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騎士団長の技術

ディルさんの父親、ライゼル騎士団長。

彼の実力はとてつもなく秀でていた。

身体的な能力が秀でているパペットビーストであるアイ。

彼女との戦闘に置いて、彼は一切押される事は無かった。

力押しでも彼の方が秀でていた…そんな風にさえ思えた。


だが、身体的に非常に高い能力を持つアイと

ただの人間である筈のライゼル騎士団長が

単純な力と力の押し合いで勝てるとは思えない。


何か別の要素があるのかも知れない。単純な力だけでは無い

力の強い相手と戦う時の技術が何処かにあるのかも知れない。


「あの、ライゼルさん」

「何かな?」

「もし、よろしければ何ですけど、ライゼルさんの技術を少しでも良いので

 教えてくれませんか? じ、時間があればで良いんですけど」

「私の技術をか。だが、君には強力な魔法がある。

 私の技術などを学ばなくとも、その魔法を用いれば十二分に戦えるのではないかな?」

「確かに自分には魔法があります。でも、この魔法はあまりにも強力すぎる。

 それに、魔法を扱えない状況も起こりえるかもしれない。

 何かあったときに対処するためにも近接戦闘の技術は必要です。

 何かあったときに、主であるマリア様を守り通すためにも」


マリアを守る為にも、戦いの技術という物は欲しい。

パペットビーストであるアイの技術は人間である俺には扱えないだろうしな。

でも、同じ人間であるライゼルさんの技術なら可能性は僅かだけどある。


ライゼルさんの技術はアイを圧倒する程に高い技術を持っている。

俺なんかが簡単に模倣できるような技術では無いだろうが

知らないより知ってる方が何かあった時に対処が可能だろう。


「…そうか、良いだろう。同じく主を持つ身だからな。

 主を守る為に力を望む。それは尊敬すべき心得だ。

 慢心せず、自らの基礎を鍛えようとする考えは素晴らしいからな」


ライゼルさんは俺の言葉を聞いた後、刃を削っている剣を俺に渡した。

かなり精巧な出来だ。ぱっとみであれば真剣だと勘違いしてしまいそうだ。

だが、剣に触れたり、近くで見れば刃がない事は分かる。


「では、私の技術を時間が許す限り教えるとしよう」

「ありがとうございます!」


それから、しばらくの間、ライゼルさんの技術を身をもって教えて貰った。

攻撃の瞬間、こちらの力が最も強くなる前にライゼルさんは俺の剣を弾いたり

こちらが攻撃を防ごうとする瞬間に剣を寸前で止め、他方向からの攻撃。


このフェイクが来ると想定していてもその想定は何度も外される。

剣の攻撃事態も鋭いというのに、この多才なフェイント技術。

確かにこれなら力で劣ってるアイに勝てるのも分かる。

こんなの、真っ向から戦っても勝てない。


「はぁ、はぁ…」

「ふふ、その太刀筋…少し懐かしい気がする。

 幼き日のディルの太刀筋…どうやら、国でも鍛えて貰ってるようだな」

「はい、ディルさんに鍛えて貰ってました」

「大きな力を持つ場合、鍛錬を怠る物は多いが君は違うようだな。

 私の知り合いには強大な力を持ちながら鍛錬を怠った結果命を落とした者もいた。

 油断しないことは重要だ。その心を忘れるなよ」

「はい、一撃一撃が強力すぎる魔法なんで、頼りっきりは無理ですからね。

 必死に鍛えて貰って、魔法に頼らないように努力します」

「よし、ならばまだ行くぞ!」

「はい!」


それからしばらくの間、俺はライゼルさんの剣を受けながら

その技術を奪えるように努力した。

とは言え、これ程にまで繊細な技術を瞬時にマスターまでは至らなかった。

だが、ほんの少しだけ、何となくだけ感覚は分かった。


「今!」


ライゼルさんに攻撃を防がれる瞬間に動きを止める。


「ふ、少しだけ速いな」

「っ、い!」


やっぱりライゼルさん見たいに完璧にはこなせないか。

どうやら止めるのが早かったせいで

動きを読まれ、瞬時に反撃を受けてしまった。


「くぅ…ま、まだ…」

「いや、ここまでにしよう」

「もう…時間ですか…」

「それもあるが、その足では満足には動けないだろう?」


自分ではあまり自覚できていなかった…ライゼルさんに言われて

足に意識が向いたときにようやく、自分の足が震えているのが分かった。


「自分の限界を越えて鍛えるのも良いが、無理をするのはよくないからな。

 それに、君は既に私の技術を多少なり理解できているようだ。

 多少でも理解できているのであれば、後は自分でも鍛えられるだろうからな。

 鍛錬は日々の積み重ねだ。一朝一夕で極めようと思うな。

 たった1日では価値は無いからな」

「…はい、ありがとうございます。ライゼルさん。機会があれば、また」

「あぁ、その時が来たら、君が更に強くなっていることだろう。

 超されないために、私も慢心せずに鍛錬を続けなければな」


ライゼルさんはこちらに向かってほほえみかけた後

大きなお辞儀をした後、訓練場から立ち去った。


「…やっぱり騎士団長は凄い。身に染みて分かっただろう?」

「あぁ…もっと鍛えないとな」

「おぉ…あれがディルのお父さんか-、僕も戦ってみたかったなー」

「馬鹿言うななの、お前が戦っても手も足も出ないの」

「分かってるよ、だから戦ってみたかったんだよ。

 負けても死なない場面で自分より強い相手と戦うって大事だと思うし-」

「馬鹿言うななの、お前はどんな場面で負けようとも死なないの」

「なーんで?」

「……お前みたいな馬鹿がそう易々死ぬわけ無いの」

「わはは! 僕も死ぬときは死んじゃうってー!」

「もう! 死ぬとか死なないとか物騒な話しないで!

 はぁ…でも、私にはよく分からなかったけど

 スルガが手も足も出せないほどだしやっぱり相当強いのね。

 流石はディルのお父さん…」

「ご主人がなんで苦戦してたのか分からなかったの?」

「えぇ、全く」

「逆にお前は分かってるの? あたちはさっぱりだったの」

「分かるよ。ディルのお父さんはご主人への攻撃の瞬間

 ご主人が攻撃を防ごうとしたときに寸前で止めてたんだー

 攻撃を防ぐときも力が1番入るタイミングを躱されてたんだよ。

 つまり、力じゃ無くて技術でご主人を追い込んでた」


ポロは何があったのか見ているだけで分かっていたのか。

あれは実際戦ってみたいと分からない程に細かい技術だった。

それを見ているだけで勘付いていたのか…ポロって実は切れ者?


「逆に相手のフェイントを潰すのも凄かったよね。

 多分表情かな…そこから読み解いて相手の次の行動を読んでた。

 後は服のシワだね。力を入れてるときと入れてない時って

 若干シワの付き方違うし、そこで読んでたって感じかな-」

「そ、そこまで分かったのかお前!?」

「分かったって言うか、僕が相手の行動を読もうとした場合

 どんな風に読むかって考えたらそこしかなかったんだよ」

「やはりお前には光る物があるな。よし、明日私が鍛えよう」

「あ、そうだ! 本来ここに来た理由忘れてた!」


あ、確かに忘れてた…俺達、ここに別れの挨拶をしに来たんだった。


「アイ! 僕達もうお国に帰るんだ! 色々と教えてくれてありがとうね!」

「そうだったのか……それは静かになりそうだな」

「まぁ、馬鹿犬はいっつも騒がしいの。確かにこいつが居なくなれば

 静かになるのは当然なの」

「ふっふーん!」


これ、確実にミミはポロを貶しているつもりなんだろうが

ポロはかなり得意気にしてる…流石はポロ。何処までも前向きだな。


「ふ、お前達のやり取りは何とも面白いな。仲が良いのが分かるよ」

「仲なんて良くないの! こんな馬鹿と仲良しなんて虫唾が走るの!」

「えぇー!? 酷いよミミちゃーん!」

「にゃー! 抱きつくななのー!」

「嫌なら僕が抱きつく前にテレポートで逃げれば良かったのにー」

「うっさい! あれは発動まで時間が掛るの! てか放すの!」

「はーい」


やっぱり楽しそうだよな、この2人。絶対に仲良い。


「…これで仲が良くないと言われても説得力は無いな」

「俺もそう思うよ。ま、ミミの照れ隠しだし」

「うっさいの!」

「よーし! じゃあ、アイ! イナ! セン! また今度ー!」

「あぁ、次に来たときはもう少し強くなっていてくれよ」

「…次会えるとき、楽しみにしてる」

「次はガッカリさせないでね…」

「勿論だよ! 次に来たときは凄く強くなってるからね!

 3人まとめて倒せちゃうくらい!」

「ふ、期待してる」

「じゃあ、またね!」


3人に向けて満面の笑みを浮かべて跳ねながら元気よく両手を振った。

やっぱりポロは行動がオーバーだな。見てるこっちまで楽しくなる。

俺達もポロほどに元気よく挨拶は出来なかったが、小さくお礼を行った後

帰るための最終準備をした後、床についた。

今日はかなり身体を動かしたし、グッスリ眠れそうだ。

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