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もう1匹のペット

ポロの仲間が見付かったという報告を俺はディルさんとマリア姫に伝えた。

2人はかなり喜んでくれ、一安心とひとまずは胸をなで下ろした。

今の状況が中々に不味いというのに、俺達が嬉しいと感じる時に

一緒に共感し、喜んでくれるとは本当に優しいな。


だがまぁ、流石にこの2人が揃った場合の賑やかさには

流石のディルさんでも、少々うるさいと感じたようで。


「…いやはや、ポロさんのお仲間が見付かったというのは実に素晴らしい事です。

 確かに彼女も見た目はパピットビーストではありますが

 どうも感情表現豊かですからね…しかし、騒がしすぎます」


騒ぐ2人の姿を俺の隣でジトッとした目で傍観している。

そりゃまぁ、俺だってこの2人の騒がしい会話はうるさいと感じる。

確かに犬猫だったときも良く絡んでたが

その時の会話がこうまでうるさい物だったとはね。


「だから! あたちはお前に興味なんて無いの!」

「そんな事言っちゃって、僕が構わなかったら構ってくるのに~」

「はぁ!? そんな事無いの! お前が構ってきてるの!」


そんな感じの会話を2人は毎日の様にしていた。

大体の場合、まず最初にちょっかいを出すのがミミだ。

ポロはミミがちょっかいを出すまでは休みの日であれば眠ってる。


しかし、大体ミミが眠ってるポロをたたき起こしてたりする。

正直、ミミはかなりの構ってちゃんだと昔から思っていた。

俺が眠ってるときも大体起してくる。


それは猫の時から変らない行動だったがな。

まぁ、猫の時、ミミにたたき起こされたときちょっと怒ったら

スゲー鳴きながらすり寄ってきたけど。


で、今回人の姿になってからは、結構ポロにちょっかいを出してる。

前までそこまで眠ってるポロを起そうとはしていなかったのに

こっちに来てからは、そりゃもう結構な頻度で起してるからな。


そんでまぁ、流石はポロ。例え眠ってるときに起されようと

寝起きとは思えない程のハイテンションでミミの相手をして居る。

叩かれて起されても、平気な顔をしてミミに構ってあげる感じ。


どんな事をしても怒らない相手ってのはやりやすいのかね。

ははん、やっぱり何だかんだであの2人は兄妹みたいな感じだな。

ま、今は見た目的には姉妹だけど…そんで性格面ではポロの方が妹っぽいが。


「あの2人…と言うか、2匹? いえ、やはり人ですし2人でしょう。

 彼女達はその…仲がよろしいのですか?」

「凄く仲良しです、見ての通り」


ぱっとみだと喧嘩してるように見えるが、ポロはめっちゃ楽しそうだし

ミミもいやいや言いながら、表情は生き生きしてるからな。


「にゃぁああ! 抱きつくななのぉ!」

「わはは! 僕は抱きつくよ! うーん、可愛い妹ちゃんだねぇー!」

「ムキー! あたちはお前みたいな兄は要らないのー!」

「なら大丈夫! 今の僕はお姉ちゃんだからね! キリッ!」

「変な語尾付けるななの!」

「ミミちゃんには言われたくないの-なのー!」

「このぉ! むかつくぅのぉ!」


可愛いペット達が仲良くじゃれ合ってる姿を見るのはやっぱり癒やされるな。


「む、娘を見ている父親みたいな表情してますね」

「癒やされません? こう言う楽しそうに遊んでる姿を見てると」

「否定はしません…もう少し静かに遊んで欲しいんですけどね。

 それと、そろそろミミさんに聞きたい事もあるんですがね…」

「ミミに? 一体何を?」

「錬金術ですよ、ミミさんは魔法に長けているのでしょう?

 もしかしたら、錬金術についての知識があるかも知れません。


 唐突に姿を見せたという話を真実だとすれば、テレポートの魔法が使える。

 テレポートで自分自身を移動させるのは、かなりの使い手で無ければ難しい。

 それ程の使い手であれば、錬金術の知識があるかも知れないと考えているのです。


 まぁ、この仲良さそうにじゃれ合ってる姿を見ていると

 とてもそこまで凄腕の魔法使い、と言う風には見えませんけどね」


ちょっと呆れながらも、確かに期待をして居るという感じだな。

でも、確かにそうなのかも…いきなり出て来たからな。

そう言う知識があるとしても不思議じゃ無いが…

だが問題は3ヶ月でそこまで極められるのだろうかという部分だけど。


「ムキー! このぉ! 力ばかり強いのはイラつくの!」

「あ、そう言えばミミちゃん異常なくらい貧弱だね。

 ちょっと動いたらすぐに息切れしちゃってた様に見えるし」

「こっちに来てから体力が無くなったの!

 でもその代わり、頭は凄く良くなったの! お前と違って!

 お前は馬鹿なままなの! 馬鹿馬鹿バーカ! 

 あたちは錬金術だって覚えたの! お前と違って!」

「お勉強は興味無い! 面倒だもん! それと馬鹿は褒め言葉ー!

 ふっふっふ、馬鹿な方が楽しいからね!」

「にゃはは! 何もしてない奴が偉そうに言うななの!」

「残念だけど僕は勉強したからね! 何も分からなかったけど!

 錬金術って意味分からない!」

「頭を犠牲にして肉体が強化されたに違いないの!

 つまりお前は脳筋なの! 馬鹿犬ー!」

「おぉ! ありがとう!」

「どうしてお礼を言うの!?」

「脳筋って考えるより先に動く事って聞いたからね! まさしく僕!

 僕は考えたら絶対失敗するからね! だから考えるより身体が動くって

 僕にとっては褒め言葉だよ! それって、失敗しないって事だし!」

「衝動的に動いたら、いつか絶対に痛い目に遭うの…」

「大丈夫! ご主人かミミちゃんが考えてくれるから!」

「ご主人に頼るなこの馬鹿犬-! あたち達はご主人を護る立場なの!」

「うん! 守り護られる立場!」

「ま、まぁそれが1番理想なの…く、まさか馬鹿犬にぃ…」


凄いマシンガントークだったな、お互いに会話のドッチボールしてた。

しかも何発も何発も絶え間なく…そんで、その異様な程に速い会話の中で

さらっと出て来たとんでもなく重要な情報が…


「お話しは終わりましたか?」

「む、ご主人とたまに戦ってる奴なの…」

「戦ってるというか、稽古をして居るのですがね。あまり頻度は高くありませんが」

「この前ご主人を怪我させたの! あたちは見ていたの!」


そう言えばしたな、ディルさん結構スパルタだから仕方ないけど。


「ほら見るの! 今だってご主人が絆創膏してるの!

 ほっぺに! まだ治ってないの!」

「生き死にが掛ってますので、加減は出来ないのですよ」


絶対にディルさんは俺と本気で戦ってないんだけどな。

戦闘経験皆無の素人である俺が本気のディルさんと能力無しで戦って勝てるかよ。

仮に能力使用ありでも、正直ディルさんに勝てる気がしない。


「絶対に許さないの!」

「ミミちゃん、そんなに噛み付いたら駄目だよ。

 ディルはご主人の為にやってるんだよ?」

「なんでお前にそんな事が分かるの!?」

「見てたら分かるよ。それにご主人だって怒ってないよ?

 ちゃんとご主人の表情を見て、言葉を聞いて動かないと駄目だよ?」

「馬鹿犬にそんな事出来るわけ無いの!」

「それ位は出来るよ、だって頭の良さは関係ないもん。

 それに~、僕が出来るのにミミちゃんは出来ないの~?」

「ぐ、ぐにゅにゅぅ!」


はぁ、普段のポロからは想像出来ないな…たまに賢くなるよな、こいつ。

攻守逆転した場合、一瞬で勝負が着くって感じだな。

完全に姉って雰囲気だ…普段からは想像出来ないけどやっぱり凄い奴なんだな。


「くぅ、このあたちが…だ、だけど本気を出せばまだ言い負かせるの!

 でも良いの、ここはお前の顔を立てて引いてやるの!」


そして、ミミは素直に敗北を認めないのか。

完全に口で負けていたのに、負けず嫌いな奴め。


「では、私のお話を聞いてくれると言う事でいいのですか?」

「まぁ良いの、聞いてやるの」

「では、率直に聞きますが、あなたは錬金術の技法を知っているのですよね?」

「ふふん、当然なの。このあたちの天才的な頭脳に掛れば1ヶ月でマスターなの!」


ディルさんの質問を聞いたミミがスゲー得意気な表情で答えた。

でも実際、あの難しい錬金術を1ヶ月でマスターしたというのであれば

あんな風に得意気な表情を取れるだけの能力は十分ある。


「1ヶ月で…なる程、ではその知識を与えることは?」

「何? 錬金術知りたいの? にゃはは! 

 あんな簡単な物も出来ないなんて情け無いの!

 そんなお馬鹿さんは一生掛っても無理に決ってるの!」

「いや悪いな…俺もさっぱりでさ、やっぱ一生掛けても無理?」

「にゃ!」


俺の一言にミミが過剰に反応したのが分かった。

一瞬の間に全身から冷や汗を流し始めている。

いやうん。これだけで相当焦っているのが分かるな。


「にゃ、にゃにゃにゃ! そ、その! ち、違うの!

 ご、ご主人を馬鹿にしたわけじゃ無いの…え、えっと!

 だ、大丈夫なの! こ、このあたちが付きっ切りで教えるの!


 ご主人なら大丈夫なの! ぜ、絶対大丈夫なの!

 じ、実はあたちも覚えるのにじ、じじ、時間掛ったの!

 だ、だから大丈夫なの! だからき、嫌わないで欲しいの!」


さ、さっきまでスゲー得意気だったのに、一気に涙目になってる…

え? 何? ミミってそこまで小心者だったの?

いや確かに少し手で払ったら鳴きながらスゲーすり寄ってきてたけど…

あれって嫌われてないか不安だったからすり寄ってきてたのか。


「にゃふ!」


こんな悲しそうな表情されると少し辛いからな。

ひとまずは安心させてやろう。


「ミミ、俺がその程度でお前の事を嫌う奴に見えるか?」

「ご、ご主人~!」


ミミの頭に手を置き、優しく撫でる。

ミミは嬉しかったのか、そのまま俺に抱きついてきた。

小心者なのに自信過剰ってのもまた妙な組み合わせだな。


「良かったね、ミミちゃん!」

「うん…」

「…自信過剰なのか小心者なのか…どっちなんでしょう」

「多分どっちもです」


ミミは少しの間だ、俺に抱きついたままだった。

本当、可愛い妹みたいだ。

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