プロローグ
『お前は魔王を倒せる唯一無二の存在、人類の光だ』
最初に俺にそう告げたのは多分俺の母親か父親だったと思う。この世に生まれ、才能が認められ、多額の富を得たあと俺にそう告げたのだ。
俺はこう思った。
「嬉しい」
次に言われたのは国王だったかな。魔王に国を襲撃され一目散に国を捨てた王。彼は自分の国が焼かれている時に安全な場所で書いたであろう文章を死にかけの兵士に預け俺に届けさせた。
俺はこう思った。
「なんともったいないお言葉…この身が朽ちてでも魔王を打ち倒してやる」
最後に俺にそう告げたのは多分俺の相棒だったと思う。
彼の他にも、僧侶、踊り子、など様々な仲間と出会ってきた。ちなみに彼は戦士だった。
僧侶は相棒の次に俺と長くいたと思う。最後は確かモンスターに襲われて瀕死な時に盗賊に殺されたっけな。
踊り子は最初の方だけ一緒にいたが途中でパーティーメンバーに輪姦されていつのまにかいなくなってしまった。
俺の相棒はほぼ自殺に近かった。
彼は魔王の城に近くに着いた途端、狂い、自分の頑丈だと自慢していた頭を石にぶつけまくりぽっくりと死んでしまった。
のちに彼の荷物に遺言が入っているのを見つけ、そこには自分が踊り子を輪姦したメンバーの1人だということの告白と、『もう嫌だ』ということ、
そして親と国王と同じ言葉が書いてあった。
俺はこう思った。
「告白してくれてありがとう、あとは任せろ」
魔王のいる所を目指し剣を振るい、禁呪を己にかけ、そしてまた剣を振った。
いつしか剣の手入れはしなくなっていた。
ボロボロの状態になっても禁呪をかけ肉体を直しまた歩き出した。
そしてついに魔王のいる一室--と呼んでいいのかわからないほどにバカでかい場所にたどり着いた。
魔王は「ようやく来たか」と「待ちわびたぞ」と口にしこちらを見ると、心底驚いたような様子だった。
巨大な化け物の体の口がゆっくりと開きそして「悲しいな」とだけ呟いた。
そこからは死闘と呼べるものが始まった。
魔王は炎を吹き、氷を操り、風を操り、自らの爪で地面を1メートル程も抉り、様々な攻撃をしてきた。
挫けそうになった。そんな時はいつも仲間たちの姿があった。
炎に肌を焼かれた。
すぐさま禁呪をかける。
氷によって四肢をもがれる。
すぐさま禁呪をかける。
風によって肌を切り刻まれ、肉を切られ、腱を切られた。
すぐさま禁呪をかける。
魔王の攻撃を受けた俺は全て禁呪というたった一つの呪文で対抗した。
ようやく、魔王を倒すことに成功する。
周りを見渡せば地は抉れ、柱は倒れていたり粉々になっていたり。
これで終わったのだ。
俺は禁呪を再びかけ、もげた足を直し立ち上がる。
「やったよ…父さん、母さん」
「やりましたよ…国王様」
「やったぜ…お前ら、相棒」
俺はこう口にした。
「…………この、くそ野郎どもが」
誰もいなくなった魔王城で1人、力なく倒れた。
俺の命はここで尽きた。
俺病んでる?