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【コミカライズ・書籍化】伯爵令嬢はヤンデレ旦那様と当て馬シナリオを回避する‼︎  作者: 島田莉音
番外 ギャグコメレベルはMAXだよ、精霊と勇者伝説(笑)!《勇者と愉快な仲間達》
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またまたお仲間追加だと!?精霊と勇者伝説!《とうとう人間辞めたんか、お前……》


誤字脱字報告、ありがとうございます!とても助かります!

今後ともお助けいただけると、幸いです。


ほとんど今話と同じ内容だけど、一応《特別和訳版》も一緒に更新します。お好きな方をお読みください。


今後とも〜よろしくどうぞ( ・∇・)ノ






えーっと。

《ドラゴン、王女を誘拐する事件》を解決した私達は、山の麓にある村へと戻って討伐隊with冒険者達に事情を説明してからその場を後にしたわ。

ドラゴン、王女様と一緒に王都に向かったよと聞いたデルタ総帥が頭を抱えたのが印象的だったわね。合掌、南無三。

まぁ、そんな感じで。


旅を再開した私達が次に辿り着いたのは、もっっさもさと生い茂る森の中にある和風な里らしき場所。

今の今まで洋風ファンタジーな世界だったのに、いきなり着物とか木造の平家とかな和風スタイルになったものだから、驚いたわ。

そして、丁度、誰かが婚姻を行う日だったらしく。里の間を進む、長々と続く花嫁行列に遭遇することになったの。


ーーシャンシャン、シャンシャン。

鳴り響く鈴の音色。オババらしき人が葉っぱをブンブン振りながら、〝はんにゃ〜、ほんにゃ〜〟と呪文を唱える。祝いの品を持ちながら、オババの後ろに続く着飾った若い少女達。

そしてーー……。

屈強な男達に担ぎ上げられた沢山の花で飾られた神輿ーーの上に乗った死んだ目をした白無垢姿のイヴリン。

微妙にそんな気はしなくもなかったけれど。やっぱり巻き込まれていた彼女のとんでもない登場の仕方に、私はギョッとせずにはいられなかったわ。



「イ、イヴリン⁉︎」


私の叫び声が届いたのか、ハッと意識を取り戻したイヴリンはキョロキョロと辺りを見渡す。

その視線が少し離れたところに立ち尽くす私達を捉える。彼女の目が驚愕に見開かれる。

そして、イヴリンは大きな声で叫んだ。


「シ、シエラ〜ッ‼︎助けてくださいですぅぅ〜……‼︎ど、どうなってるんですかぁ、これぇ⁉︎⁉︎」


あ〜……。もしかしなくても気づいたらいきなり神輿の上だった、って感じかしら?

そりゃあ慌てるわ。私がイヴリンの立場だったら、同じ感じになるわ。絶対。

そんな風に同情マシマシな顔をしていたら……新しいカンペが出たらしい《風の大精霊》がカンペの内容を音読し出した。


『た、大変だぁ‼︎生贄にされそうな少女が助けを求めているよ‼︎勇者ルインは早速、彼女を助けることにするのだったーー……ふぇぇぇ⁉︎⁉︎いや、こんな軽く言うことじゃなくない⁉︎なんなの、この強制解説ぅ……‼︎』


風の大精霊(勇者の相棒)は自分が言った内容にギョッとて、パーンッと地面にカンペを叩きつける。

あぁ……ちょくちょく進捗状況を報告してくれるカンペって、私達が互いに姓で呼べないのと同じ強制系だったのね。

……って‼︎今はそんなのどうでも良いのよ‼︎問題なのは《生贄》ってところよ‼︎イ・ケ・ニ・エ‼︎急に物騒な話になってきたわね⁉︎

兎にも角にも……イヴリンを助けなくちゃいけないわ‼︎


「ルイン‼︎」

「分かってる‼︎救出するぞ‼︎」

「「はい(えぇ)‼︎」」


けれど、そんな私達の行動を感じ取ったのかーーゆったりと進んでいた花嫁行列がいきなり速度を上げる。


「ほんにゃー‼︎はんにゃー‼︎ほんげぇー‼︎」


ーーカサカサカサカサッ‼︎

オババの謎な鳴き声も早くなり、花嫁行列は虫のような動きで進む。それはまるで……ム◯デのよう。

ちょっと気持ち悪い光景に引いたけれど、イヴリンの悲鳴で私はハッと彼女に意識を向けた。


「イヴリンッ⁉︎⁉︎」

「ヒギャァァァァ⁉︎ジェットコースターですぅぅぅ⁉︎酔うぅぅぅう⁉︎」

『花嫁行列が急に速度を上げちゃった‼︎追いつけないと大変なことになっちゃう‼︎早く追いかけて‼︎』

「大変なこと⁉︎」

『イヴリン、死にます』


…………。

………………死ぬぅっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


「ルィィィィンッ⁉︎」

「分かってる、追うぞっ‼︎トイズ達は後から来い‼︎俺達は先行する‼︎」

「了解です、お気をつけて‼︎」


ルインは私をお姫様抱っこしたかと思えば、既に姿が見えなくなりかけていた花嫁行列を追う。

一瞬で流れていく景色。なのに、花嫁行列には追いつけない。

って‼︎ちょっ……ルインの全力疾走で追いつけないってどんな速度よ⁉︎イヴリンは大丈夫なんでしょうね⁉︎

このままじゃイヴリンが死んじゃう⁉︎⁉︎


「風の‼︎《強化ブースト》‼︎」

『いっきまーすっ‼︎』


ーーブワンッッ‼︎


「‼︎」


風の大精霊がふわりと光、強風が吹く。風を纏ったルインの走る速度が上がり、さっきとは比べ物にならなくなる。

ちょっ……こわいこわい怖い怖い怖い‼︎ジェットコースターよりも速いんだけどぉぉぉぉぉっ⁉︎


「見えた‼︎」


うっそぉっ⁉︎

追いつけるか分からない感じだったのに追いつけちゃったって……どんだけの速さよ⁉︎

カーレースよりも物騒な速さで行われた追いかけっこ。


「ほんげぇぇぇぇぇぇぇえっっ‼︎」

「ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎⁉︎」


けれど、それもいつかは終わる。


「「えぇぇぇぇぇぇっ⁉︎⁉︎」」


カーレースなんて例えちゃったからなのか……まるで峠を越える車のようにギュインっと曲がっ(カーブし)た花嫁行列。驚いたルインの足が止まる。それと同時に遠心力が作用して放り出されるイヴリン。


「あ」


彼女の思わず漏れてしまった声が、響き渡った。離れていても、イヴリンが固まったのが分かった。

だって……彼女の目の前にあるのは。いいえ、イヴリンが今から落ちようとしているのは。

底が見えないほどに深い深い谷ーー……。


『わーーーーんっっ‼︎』


でも、こういうヒロインのピンチにはヒーローが颯爽と現れるものよね……。

辺り一面に響いた獣(……?)の鳴き声。ダダダダダッと音がするほどの走る音。


『わわーーーーーーんっ‼︎』

「ひょっ⁉︎」


谷の壁を駆け上がって現れたのは、軽く人間の大きさを越す巨大な金色ワンコwith口元には咥えられたイヴリン。

あっ。イヴリンの目が死んでるわね。凄いぐらいの虚無顔だわ。

ワンコはシュピッと地面に着地したかと思えば、その場にイヴリンを離して(落として?)、ベロベロペロペロと凄まじい勢いで舐め始めた。榛色の瞳をキラッキラさせながら……。

それを見た私とルインは真顔になったわ。だって……ねぇ?仕方ないじゃない?イヴリンに対してこんなことするヒトなんて、一人しか思い浮かばないし。

それにーー……。


私達の知り合い(※騎神アダム)が、とうとう人間辞めて現れたのだから……。困惑するのは当然よね……。




*****



「はいはい、状況整理のお時間ですね。という訳でアダム、待て‼︎」

『わんっ‼︎』

(……なんだろう。何言ってんのか分かんねぇのに、現実よりもオレの言うことを素直に聞いてる気がすんな……)


イヴリンがほっぽり投げられた谷の近くにある、ちょっと開けたところで急遽情報共有会を開くことになった私達。

トイズ様とネッサ様も無事に合流して、かなりの大所帯で顔を合わせることとなったわ。

ちなみに、花嫁行列はいつの間にか姿を消していたわ。誰もそれに気づかなかったから……イベントが終わるとイベント関連のモノは勝手に消えるのかもしれないわね。

閑話休題。


「取り敢えず……シエラの言葉を変えるなら無事にイベント(?)を乗り越えたみたいですね。お疲れ様です、ルイン。シエラ」

「あぁ」

「えぇ」

「えとえと……イベント、とはぁ?」

『さっきの追いかけっこのことだよ〜‼︎花嫁行列から一定距離を維持しないとイベント失敗で、本当にイヴリンが死んじゃうところだったんだから‼︎』

「ひぇっ⁉︎ただでさえ目が覚めたら神輿で担がれてナニコレ状態だったのにっ……そんな危機的状況だったんですかっ、わたしぃ⁉︎」


何気(?)にこの世界に来て初めての命の危機に晒された人になったから……憐れみの視線がイヴリンに集まる。

だって……あの精霊王の所為で死にかけたとか、ほんっっとうに可哀想じゃない?あんな阿呆っぽいヒトの、多分何ッッッにも考えない突拍子な思いつきで殺されかけたってことよ?死因が精霊王って……この世で一番嫌な死に方じゃない?少なくとも私は嫌。

そんな私達の感情を感じ取ったのか……イヴリンは顰めっ面で呻き声を漏らしたわ。


「うぅぅ……なんか皆さんの視線でこの状況が大変よろしくないことが悟ってしまえますぅ……」

「まぁ……はい。面倒な状況なのは確かですよ」

「…………話を聞かない、という選択肢はありますかぁ?」

『ないよー‼︎だって二人もルインの仲間になるんだもん‼︎逃げられないよ〜?』

「アッ、嫌な予感ですぅ‼︎」


そんな訳で。逃げようとしたイヴリンを捕まえて……今、私達が置かれている状況を説明する。

イヴリンは私と同じ転生者だから、王道RPGみたいなことをさせられてると速攻で理解したんでしょうね。チラリッとこちらを見て、合図アイコンタクトを送ってきたから頷き返す。

最後に今までの冒険過程を説明して……あの和風な里に辿り着き、ここに至ったことを話したわ。


「成る程……そういうことでしたかぁ……。うぅぅ……本当に碌な状況じゃなかったですぅ……‼︎」

『わふわふわふ‼︎わふ‼︎わぉぉぉぉんっ‼︎』

「えぇ〜……?大丈夫ですかぁ?張り切り過ぎて逆に手間かけさせないでくださいよぉ?」

『わんっ‼︎』


…………えーっと。流石幼馴染兼夫婦ね……?

その犬語状態のアダム様と普通に会話が成り立つなんて……イヴリンじゃなきゃ無理だわ。

…………本当にちゃんと会話できてるみたいだけど。一体、どうやって会話してるのかしら?この二人。


「嫌ですけど逃げられないのは分かりましたぁ〜……。それでぇ?私達は何の役として勇者パーティーに参加することになるんでしょうかぁ」

「え?あぁ、ちょっと待っーー」


《神犬アダムと生贄イヴリンを仲間にしますか?》→《イエス・ノー》


「「「「「ブハッッッ⁉︎⁉︎」」」」」


ルインの目の前に表示された文章に、私達は思いっきり噴き出す。

ちょっと‼︎アダム様の職業(?)っぽい名称‼︎本当に〝犬〟ってなっちゃってるじゃない⁉︎職業ですらないわ‼︎

いや、確かに犬だけど‼︎サイズ感が明らかにおかしい巨大犬だけれど‼︎でも、こーいう時は神狼とかの方がメジャーじゃないの⁉︎

ついでにイヴリンの職業‼︎そのまんま(イ・ケ・ニ・エ)ッ‼︎

勇者、精霊術師、盗賊、鞭使いと続いて……なんで最後がこんなトリッキーなのよ‼︎無駄に精霊王っぽいの、ぶっ込んでこないで頂戴‼︎


「アッ。ここに色の薄い小文字で(神犬の)生贄(又は神犬の嫁)って書いてあるな……」


表示された文字をじっと見ていたルインが目を細めながら、生贄前後の文字を読む。

書いてあるから何?って感じね。それを聞いたところで生贄というパワーワードが強すぎて反応に困るわ。

……もう深く考えたら負けって感じがしてきたから、考える方を止めるわ。うん。


「神犬アダムと生贄イヴリンを仲間にする」



ーーぴっぴっろりんりんりん♪



《神犬アダムと生贄イヴリンが仲間になりました》


ネッサ様達の時と同じように、気が抜ける音が鳴って二人が勇者パーティーの仲間になる。

そしてーー……。


「疲れたから、今日はここで野営しよう。というかそろそろシエラと本格的なイチャイチャして精神的な疲労を癒やされたい。急がなくちゃいけないと思って控えてたけど、本気で我慢の限界だ。…………お前らもそうだろう?」

「………それはまぁ確かに」

『わふっ‼︎』


スンッと真顔で見つめ合う男性陣。

何か通じ合ったらしい彼らを見て、ネッサ様とイヴリンの頬が引き攣る。

…………私?ルインとイチャイチャできるなら、むしろ喜んでって感じだけど?

そんな混沌となり始めたこの場に、《風の大精霊》から爆弾が落とされる。


『あ、そうだった〜。みんな、ここが精霊王の夢の中だって忘れないでね〜?』

「え?あ、あぁ……忘れてないけど。急にどうしたんだ、《風の》?」

『鈍いなぁ、ルー君。ここは夢の中。目が覚めたら終わり。現実じゃないんだよ』

「…………うん?」

『つまりね?どれだ〜けイチャイチャしても、現実の身体には影響は出ないよ?』

「「『…………‼︎』」」

『まぁ記憶は残るし、夢で感じた感覚ぐらいは現実に影響出ちゃうかもしれないけど‼︎それを踏まえて()()()()ね‼︎』


ーー‼︎あ、ちょっと……やだぁ‼︎()()()()こと⁉︎

初心なネッサ様はまだ意味が分かってないみたいだけど、イヴリンの方は《風の大精霊》が言いたいことを理解したのか、勢いよくその場から走り逃げる。

……陸上選手もビックリな本気走りだったわね。でも、普通に捕まると思うわ。ワンコ相手だもの。


「はい、決定‼︎一応、何かあったら直ぐに駆けつけられるように……あまり離れ過ぎないように気をつけること」

「『はい(わんっ)』」

「解散‼︎」

『わわーーーーーーんっ‼︎』


ルインが解散を合図するや否や、アダム様がイヴリンが逃げた方向に走り去って行く。あっ、悲鳴が聞こえたわ。

トイズ様は「一緒に来てくれ、ネッサ」と紳士的に振る舞いながら、走り去ったイヴリン達の方を見て困惑しているネッサ様を連れて反対側の森へと消える……。


『ごゆっくり〜』


《風の大精霊》もそう言って姿を消し、残されたのは私とルインのみ。

私はこれから起こることを想像して、うっとりと笑みを浮かべた。

私もね?早くこの状況から解放されるためにって、我慢してたの。イチャつき始めたら際限なくイチャイチャしちゃって……精霊王の救出がとんでもなく遅れちゃうって分かってたから。

でも、彼と同じようにーー我慢できなくなっていたのも、本当。


「シエラ」


蕩けるような甘い声。熱を帯びた視線。頬を撫でる大きな手。

ゆっくりと唇が重なって、微かに唇を触れ合わせたまま。至近距離で彼が艶やかに微笑む。


「さてシエラ。俺とイチャイチャしようか?互いに溶け合うくらいに、ね?」


彼の首に回した腕。それが答え。



私は自らルインに口づけをして、思う存分愛し合ったわ。






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