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観光タイム

マリアはしばらくの間、このグレーベルに滞在し

色々な手続きだとか取引をして行く予定らしい。

その間、俺達は中々に暇な時間が生まれる。

俺達はマリアの護衛だが、常時護衛が必要とは行かない。


ここはグレーベル。マリアは結構な頻度で俺達に休暇を与える。

その間、かなり暇だ…そりゃ確かにグレーベルは兵士も多いし

常時護衛が必要というわけではないだろうけどな。


マリアは良く折角の旅行なんだし、観光も良いと思うわと言う。

ならばと休みながら、俺達が元に戻る方法というのも探してみたりするが

それでも暇な物は暇だ。大体あの2人の影響で暇ではないんだけどな。


「ご主人! この鰹節をあたちに買うの!」

「駄目だ」

「何でなの!?」

「前買ったばかりだろうが」

「もう無くなったの!」

「もう少し節約して食べろ。頬ばろうとするなよな」

「ご主人! 僕にはこのお肉を買って!」

「お前も前に買っただろうが」

「僕食べたいよ!」

「晩飯で食えるだろうが、食い意地張るんじゃねぇよ」

「なら、この骨のガムを!」

「……分かったよ」


これは今まで買ったこと無いし、とりあえずポロに買ってあげた。

ポロは嬉しそうに骨のガムを手に取り口にくわえる。


「まじゅい!」

「じゃあ出せば?」

「ご、ご主人が買ってくれた物を出す物かぁ! 食べてやる!」

「ガムだから飲み込むなよ?」

「もぐぐー! もぐぐー!」

「…飲み込むなよ?」

「にゃはは! 馬鹿犬! 面白い面なの! 頬が出っ張ってるの!

 馬鹿なお前には相応しい姿なの! にゃはは!」

「も、もぐぐぐー!」

「にゃはは! ほれほれ!」

「む、むーむむ!」


ミミがポロの出っ張ってる頬をツンツンと弄り始めた。

ポロも少し反応はしているけど、嫌そうな表情はしていない。

……と言うか、頬が出っ張ってるこの状況の嫌そうな表情って何だよ。


「3回目だが…その…飲み込むなよ? ガムだからな?」

「もひほん!」

「本当に分かってるのか少し不安だがな…」

「え? 聞き取れたの?」

「まぁ、あれ位なら…」

「流石ご主人なの!」


こいつはあれを聞き取れなかったのか、そもそもポロの言葉に興味が無かったのか。

どちらにせよ、楽しそうな表情だよな、全く。


「おい街中でイチャイチャしてんじゃねーぞ」

「ん?」


ヤバい…派手に騒ぎすぎてしまった…変なのに目を付けられた。

これは中々に嫌なんだが…と言うか、面倒極まりないというか。


「ご主人、変なハゲが来たの」

「あぁ!?」

「おいミミ…気にしてるかもしれないだろ?

 それにただ剃ってるだけかもしれないから言うなよ」

「て、テメェら…ふざけんな!」


ヤバ! ミミが変な事言ったから完全に怒らせた!

こ、ここで騒ぎが流石に嫌なんだけど!?


「もう無理!」

「あだ!」


ぽ、ポロ…俺が折角買ってやったガムを吐き出しやがった。


「うぅ、苦すぎる…ごめんなさいご主人、ちょっと無理だったよ」

「い、いや、謝る相手が…」

「こ、このパペットビーストがよ! 汚い物ぶつけやがって!」

「あ、ごめん。でも大丈夫、ご主人に言われて歯は毎日磨いてるから!」

「そう言う問題じゃねぇんだよ! 小娘!」

「わっとと…もぅ、駄目だよ? 暴力は身の危険を感じたときくらいにしないと」

「ざけんな!」

「だから駄目だって、当ったら痛いよ? あ、骨のガムをぶつけちゃったのは謝るよ!」

「こ、この!」

「うーん、手を出しちゃったらそっちが悪者になっちゃうよ?」


いや、既に悪者に絡まれてるんだけど…なんて言える訳無いけど。


「クソが!」

「だから危ないって、物を壊しちゃったらどうするの?」


まぁ、当然と言えば当然なんだけど、ポロはあのスキンヘッドの攻撃を避ける。

1発も当らないし、表情も何一つ変えちゃいない。余裕の表情のままだ。

逆に攻撃してるはずのスキンヘッドの方が息が荒くなってきてる。


「この!」

「おっとと、これは避けたら駄目だよね」

「なぁ!」


流石に背後に小さな子が居る状態ではポロも避けず

スキンヘッドの攻撃を片手で止めて見せた。


「危ないからあっち行ってないと…」

「ご、ごめんなさい…」

「謝らなくて良いよ、悪いのは僕の方だからね。

 ごめんねー、すぐに止めて貰えるよう説得するから」

「馬鹿犬、表情何一つ変えてないの」

「クソ、お前ら!」

「ち…」


あ、新手が来た…3人で攻撃するのか。


「この小娘が!」

「おっとと」

「おら!」

「だからさー、喧嘩は止めようよ-」

「この!」

「当ったら痛いよ?」


しかし、3人がかりの連係攻撃も表情1つ避け続ける。

あいつ凄いな、全く反撃しないまま避け続けてるんだけど。

と言うか、あのヤンキー軍団も察しろよ…ポロには勝てないって。


「もう許さねぇ!」

「うえ! そ、それは当ったら痛いじゃ済まないよ!?」


流石に勝ち目がないと考えたのか、あいつらは小さなナイフを取り出した。

さ、流石にこれは痛いでは済まないし、それを出したら遊びじゃすまない…


「ポロ、もう良いから…早く意識奪えよ」

「舐めんなコラ!」

「ご主人!」

「それは不味いだろ」

「な!」


ナイフを持って向ってくるスキンヘッド。

でも、俺も一応は魔法を扱えるし体術も扱える。

まぁ、今回はあの危ない物を排除することにした。

意識したように攻撃が出来るのが俺の魔法。

俺はスキンヘッドのナイフを粉砕する。


「ば、馬鹿な…何しやがった…!」

「ちゃんと謝罪はするって、ポロがガムを当てたのは本当にすまなかった。

 だから、ここは引いてくれ。お互いに騒ぎにはしたくないはずだ」

「…へ、へへ、何を」

「…いや本当に早く帰った方が良いって…後ろ見てくれよ」

「あぁ?」


スキンヘッドは俺に言われたとおり、背後を見た。

そこにはまぁ、かなり切れてるポロが立ってる。


「……ご主人に酷い事をしようとしたね…それは流石に許されないよ…」

「は、はは! 何が許されないだ小娘!」

「ポロ! 意識を奪うだけだぞ!」

「分かってるよ…ご主人」


飛びかかってきた2人をポロは一瞬の間にノックアウトした。

瞬時に間合いを詰め、腹を一撃だった。

ちゃんと加減したらしく、その2人は生きていた。


「…う、嘘だろ…」

「最後はあなただよ…」

「ひ、ひぃ! ご、ごめんなさい!」

「あ! 忘れ物だよ!」

「え? うわぁ!」


逃げ出したスキンヘッドめがけてポロは足下で転がってた

2人のヤンキーを投げ飛ばした。


「うん! 一件落着!」

「目立ち過ぎなの。急いで退散するの!」


ポロが手を上げると、周囲の景色が変化する。

何処かな、多分国の外かな。

周囲は木で覆われてるし、中々に涼しい。

あ、いや違うな、ここは国の中にある小さな休憩所か。


「テレポートか」

「そうなの」

「ここ何処? 植林場か何か?」

「そんな所だと思うの。でも、国の中ではあるの」

「うーん! 風が気持ちいいね!」

「馬鹿犬はのんきなの」

「だな」


とりあえず俺達はこの場所で少しの間過ごした。

そして、その後、俺達は城の方まで戻って自室へ帰った。


「お帰りなさい」

「た、ただいまです…」


扉を開けると、最初に目に入ったのはニコニコと笑ってるマリアだった。

それだけなら別に良いのだが、彼女は仁王立ちで腕を組んでいた。

この状況だけで、既に何があったのか…分かってしまう。


「た、ただいまなの…」

「たっだいまー!」


ポロだけはいつも通りの雰囲気だ。

そこは流石としか言いようがない。


「さぁ、私がこうやって出迎えた理由は分かる?」

「さ、さぁ…さっぱり分からないの…」


ミミ、嘘をつくなら相手の目を見て堂々とつけよ。

冷や汗凄いし、視線逸らしてたらもろわかりだろ。


「そう。実は今日ね、城で仕事をしてたらとある報告が来てね。

 何でも、暴行事件があったそうじゃ無い。

 被疑者は3人とも意識を失って目を回していたとか。

 その3人、その付近で恫喝や恐喝、暴行とかさんざんやってた連中でね。

 兵士達も逃げ足も速いそいつらに手を焼いていたそうなの」

「へぇ、そんな人が捕まったんだ! 良かったね!」

「そうなのよ、で、目撃者の話に寄れば

 どうもその3人の意識を奪ったのは犬の耳が生えた少女だとか」

「おぉ! 僕の同族かな!」


じ、自覚無いのか…それともただ馬鹿なだけなのか。

どう考えてもお前の事だよとツッコみたい。


「3人相手に表情1つ変えず逃げた後、一撃で仕留めたとか」

「僕の同族はやっぱり怪力なんだね!」

「…で、残り1人はよく分からない力でナイフを砕かれたとか」

「……およ?」

「最終的にもう1人居た魔法使い風の少女が手を上げたら消えたとか」

「……あ」


ここに来てようやくポロはこれが自分達だと言う事を理解した様だった。


「瞬時にテレポートを使えるって、最上位の魔法使いである証拠なんですって」

「ふふん、当然なの」

「……ハッキリ言うわ、あんた達のせいで私の仕事凄い事になったわよ!」

「えぇ!? 何で!?」

「目立ちすぎでしょ! パペットビースト2人って! もうあなた達だけよ!

 兵士達もすぐにあなた達に的を絞ったわ! 最終的に魔法の話しだとか

 後、色々な申し込みが来ててんてこ舞いよ!」

「で、でも、め、目立てると言う事は素晴らしい事なの! 

 そ、それにあたち達は普通に休日過ごしてたら絡まれただけなの!」

「わざわざテレポートを使って逃げる事無いでしょ!? 目立ちすぎだって!

 それがなかったら、流石にここまでの騒ぎにはなってないから!」

「にゃ、にゃにぃ! あ、あたちの行動が原因なの!?」

「そりゃあ、目立つと言う事は良いことなんだけどね。

 でも、私しか居ないのよ!? 処理できる物ですか!

 こうなったら、明日からあなた達にも手伝って貰うわ!」

「そ、そんな! 僕は文字とかそう言うのは良く分からな!」

「なら仕分けを手伝って! ほら! 今日だけでもまだこれだけあるのよ!」


た、確かにマリアの机には随分と高く積まれた書類が…


「……にゃ、にゃはは…冗談…」

「じゃないわ」

「……ご、ご主人…あたち逃げるの!」

「あぁ! 逃がさないよ!」

「わぁ! 放すの馬鹿犬!」

「ミミちゃん僕より頭良いんだからやってよ! 僕書類を分けるからぁー!」

「ふざけるななの! あたちはこんなデスクワークなんて嫌なの!」

「元はと言えば、あなたがテレポートなんて使ったのが原因なのよ!

 さぁ! 大人しく手伝いなさい!」

「ひぃ! 嫌なのー!」

「き、きっと頑張ったらご主人が何かご褒美くれるよ!」

「む! にゃらばやるの!」

「切り替え早いな!」

「ご褒美はなでなでで良いの!」

「あー…そ、そうか、それ位で良いならやろう」

「よし! あたち頑張る!」

「僕も仕分け頑張るよ!」

「……懐いてるわね…まぁ良いわ、どんな理由であれ手と目が増えるのは大きいし

 さぁ! 仕上げるわよ! 徹夜よ徹夜!」

「任せるの! 猫は夜行性なの!」

「お前が夜活動してる姿…殆ど見ないんだけど…

 まぁ良い、夜行性だというなら期待しよう」


うぅ、まさか大量の書類整理を手伝わされることになろうとは。

忙しいのは良い事だが、忙しすぎるのは考え物だな…

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