02.彼女の正体
「えー、ですから、みなさんが有意義
高校生活を____」
長々と続く校長先生の話を左から右に流しながら僕は朝の少女について考えていた。
エルフ?いやまさか…な。
エルフとはおとぎ話やゲーム、アニメに出てくる種族で、そんなのが現実にいるわけないだろうと思っていた。
しかし現実に僕はエルフの特徴とも言える尖った耳を見てしまった。彼女は一体なんなのだろう。
そんなことを考えているうちに入学式は終わった。ぞろぞろと生徒が各教室に入りホームルームが始まった。
「はいっ、てことで今日から一年間君たちのクラスの担任になりました、森 優里香と言います。みんなよろしくね♪」
なんという癒しキャラ系担任。
ふわふわした感じの人だな。見ただけで癒されるようだ…特におっぱいの暴力が凄い。
「一年生は最初委員会とか決めないといけないのよねー。ということで学級委員長やってくれる人!」
「よかったら僕がやりますよ」
そう言って手を挙げてるのは横の席の宇佐田。うん、お前が適任だろう。
「じゃあ宇佐田くんに任せようかな♪これからよろしく♪」
パチパチパチパチ
各所からやっぱ宇佐田だよなー等と声があがっているのを見るとやはり中学でも中心人物だったのだろう。
「じゃあ次に図書委員…」
来た!この委員会は見過ごせない!
中学3年間図書委員会に所属し確実に忙しくないこの委員会を逃すわけはない。
音速の如く空に手刀を振り上げ先生にアピールをする。
「はいっ」
「お、後藤くんね。あと一人くらいいてもいいかなー」
よしっ!心の中でガッツポーズをあげる。さて、あと一人は誰かな…
スッとクラスの窓端の机から手が伸びていた。綺麗な黒髪。またあいつだ。
「じゃあ後藤くんと林さん図書委員会よろしく♪」
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各自委員会も決まりホームルームが終わったとこで彼女が声をかけてきた。
「後藤くん、帰り一緒に帰りませんか?」
「お、後藤くんもうそんな関係の女子作ったのか」
宇佐田に茶化されるもこの女、目が笑ってないように見えるんだよなあ…
「そんなんじゃないって。うんいいよ」
はあああああ、女子と帰るなんて初めてだよ…よりによってこいつかよ
なんて思いながらなんて思いながら二人で駅に向かい歩いていたら「ねえ」とあちらから声かけてきた。
「今朝のこと、誰にも言ってないでしょうね」
「誰にも言ってねぇよ。俺がそんな口が軽い男に見えるか?」
「あっそ、ならよかった。…。こっち来なさい。」
「あ、ちょっ」
そう言い林に袖を掴まれ道から離れた路地に入った。
「見られてしまった以上、あなたには話してしまったほうがよさそうね」
そういいながら彼女は髪の毛をかきあげ、またあの耳を見せてきた。
「私の名前は林 永瑠。ただこれはこっちの世界で使うための仮名。本当の名前は エル・ラスカード・デ・ユンファ。エルフの森の一族よ。」
「ほ、ほんとにエルフ…なのか?」
「ええ、これを人間に見せるのは不本意だけどね。」
こいつ教室での態度と俺に接する態度違いすぎじゃねえか?
「人間が私の姿を知ってしまったら本当は処刑するのが掟だけど…」
しょ、処刑…その言葉を聞いてゴクリと固唾を飲み、思わず身構える。
「大丈夫よ、そんなことしないから。でも協力はしてもらうわ。」
「協力?」
「そう。実は私は一族の長から人間の文化を調査するよう命じられ人間界に来たの。あなたにはその手伝いをしてもらうわ。もちろん断ったらどうなるかわかるよね?」
「イエス以外ないってことか…」
「そういうこと。まあ人間とかいう下等種族生かしておくのもなんなんだけど、協力者がいることは情報収集に使うことに役立つから学校で私の傍にいるこたを許してあげるわ。それじゃ、よろしく頼むわよ」
そう言い永瑠は俺を残し帰ってしまった。
平凡な高校生活を過ごすはずだったのに面倒事に巻き込まれてしまった…
そう思い徹也もトボトボと駅に向かって歩き始める。
「ただいまぁ…」
二階の自分の部屋に向かいベッドに横に倒れる。
『エルフ』この言葉を聞いた瞬間驚きの反面ワクワクした気持ちがあったが永瑠の話で全て不安という言葉に変わった。
はぁ…、とため息をつき枕に顔をうずめる。
リセットボタンが現実に搭載されないかなーと心の中で嘆く徹也だった。