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大きな勝負

ミミを筆頭にした錬金術の技術者達により

リーバス国の備蓄は蓄積されていった。

あいつの活躍は目を見張る物がある。


錬金術という点に置いて、彼女の右に出る物は居ない。

そんな風に錯覚してしまうほどにミミの腕は確実だった。


「よし…今日が勝負所ね」

「あぁ」


そして、今日はついに備蓄していた武器を宣伝する日だ。

リーバス国内で武器の切れ味等を調べた際に

リーバス国に今まで備蓄されていた武器よりも遙かに切れ味が増していた。


小国の武器と大国の武器とは大分違うだろうが

少なくともリーバス国内ではずば抜けて高性能な武器だ。

鍛冶屋の住民達も錬金術に習い、レイアストーンを利用した加工を研究。

その結果、鍛冶でもレイアストーンの効力は発揮されることが分かった。

主に1人の天才により発見された技術だった。


(レイアストーンはどうも武器に錬成しようとしたら耐えられないみたい。

 だから、武器に溶かし込むようにして、錬成したの。

 そしたら、属性付与が出来たわ。法則性はまだ不明だけどね)


リーバス国の為に武器を作ってくれている鍛冶屋の少女、ドリーム。

先祖代々リーバス国に仕えていた腕はピカイチだからな。

必ず何か動くだろうとは思っていたが

まさかこの短期間で新技術を編み出してくるとは思わなかった。


しかしまぁ、あのドリームの技術とかミミが居たとは言え

やはりレイアストーンという資源の重要性が分かった。


錬金術で使用した際と鍛冶で使用した際では性能も変わる。

錬金術で使用した場合は非常に鋭い切れ味を持つ剣が出来上がり

鍛冶で使用した場合は武器に魔力と属性を与える事が出来た。


使い方をしっかりと考えないと上手くは出来ないみたいだが

上手く使えばこれだけの利用方法があるのだから。


「属性が宿った武器と高い切れ味を持つ装備…2種類あるのにまず1種類ってのは

 少し効率が悪いような気はするけど」

「でも、同時に宣伝は少し不味いからな。ディルさんも言ってたし」

「えぇ、属性を付与した装備を作ったなんて、あまりに目立ちすぎるからね」


今まで無かった技術を開発したわけだからな。

何故そんな技術を唐突に見つけ出すことが出来たのかという疑問を抱かれる。

そうなると、どうしても目立ってしまう。


「下手に目立ってしまうと、視察の優先順位が格段に上がる。

 目立てば目立つほど、大国の動きが賑やかになってしまう。

 そうなれば、他国もその動向に注意を向け全国にレイアストーンを発見される」


まずはあの山がリーバス国の所有物だと言う事を全体に知らせる必要もある。

グレーベルとその連盟国が了承してくれれば防衛も堂々と出来るからな。


「全く面倒な国なの。なんで小国なの? 大きくなれば早いの」

「大きくなるためにこうやって慎重に行動してるんだよ」

「にゃんというか、神様ってのが居るとすれば随分な気まぐれなの。

 小国に重要資源を大量にプレゼントだなんて優しすぎて寒気がするの」


優しいと言えば優しいのかもしれないが、運用次第で国が滅ぶような資源だ。

ただ素直に優しい、とは言えそうにないよな。


「くわぁ…うぅ、退屈だよ…」

「へん、馬鹿犬はおねむさんなの、寝てれば良いの」

「分かったよぉ…」

「にゃ! 抱きつくななの! 馬鹿犬!」

「仲良いわね…あの2人」

「まぁな」

「ご主人も早くあたちを助けるの!

 最愛のペットミミちゃんが捕まってるの!」

「いやほら、俺の力でもポロは引き剥がせないから諦めてくれ」

「くぅ! 馬鹿犬離せ! 離せなの!」

「うぅ、分かったよ」

「ふ、分かれば」

「じゃあご主人に抱きつく」

「にゃ!」


あぁ、矛先が俺の方に向いてしまった。

流石にこの狭い馬車内で逃げる事は出来ない。

あっさりと捕まってしまった…


「にゃぁああ! ご主人を離すの!」

「離さない~」

「離すの-!」

「離さないよ~」

「ムキー!」


正直、俺を挟んで大乱闘をしないで欲しい。

俺が凄い左右に揺れているんですけど…酔いそう。


「…な、何と言うか…あなた達、本当に仲良いわね。

 どうしてその子達はあなたにそこまで懐いてるのよ…」

「さ、さぁ…一応、こいつらの命の恩人的なポジションだから?」

「え!? 何!? この子達に命の危機とかあるの!?

 いや、ミミは虚弱体質だし分からなくも無いけど…ポロが?」


人の姿になってる2人を見たら、命の危機とか無さそうだしな。

ポロは化け物級の怪力と技術とか戦闘能力があるし

ミミは異常な程に強力で多種多様な魔法を扱うからな。

マリアはミミが戦ってる姿を見たことはないから分かるけどと言ったんだろうが。


「そりゃあるよー、ご主人は僕の恩人ー」

「当然、あたちに居場所をくれたのはご主人なの。

 ご主人があたちを見付けてくれてなければあたちは彷徨い続けてたの。

 帰る家というか、甘えることが出来る相手が居るのは幸せなの」

「え? 両親は…」

「さぁ? 僕はお父さんもお母さんも覚えてないなー

 はぐれちゃったし、その時に死んじゃいそうになったんだけどね。

 ご主人のお陰で何とかこうやって元気になってるけどね」

「け、怪我の跡とか残ってないの?」

「あはは、ここだね、ここにあるよ」


ポロが自分の背中をマリアに見せる。

そこには大きな傷痕が残っている。

他にもポロには足に少し大きな傷痕がある。

こっちはそこまで目立たないけどな。


「嘘…良く生きてたわね…」

「あはは、運が良かったんだよ」

「こいつは…昔から本当にしぶとかったからな」


でも、この傷を見る度に、少しだけ…辛いという思いもあるけどさ。

だけど、今、人の姿だけど今、こいつが幸せそうにしてくれてるのは…

多分、俺にとって最も誇らしいことで…自分の行動が間違ってない…証明。

そんな風に感じてしまうのは…やっぱり俺も…こいつの事が好きだからなのかな。


「わはは! 死にかけた経験をすれば嫌でもしぶとくなるよ!」

「馬鹿犬は自分がしぶとくなることを嫌だと思って無さそうなの」

「当然だよ! 僕はしぶといよ? だって、すぐに死んじゃったら

 ご主人やミミちゃんと一緒に遊んだり出来なくなるじゃん!」

「それだけが理由なの?」

「僕としてはそれだけで十分だよ! 僕にはその時間が宝物!」

「価値がある物はもっとあると思うの」

「わはは! 僕が感じる価値は僕が決めるのだ!」

「…やっぱお前、凄いよ」


自分の考えをいつも貫こうとするその姿勢。

俺は今も憧れを抱く程だった。

俺には…出来なくなってきていた事だから。

やりたいと思っても、どうしても今までの思い出が俺の邪魔をした。


自分が正しいと思った行動はことごとく裏目に出た。

悪い事はしてないはずなのに、何故か怒られたり

嫌な思い出ばかりが俺の頭の中にはたまっていく。


きっとポロも似たような部分はあると思う。

だが、こいつは曲がってない。猪突猛進と言えるのかな。

自分が正しいと思った事をハッキリと言える力がある。


あの時、ディルさんとその父親の間を取り持とうとしたとき。

あいつは正しい事をしていた。だけど、俺はそんなポロを止めた。

ポロは嫌な思いをしたはずだ。だが、こいつは変らないだろう。


きっとまた、目の前で何処かの家族が喧嘩してたら止めようとするはずだ。

そして、ディルさんとその父親の仲を必死に繋げようとするはずだ。

それがポロだ。犬の時から変らない…俺は何度もこいつに救われた。


「僕が凄い? わはは! 嬉しい! でもきっと僕は凄くないよ!

 これが普通なの。ご主人は先読みが凄いから出来ないだけだよ!」

「いや、俺はただ…臆病なだけさ」

「そろそろグレーベルに着きます」


馬車の外を見てみると、そこには立派な高い壁が広がっていた。

あれがグレーベル…その城壁と言った所か。

豪華な装飾が壁に施されている。


グリフォンの装飾が施された盾に重なるように剣が2本刺さっている装飾。

あれが、グレーベルの紋章か何かなのだろう。

黄金に彩られ、これ見よがしに輝いている姿から、そう予想できた。


「…よし、やるわよ……ふぅ、ちゃんと一緒に居てよ…3人とも」

「あたちは行きたくないの、家で寝たいの」

「そこは嘘でも勿論って言いなさいよ!」

「わはは! ミミちゃんは素直だから! 因みに僕も眠たいから寝たいよ」

「私に関して無関心すぎない!?」

「ま、まぁ少なくとも俺は一緒に居るから、安心してくれ…

 正直、この2人だとマジで面会の最中とかに寝るかもしれんし…」

「普通…緊張して眠れないと思うけど…実際この子達なら眠りそうで恐いわ…」


この2人は能力高いんだが、如何せん元が動物だからな。

権力だとかそう言う物に何か感じたりはしないって言うね。

ある意味、憧れるメンタルだよ。無関心ってだけかもだけど。

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