01.可憐な少女
その日、僕は風で桜が舞う中綺麗な尖った耳を見た。
俺たちにはないその異様に目立つ耳に僕は見惚れてしまった。
ふいに視線を逸らした彼女と目が合い、自然と見つめ合う形になり、ハッとして目をそらす。
少女「ちょ、ちょっとあなた!」
回りを気にしながらこちらに歩いてきた彼女が言った。
「今の見た?!ねえ!」
鼻と鼻がぶつかりそうになる距離まで顔を近づけ彼女は睨みつける。
ち、近い…彼女のバニラ風味のいい匂いでち
ょっとニヤけそうになる。
「み、見てないですよ。」
苦し紛れの嘘を言いながら俺はそっとそっぽを向く。
「嘘おっしゃい!目が合ったでしょ!」
「ほんとですって。尖った耳が見えたなんてことないですよ。…あ」
「ほら!見てるじゃない!あなたこのこと誰にも言わないでね!絶対だから!」
強気に願う目の前の子を目の前に
「はぁ、面倒なことになった…」
そう思いながら後ろに広がる校舎を見た。
この時はまだこれから始まる忙しい日々には気付く由もなかった。
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「8番…8番の席は…よし、ここだな」
黒板に張り出された座席表を見て自分の席を確認する。
これからの学園生活に心踊らせ一人でウキウキしている。…あのことを除いてだけど
ここは僕が住む磐城市にある磐城学園高等学校。市の端っこにあり、周りにはほとんどなにもない言わば田舎高校ってやつだ。
僕がここを選んだ理由は徒歩5分圏内!ってこともなく最寄り駅から8駅離れたとこにある。中学校時代のイタイタしい自分を知らない人で尚且つ偏差値も高くないという理由だけで選んだ。
もうあの頃には戻りたくない…
そんなことで人間関係も0からスタート!
頑張って友達を作らなきゃな!
脱、陰キャ!
「お隣さんか。よろしくな!」
そんなことを思ってると早速隣の男から声をかけられた。
「よ、よろしくね。僕は後藤徹也。えっとー」
「宇佐田快人だ。1年間よろしくなっ」
ふむ、陽気でなかなか高身長、おまけに美形ときた。こいつと絡めばぼっちは回避できそうだ。
そんな脳内妄想しながら通路を挟んで初日あるあるを話し出した。
「後藤くんはどこらへんから来たん?ここらの中学じゃなさそうだけどさ」
「えっと、四中だよ」
「四中っつーと割と遠くねえか?よくここきたなー」
「あはは…あまり頭もよくなくて楽したかったからね」
「まあ確かにここそこまで偏差値高くないからな、俺もそんなとこだ」
そんな話をしているとチャイムがなり、先生が教室に入ってきて教壇にたった。
「はーい静まれー。お前ら30分後に入学式始まるぞー」
そう、ここから俺の高校生活が始まる。
宇佐田くんとも話せて順調にこの環境に馴染めそうだ。
入学式に参列するために廊下で列をつくっていると、今朝見かけた綺麗な黒髪が目に入った。
え、あいつも同じクラス…?サーっと顔が青ざめると彼女もこっちに気づき後ろからキッと睨みつけてくる。
一気に不安が押し寄せる。僕の高校生活、順調に進むかなあ…