物語は唐突に
長らくお待たせしました! 新作の投稿となります!
久しぶりに男主人公で書いていきたいと思います!
今回はシリアス多めの作品となっていますが
結末はハッピーエンドとなっています!
是非、お楽しみください!
基本的に色々な物語は突如何かが動き出すことが多い。
それは、緩やかな流れでは飽きが来てしまうからだろう。
急転直下の超展開こそ物語に華を添えると言える。
「はい、次は198ページ」
「……」
まぁしかし、人生という物語は大体退屈な物だ。
テレビでたまに取り上げられるような波瀾万丈な人生は
実際には殆どあり得ないだろう。あり得ないから求められるんだ。
同じ境遇に居る人間の昔話なんて聞いても退屈だろうからな。
勉強できない同士なら、学校の授業何してたと聞かれたら
大体俺と同じ様にやる気無さそうに教科書見てただけって返ってくるだろ。
よっぽどなら怒られたりと、多少は面白い部分があるかも知れないがな。
「今日の授業はここまで、気を付けて帰って」
「はーい」
そのまま家に帰って、いつも通りにゲームして寝る。
こう言うゲームの登場キャラクターみたいにさ
波瀾万丈な生活をしてみたいとは思う事もあるけど
正直、何の能力も無い人間がそう言う世界に飛ばされても
ろくに面白い事も無く、あっさりと死ぬのがオチだろう。
主人公はその他大勢と比べて強いから物語になるだけであって
大した能力の無い一般人が主人公のゲームだったりすれば
襲われて死なないように村とか国から出ない生活だけになる。
何か物語に展開があるとすれば、国が攻められての死亡イベント程度。
やっぱりこう思うと、力ってのは何処の世界でも大事なんだろうと思う。
「……でも、平和な毎日ってのも退屈なんだよな」
そうだなぁ、俺は死という物を身近に感じたことが無いからな。
だから、どうせなら、好き放題やってすぐ死にたい。とか、そう思うんだろう。
しかしどうかな、死が身近にあったら、そんな風には思わないのかな。
「あ…」
目の前をフラフラ歩く男が財布を落とした。
仕方ない、もう少ししっかりと持ち歩けば良いのに。
「っと、あの」
「あ! 俺の財布! テメェ! 盗みやがったな!?」
「はぁ!? 何言って!」
「返せ! 警察に突きだしてやる!」
「俺はあなたが落とした財布を拾って、渡そうとしただけで!」
「言い訳なんざ良いんだよ! 来い!」
…クソ、クソクソクソ! 何でだよ! ただ拾っただけじゃ無いか!
渡してあげようと、ただ拾って…それだけじゃ無いか!
俺は何か悪い事をしたか!? 落とした物を拾って渡そうとする行為は間違いか!?
「…はぁ、この子が財布を盗んだと…?」
「そうだ!」
「違います! ただこの人が落とした財布を拾って、渡そうとしただけで!」
「嘘に決ってる! こんな餓鬼がそんな事するわけ無いだろ!」
「……あなた、相当飲んでますね」
「はぁ!?」
「この子はただあなたの財布を拾ってくれただけですよ。
決して盗んだわけじゃありませんよ」
「なんでそんな事が分かるんだよ!」
「盗もうとしてたら話し掛けないでしょ?」
「あぁ!?」
あのおっさんは完全に酔っている…警察官は必死にあの人を押さえようとしていた。
その時におっさんは暴れて、警察官に手を出してしまう。
そのままおっさんは公務執行妨害とか傷害罪とかでお縄となる。
「……」
いい気味だ、と、思うのが自然なのかもしれない。
でも、俺が話し掛けたせいで…財布を渡そうとしたせいで
このおっさんは…そして、その家族は…俺が悪いんだ。
「……」
そのまま家に帰されるが、未だに後悔が拭えなかった。
何でだろう。俺はいつもこうだ。正しいと思ったことをしても
いつだって、その行動が裏目に出る…
正しい事って何だろうか…自分が思う正しい事って…本当に正しいのか?
傍観…それが1番の正解なのかもしれない…何もしないのが…正解。
「クゥ~ン」
「……正直お前の生活と比べたら俺の生活なんて楽しいもんだろう
こんな風に、くよくよ何か考えることも無いだろうし、刺激は無さそうだからな…」
帰ってきた俺に歩み寄ってくる愛犬のポロを撫でてみる。
正直、こいつの生活と比べれば大分楽しいぜ、この毎日。
首輪で繋がれて殆ど動けないんだからな。
いつも同じ光景しか見られなくて
いつも見る面しか拝むことも出来ない。
良くそんな生活してて生きていこうとか思えるよな。
俺だったら多分自殺しようとか思う。
ミミの方は毎日毎日好き勝手にウロウロ出来るが
ポロの方は犬小屋で鎖繋がれてるからな。
見てるこっちは基本可愛いと言う認識しかしないが。
実際、ポロは可愛い柴犬だし、見ているだけで癒やされるが
さてはて、鎖に繋がれてるこいつは幸せなのか?
でも、何も後悔する事が無い毎日って言うのは…少し羨ましい。
何も考えないで良い…何も考えないで生きていけるこいつ見たいに
俺も何も考えないで過ごしてみたいと思う事は良くある。
「全く退屈でしょうが無いんじゃないか? お前の毎日。
会話が出来るなら、どう感じているのか聞きたいな。
同じ毎日を続けてて、楽しいかどうか。
…でも、ちょっと羨ましい気はするけど」
「…あん!」
俺は動物の言葉は理解できない…だが、何だかポロが肯定したように思えた。
この生活が楽しいと、そうハッキリと言った様に。
心なしか笑顔だったような気がする…考えすぎか。
「そうか、楽しいのか…もしそうなら、退屈を楽しむコツを知りたいな。
ま、お前みたいな馬鹿犬なら、どんな状況でも楽しめそうだが
…ついでに、どんな時でも能天気に過せるコツも教えて欲しいよ」
「くぅ~ん?」
「っと、何だよ、いきなり心配そうな顔して」
俺の感情でも分かったのか、ポロは心配そうに歩み寄ってきて
少しだけ俺の手を舐めてきた。
ちょっと悩んでるのがバレてたのか…犬ってそう言うの見抜くの得意そうだしな。
「へっへ、あんあん!」
「相変わらず自分の尻尾を追いかけ回すんだな。何度も言うがそれはお前の尻尾
と言うか、さっきまで俺の心配してくれてたんじゃ無いのかよ」
「くぅ~ん?」
「ははん、相変わらずの間抜け面だな。いや本当お前は幸せそうで良いな」
でも、ポロが楽しそうに遊んでいる姿を見て…少し気持ちが落ち着いた。
あんな事があっても…俺の周りはいつも通りだ。
何だか、ポロが俺を慰めてくれたように感じた。
「あん!」
「っと、いきなり飛びつくな…って、うが!」
あ、頭を…頭を強打した…うぅ、い、意識がぁ…
ぽ、ポロの奴め…重いんだからもう少し加減してくれぇ…
「ごしゅじーん!」
うぅ…頭が痛い、畜生、妙に高い声が頭に響く。
うへぇ、何かベタベタする…何かに舐められてる気がする。
あぁ、多分ポロだな、あいつは良く俺の顔を舐めやがる。
他の家族にはここまで絡んでこないのに
俺の時だけ妙にベタベタしてくるんだよなぁ。
一応、お世話とかは俺がやってるが、懐かれるとまぁまぁ大変だ。
ま、ボロボロになったこいつを拾って治療したのが運の尽きってね。
仕方ねぇから飼うことになったら、当然俺が世話しないと駄目だろ。
「……ポロ、何度も言ってるけどあまり舐めないで欲しい」
「はーい」
「うん、分かればよろし……」
あれ? ちょっと待て。うん、おかしいような気がするんだけど。
いや待て、冷静に考えろ。さっき、俺は誰に話し掛けたっけ。
そもそも俺の事をご主人とか呼ぶ知り合いなんて俺にいたか?
「……」
かなり動揺しながらゆっくりと目を開けてみると
目の前には可愛いケモ耳が生えたきつね色の髪の毛をした美少女が居た。
同時に周囲を見渡したが、どうも見慣れた光景など何処にも無かった。
「……!?」
「どったのご主人」
「ち、近い近い! 顔近いから! て、誰だお前!」
「ほよ? いつもこんな感じじゃ…それに忘れたの!? 僕だよ! ポロだよ!」
はぁ!? ポロって…え? 俺の愛犬…いやおかしい! あいつは人じゃ無い!
完全に犬だ! あいつはただの柴犬だったはずだ!
「無いから! 少なくとも俺の知り合いにお前のような美少女はいない!」
「美少女…むむ! そう言えば僕、ご主人と会話をしているような気がするよ!
あ、気のせいか。そう言えばいつもしてた!」
「してねーよ! 少なくともお互いがお互いの言葉を理解した会話はしてない!」
「あーん! 突き放さないでー! もっとペロペロするのー!」
「駄目だぁ! 駄目に決ってる! と言うかそもそもお前はポロなのか!?」
「勿論だよ、僕が僕以外の何に見えるってのさ!
僕はご主人大好きのポロちゃん!」
「お前は君だろうがぁ!」
「お…そう言えばそうだった気が…」
そう言うと、目の前の少女は自分の股の方を凝視した。
そして、少しして何を考えたのかズボンを脱ごうと手を伸ばす。
「止めろ! それを降ろそうとするな!」
「だって見えないんだもーん! 何これ-! 毛皮じゃ無いよー!」
「落ち着け、それはズボンと言ってだな!
俺が良く履いてるだろ!? それ! それだから!」
「え? ご主人のはもっと長いじゃん。僕の短い」
「ハーフパンツという奴だ! 基本女の子が履く奴!
男だったらすね毛とか見えて気持ち悪いけど履く奴は履く!」
「ふんふん、じゃあこれは? 上の方の」
「ただの黄色いシャツだな、犬がプリントされてる」
「おぉ! 何となくご主人と一緒!」
「違う」
何かスゲー疲れるんだけど…何これ、そもそもこれはどう言う状況?
待て、冷静になれ。冷静に、まず今までで分かってる情報だが
目の前の少女はどうやら俺の知り合いだという事だ。
少女かどうかはまだちょっと分からないけど、多分少女。
そして、その少女の名前はポロで、俺の事をご主人と呼ぶ。
まるで愛犬と同じ様に異様に懐いていて、かなりの馬鹿。
「ほっほ、あ、待てー!」
「……それはお前の尻尾だ」
「ほえ?」
じ、自分の尻尾を追い回す癖…そう言えばポロにもあったな。
で、俺が指摘すると、この子のように間抜けな面でこっちを向く。
……似ている。彼女の動作がことごとくあいつに似ている!
「……いや、その…誠に信じがたい事だが…お前、ポロなの?」
「さっきからそう言ってるじゃん! ご主人~」
「だからその見た目ですり寄ってくるな!」
「あで! は、初めて叩かれちゃった…でもご主人なら平気!」
「……えっと、ポロさん。正直お前に聞いても意味は無いと思うが
そもそもこれでお前が事情を知ってたら、むしろおかしいとすら思ってるが
……その、ここ…何処だ?」
「え? お家の前でしょ?」
「何処にあるんだよ…お家」
「え?」
俺の言葉を聞いたポロ…で良いのかな、もう面倒だしポロでいいや。
彼女はキョトンとしながら周囲を見渡し始める。
何度かぴょんぴょんと軽く跳ねながらも周囲を見渡す。
「……無いね!」
「元気に言うな」
「でも、小さなお家は見付けたよ! あっち!」
「…あ、そ、そう…何かあったか、向こう側」
俺には見えない位置に何かがあったようだ。
俺は取りあえず彼女に付いていく事にした。
これはどう言うことか理解は出来ないが、流れに乗るしか無いだろう。
そもそも、流れに乗る以外の選択肢が俺には無いんだけどな。
メインとなるヒロインは3人ほどを予定しています。
これから順次登場していくので、お楽しみに!