。

すると、目の前に巨大なイスに座り王冠を被っているおじいさんが居た。

そう、まさしくおじいさん…ふさふさ生えてる髭が凄いがシワだらけ。

年齢で言えばもう80代ほどだと感じる程だ。


とは言え、その身なりから王様であると言う事は特定できた。

その王様の隣には比較的若そうな雰囲気の女性が座っている。

そうだな、見た目からして50代前半ほどだろう。


マリア姫は中学生くらいだったが、その父親である王は80代。

そして、その后と思われる人物は50代。

中々に凄い歳の差と言う感じだが、これが王族なのか?


しかしだ、こう言う場面であれば王族の人間が揃ってそうだが

その2人以外に居るのは、マリア姫だけだった。

この事から恐らく国王は今まで子宝に恵まれなかったのだろう。


そんななか、ようやく生まれてきてくれたのがマリア姫。

となると、次期国王はほぼマリア姫で確定してると言えるのか。


「あなた達が我が娘、マリアを救ってくれたという人物ですな。

 本当にありがとう…このご恩は一生忘れぬ!」

「あ、え!?」


俺達の姿を見た国王がすぐに玉座から立ち上がり駆け寄ってきた。

そして、唐突に俺とポロの両手を力強く握ってきた。

その瞳には僅かながら涙が見えている。

こ、これが国王!? そんないきなり玉座から降りてきて

あげく俺達みたいな何処の馬の骨か知らない奴の前に跪いて握手…!?


「ありがとう…マリアの命を救ってくださり、本当にありがとう…」

「い、いえ! お、俺達は当然のことをしたまでです!

 な、なので顔を上げてください! 俺達みたいな下々の人間にそんな!」

「ありがとう…ありがとう…」


だ、駄目だ…顔を上げてくれそうに無い!

異常なまでに感謝してる…イメージとは全然違う!

これじゃあ、まるで国王を相手にしているのでは無く

ただのマリアのご両親と対面しているような感じだ…


これじゃあ、まるでただの民間人だ!

大事な娘を助けて貰って、本気で感謝してるただの民間人だ…


「本当にありがとうございます。これはほんの気持ちです。

 あまり多額のお金ではありませんが、どうぞ」

「あ、ありがとうございます…」


渡されたのはケースが3つだった。


「三千万ペルーです。本当はもっと差し上げたいのですが

 国民達から預かっている大事なお金です。

 私用で多額を与えるというわけには行きませんので…」


どれだけの価値があるのか俺には分からないが…いや、分かるか。

散歩で回ってた商店の値段を思い出せば…

確かりんごが100ペルーだったから…恐らく日本円と大差ない。

つまり三千万の大金をさらっと渡されたと言うことか!


「そそ、そんな大金!」

「受け取ってください! 心からの礼と共に!」


ちょっと気が引けるけど…俺達もお金が必要なのは間違いない。

それに、ここで受け取らないというのも国王に失礼なのも間違いない。

くれるというなら受け取るのが正しい選択…なのだろう。


「……分かりました、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「いえ、お礼を言うのはこっちですよ」

「いえ、お礼を言わせてくだされ。私が言いたいのです」


そう言い、国王は再び深々とお礼をした。

娘が凄く大事だというのがこの行動でよく分かった気がした。

その後、俺達は国王に見送られ、部屋から出る。

な、何だか国王と対面したという雰囲気は無かったな。


「どうです? 優しいお父様だったでしょ?」

「うん、凄く優しい人だった!」

「娘思いの良い人だった…国王様とは思えない程に」

「凄く人間臭い人ですよね、だから私は国王様達に付いていくと決めているのです」

「何となく分かる気がする…」

「…では、どうです? 私達と一緒に国王様の元で働いてみるのは」

「え!?」


不意に言われた事に対し、俺は結構オーバーな反応を取ってしまった。

あまりにも不意打ちだったから…ちょっと動揺した。


「今、定住する場所が無いのであれば、ここで共に働いてはどうでしょう。

 勿論、ポロさんの仲間捜しという目的があるのは知っていますが

 国王様の元で働いていれば、色々な国を巡れるはず。

 その何処かでポロさんの仲間も見付かるかも知れない。


 私達は今、非常に戦力が足りていないのであなた達が協力してくれるというのは

 実にありがたいのです…なので、協力していただきたい」


ディルさんが深々と頭を下げ、俺達にお願いをしている。

どうするか少し悩みながら、チラッとポロの方を見てみた。

ポロは俺の言う方に従うよと、表情だけで語っているように見えた。

……なら、全ては俺の選択次第なのだろう。だったらどっちを選ぶか。

何、案外簡単な選択だ。元よりこの申し出は俺達に取ってはありがたいのだから。


「…分かりました、協力させていただきます」

「本当ですか!?」

「はい、これも何かの縁です。協力させてください」

「ありがとうございます!」


元の世界に帰る方法を模索するためにも

国の組織に所属するというのは最善の手だろうからな。

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