パペットビースト部隊
やっぱり思うけど、俺の魔法は規模が絶大すぎるな。
イメージしたとおりに対象を破壊というか、攻撃出来る能力。
今回は会場を爪で削るように攻撃する方法を選んだ。
この攻撃でつぶても出たが、威力はそこまで高くは無い。
致命傷には至らない攻撃。致命傷所か重傷にもならないだろう。
まぁ、この攻撃はあまりにも派手すぎたのだろう。
その後、俺達と戦う事になった兵士達の腰が退けていた。
だがそれでも戦いを挑む所はまさしく兵士という感じだった。
とは言え、ポロとミミの2人だけで大体は圧倒できたが。
あの2人の攻撃力や汎用性の高さはかなり高い。
それを言ったら、俺の魔法も相当やばいんだけどな。
「決勝戦進出はマリア姫護衛部隊!」
「うーん、最初以外は楽勝だね!」
「当然なの、あたち達が本気を出していれば最初も楽勝だったの」
だがまぁ、今回の武闘大会は俺にとっては実りが多い物だったな。
自分自身の実力の底が知れたし…まだ鍛えないと駄目か。
なんて、余裕ぶっこいていられるとも思えないが。
「準決勝第2試合を始めます! パペットビースト部隊!」
「今度こそ認めさせてみせる…私達の存在を」
「しかし、パペットビーストだけの部隊なんて存在したんだな」
「パペットビーストは都合の良い人形だからね。
本来なら意思は持ってない…ミミとポロがパペットビーストだとすれば
あの2人は相当なレアケース。あの部隊を率いてる主、アイと同じほどにね」
「アイ…」
「あたちと同じっぽい見た目なの。まぁ、あたちより断然ムキムキだけど」
「あんなに筋肉って付くんだね。女の子じゃないの?」
「シックスパックで結構筋肉質だがボディービルダーとかよりは細いのな」
とは言え、今までの戦いを見てみた感じ見た目より遙かに怪力だが。
で、率いているのが普通のパペットビースト達。
だが確かに目に生気は無い…言葉も今まであのアイ以外は喋ってなかった。
ただアイの指示に従って敵と戦ってた感じだ。
実に統率が取れてたよ…完全に手足のように扱っていた。
一声掛ければすぐに行動。求められたことは完璧にこなす。
意思があるとは思えないくらいに、まさしく機械的にこなし続けていた。
間合いの取り方も完璧。完全に寸分違わずアイの指示通りに動く。
……パペット…操り人形と言われているのも納得出来た。
「イナ! セン! 間隔を3メートル!」
「了解です」
一瞬で指示通り3メートルの間隔を開けたな。
正確な距離は分からないけど、多分寸分違わないのだろう。
あの2人の行動に一切の躊躇いなんて感じなかったしな。
「間隔3メートルを維持したまま接近し攻撃開始!」
「はい」
こんな風に指示が大きく聞えてしまうと言うのは弱点。
とは言え、これを弱点とは言えないという感じだな。
何せ、あいつの指示とは違う行動をちょくちょくして居るからな。
接近しろと言ったのに後方に下がってきたりすることもある。
とは言え、あのパペットビーストの姿や動きを見た感じ
指示に反して行動していたというわけではないようだ。
つまり何かある…何か口頭とは違う手段で指示を出している。
「左右の間隔を広く開けろ!」
「挟む気か!」
対抗している兵士達が左右に構える。
だが、2人のパペットビーストは広がらずむしろ間隔を狭めた。
「な!」
「そのまま突破! 後方を撃破!」
「クソ! どうなってる!」
兵士達も馬鹿ではない、不意に間隔を狭めて来たが
すぐに対処しようと行動を起した。
だが、相手はパペットビースト。身体能力が人のそれではない。
一瞬の判断の遅れはただの人間と戦ってる時よりも甚大だ。
だが、準決勝まで上がってきた兵士達。結構対処が出来てる。
パペットビーストは指示された事しか出来ない。
この奇襲に対応されたが、目の前の兵士より後方の兵士を狙っていた。
「近い相手から排除だ!」
「はい」
「く! やはり一撃が…重すぎるか!」
やはりパペットビーストの攻撃は強烈か。
攻撃を受けた兵士の表情が変った。
盾でしっかり防いでるはずなのにな。
「だが、やれるか?」
「任せてくれ、狙いは定まった!」
前線2人の兵士達がパペットビースト達を足止めしている隙に
後衛の兵士1人の準備が完了したようだ。
彼は魔法使い。動きからして指先に力を集中させてる。
「喰らえ! レッドレーザー!」
指先から細い1本の線をアイに向けてはなった。
前、ミミが使っていたビームと同じ系統の魔法か?
だが、ビームよりは格好が良さそうな魔法かな。
赤い1本のレーザーを射出しての攻撃だし。
「なん!」
本当に一瞬だった筈だ、赤い線が一筋通った。
ほんの一瞬…俺なら反応は出来ないだろう。
だが、アイはレッドレーザーに反応して避けた。
流石に完璧に避ける事は出来なかったみたいで
僅かに頬を擦らせていたが…それでもあの反応速度はヤバいな。
指示を出しているだけでなく
見た目通り反応速度も身体能力もかなり突出しているな。
正面から戦うとなったら、勝ち目は薄いな。
「わぉ、流石だね。良く反応出来たねあれ」
「これ、あたち達の次の相手になるの?
うーん…本気を出さないと結構不味そうなの」
この流れ、もうすでに勝負は決していると感じる。
切り札は避けられているのがこの状況だからな。
「く…」
「最後の切り札はこれだけか? なら、無意味だ!」
「奴が動いた! 警戒しろ!」
アイが直接攻撃に参加を開始した。
一気に接近し、前衛はパペットビーストが抑えている。
残りは後衛…正直言って、勝算は皆無。
「終りだ!」
「切り札を使うときは、失敗したときの対策を考えるのが基本だ!」
「な!」
アイの足下に唐突に魔法陣が現われ、アイを拘束する。
その瞬間に後衛の兵士は両手をアイに向けた。
「マジックバースト!」
「何!? うぐぅう!」
「おぉ!」
両手を出し、両手から一気に大きなエネルギーを放出した。
範囲は異様な程に大きく、一撃でアイを包み込んだ。
「まさかの逆転勝ちなの?」
「凄いねあの兵士さん。罠張ってたんだ!」
あの戦い方は確かに参考にしたい程に上手いな。
相手の行動を予測して罠を設置させて一気に強力な攻撃を叩き込む。
「よし!」
「…いや、お前の攻撃は届いてない」
「な、うぐ!」
だが、あのエネルギーが消えると同時に手が伸びてくる。
その手は魔法を扱ってた兵士へ攻撃を与えた。
「嘘!?」
「どうやって…」
「く…ば、馬鹿な…何故…」
最大のチャンスを逃してしまった兵士達。
その状態を打破することなど出来ず、そのまま敗北した。
「勝者、パペットビースト部隊!」
「……」
パペットビースト部隊はそのままリングから帰っていった。
「うーん、なんであの時、ダメージ無かったのかな?」
「そんなの知るわけ無いの…でも、可能性があるとすれば
あれなの! 筋肉パワーで魔法をかき消したに違いないの!」
「……ミミちゃん、大丈夫?」
「馬鹿犬! 何マジなトーンで心配してやがるの!
冗談に決ってるの! お前の思考回路に合わせてやろうとしただけなの!」
「え? じゃあ、何が理由だと思う?」
「それは……分からないの、でも何かあると思うの。
拘束されている状態、更にあの至近距離で受けても平気な理由…
いくら筋力が高くても破壊力が高い魔法を受けたらダメージは喰らうの。
それが、ほぼ無傷…と言うのは不思議なの」
「例えば、壁とかがあったらダメージ軽減できるかな?」
「そりゃあ、盾があれば流石に防げそうだが…魔法攻撃を防げるか?
完全にエネルギーを放出したって感じだし」
「うーん……考えるしか無いの」
あれと決勝戦で当るんだからな。油断したら負けるだろう。
相手の手品を見抜かないと、これは不味そうだ…考えるしか無い。