エピローグだよ、精霊と勇者伝説!《え?最後までハチャメチャに決まってるじゃないですか。だってこのヒト達だもん》
今回で終わりです〜。
色々と端折りましたが、お付き合いいただきありがとうございました〜!
最後までプロット通りには動かなかったな、登場人物達……。
まぁ、ある意味?このハチャメチャ具合こそ、この作品らしいのかもしれませんね(笑)
コミカライズ版はまだまだ続きますので、今後とも《精霊とヤンデレシリーズ》をよろしくお願いします!
(・∀・)ノ
島田莉音
床に寝かされたルーナ様の隣。
正座をした精霊王は顔面はそれはもうボッコボコに腫れ上がっていたわ。自業自得ね。
「それで?今回の件の、言い訳を聞こうか」
こっちが魔王なんじゃないの?と勘違いしそうなほどに威圧感マシマシで仁王立ちするルインは、ギロリッと精霊王を睨みながらそう問う。
精霊王は指先をツンツンさせながら、唇を尖らせた。
『えっと〜……それはだな?宴会で面白い話を聞いてだな?』
「それは《風の》から聞いた」
『面白かったから〝つい〟体験してみたい‼︎……と思っちゃって??そんな思いからこんな夢の世界を始めちゃったというか??』
てへぺろっ☆
精霊王が頭を掻きながら、ウィンクをする。
ーーヒョォォォォォォ……。
そんな馬鹿を見た私達の間に冷たい風が吹いたわ。
本当……その言い訳はないでしょう……。頭が痛い……。
「……本当。こんなのが精霊王とは思えないよな」
「ですわね。現実を知ると、信仰心が薄れますわ」
「……ゲームの中だと、もっとキリッとした神様らしい感じだったはずなんですけどぉ〜……その面影もないですぅ〜……」
『わんっ』
ボソボソと呟くトイズ様、ネッサ様、イヴリン(withアダム様)。
本当にそうよね‼︎って同意したいけれど、みんなの呟きがが聞こえてたらしい精霊王がこれ以上嘲けられても困るから、我慢するわ。
床に指先でぐるぐる円を描きながら拗ねる精霊王に向かって、ルインは大きな溜息を零す。彼は呆れた様子を隠さずに、告げた。
「まぁ……とにかく。精霊王は解放されたんだから、俺達を目覚めさせてよ」
『あぁ、うん。はい。分かりました』
「…………?今回はヤケに素直だな……?」
『ヤケに素直だなって地味に酷くないか??』
思わず溢れたらしいルインの本音に、精霊王は真顔になったわ。
けれど据わった目になったルインから「そう思われる原因がアンタにあるからだろ」と言い返されて、またもや〝てへっ☆〟と誤魔化そうとする。
真顔のルインとおふざけ精霊王の睨み合い。そのまま数十秒間向き合っていたけれど……精霊王は気まずそうに目を逸らし、隣で眠るルーナ様の頬を優しく撫でた。
『…………いや……まぁ。そうだな。流石のわたしも、今回の件は反省してる。だって親子であるお前達を戦わせてしまったんだからな』
「…………分かってて、魔王役を母さんにしたんじゃ……?」
『そんな訳ないだろう?この夢の世界を展開させたのはわたしだが……ルイン達の役の振り分けはわたしがしたんじゃない。その人、個人個人に合った役が自動的に振り分けられただけなんだ。じゃなきゃ勇者パーティーのメンバー達の職がそんなトンチキになるはずがないなだろう?わたしが決められるなら、王道から逸らさぬよ』
勇者パーティーのメンバーって魔法使い、戦士、治癒師、斥候……そこら辺がメジャーなイメージよね。
盗賊はまぁギリギリ?本当にギリギリ斥候に近しいって思うかもしれないけれど。鞭使い、神犬、生贄は王道からだいぶ逸れてるわよね。
『とはいえ後悔はしてないがな‼︎』
「おい」
ドヤァァァァン〜‼︎
ドヤ顔でそんなことを言う精霊王に、今度は私達の目も据わる。
本当、反省してるのかしら?このヒト??
『なんせこんなに長くルーナといれたのはルインが生まれる前ぶりだからな‼︎それもか・ん・き・ん♡でだ‼︎毎日毎日ルーナとラブラブ♡イチャイチャ♡出来て、とても満足したぞ‼︎』
…………。
コレ、絶対、反省してないでしょ。
『とは言え。ルーナにも言ったが、ここは所詮夢の中。どうせイチャつくなら現実での方がいいな。監禁されるのは嬉しいが……どうにもこの世界にはルーナを焦らせるモノが少な過ぎる』
…………あらぁ?
なんか、雲行きが怪し……?
『ふむ……そこだけが誤算だったなぁ……。現実ではただでさえ滅多に会えないし、わたし達の仲を邪魔しようとするモノが多いからか、ルーナはわたしを独占しようとして、かな〜り激しく、鬼気迫る様子でわたしを求めてくれるんだが……この世界じゃずっと一緒にいれたからなのかルーナが少し安定気味でな……束縛が足らない……ヤンデレ成分が足らん……』
……あ〜……流石、ヤンデレ好き過ぎて息子にもヤンデレ属性を付与したヒトだわ……。
一応、監禁されといて……。ヤンデレ成分が足りなくて物足りないとか、相当ね?
『だからもうそろそろこの夢の世界と終えようと思ってたんだが、勇者達が来てくれたおかげでちゃんと終幕といった感じで終えることが出来るな』
「ちょっと待って頂戴」
ーーピタリッ。
思わず私は制止をかける。
キョトンとした精霊王に、今の発言にピシンッと固まったルイン達。
私は眉間を揉みながら、恐る恐る口を開く。
「つまりなぁに?別にルインが魔王城まで来なくても……時間がくれば勝手に解決してたってこと?」
『…………えっと。……うん、そうだな』
「じゃあ……あんなに苦労して旅する必要もなかったってことよね?」
『………………』
精霊王に鋭い視線が集まる。
だってねぇ?私達が旅をさせられてたのは、精霊王を勇者が救出しなければこの夢から解放されないと言われたからなのよ。
なのに別に勇者がここまで来る必要がなかったって言われちゃったら。
なんのためにあんな無駄に苦労したって言うの。
『…………てへっ☆』
バチコーンッ☆
本日二度目のてへぺろにブチッと、ルインの血管が切れる音がしたわ。
ルインがポンッと精霊王の肩を掴む。けれど、その手は絶対に逃さんとばかりにかな〜りの力が込められていて……。
精霊王を掴む反対の手を握り込んだルインは、にっこりと微笑んだ。
「歯ァ食い縛れ、クソ親父」
*****
かくしてーー。
勇者の旅路は、この物語らしいオチ(※精霊王殴られオチ)で終わりを迎えた。
夢の世界に巻き込まれた者達は目覚め、精神的な疲労を感じながらも、全ての記憶は朧げな夢へと変わる。
…………別名、現実でも怒られたくなかった精霊王の証拠隠滅とも言うのだが。
まぁ、なんだかんだと確かなことはただ一つ。
現実だろうが夢だろうが、隣にいるのは最愛のヒトであるということだけ。
それだけは絶対に揺るがない事実であるからこそ、どんな終わりを迎えようとも……ルインとシエラにとってはいつだってハッピーエンドでの、終わりになる。
『結局何が言いたいかと言うと……ルイン達の日々はまだまだ続くってことだ‼︎現実でも頑張れ、勇者ルイン‼︎おしまい‼︎』
「…………いや、精霊王よ。無理やり終わり過ぎではないか??」
『息子にこれ以上殴られーーごほんっ。怒られたくないからな‼︎せめて怒られる前にキチンと締めておかねばーー』
『『『『せ〜い〜れ〜い〜お〜う〜⁉︎⁉︎』』』』
『⁉︎これはっ……大精霊達の声……⁉︎ハッ⁉︎精霊ネットワークでわたしと繋がっているから、夢の記憶がアイツらにも残ったか……‼︎逃げねば‼︎あっ、ナレーション、ご苦労だった‼︎』
大急ぎで逃げる精霊王と、般若のような顔でその後を追う大精霊達……。
一人残された吾は、なんともまぁ最後までぶっ飛んでおったな……と思いながら、台本を閉じた。
「以上。精霊と勇者伝説、コレが本当の閉幕である」




