RPGの醍醐味と言えば〜?な、精霊と勇者伝説!《端折ってるよ、イベント&クエスト》
よろしくどうぞ〜( ・∇・)ノ
盗賊なトイズ様と鞭使いらしいネッサ様を仲間にして《蓮の街》に帰ってきた私達。
取り敢えず領主館へと向かい、盗賊が改心したこと。ネッサ様と含めて仲間になったことを伝えると、領主様は簡単に納得して、気をつけて行くようにと私達を快く送り出してくれた。
…………本音を言うと。拉致した(?)加害者と被害者を一緒に旅させるなんて、よく受け入れられるわね?と思わなくもないけれど。
そこら辺は精霊王仕様のご都合主義が働いてるんでしょう。深く考えたら負けよ、負け。
という訳で早速旅の続きをーーとなったと思いきや。
そんな私達に待ったをかけたのは…………クエストという名の、雑用だった。
「この薬草を手に入れてきてくださる?」
「なぁ、わたしが狩りついでにーー」
「もうお年なんですから大人しくしたてくださいな、旦那様」
「うむぅ……」
どういう訳だか薬師と猟師の夫婦と化したレーフ侯爵夫妻から頼まれた、薬草採取依頼。
「最近、一角ウサウサが異常繁殖してるみたいなんだ。討伐してきてくれないか?」
鍛え上げられたムッキムキな身体。自力で討伐できそうなのにその手にあるのは鍬という……近衛騎士団長(農夫スタイル)からのモンスター討伐依頼。
「ひよこぉぉぉ……どこ行っちゃったの、ひよこぉぉぉぉっ……‼︎」
小さなエルフから頼まれた、猫探しならぬひよこ探し……などなど。
約三日間。私達はひたっすら動き続けた。だって、一定数のクエストを達成しないと、街から出られなかった(クエスト目的ならば特定の場所のみ行ける)んだもの。
本当、碌なことしないわね。精霊王……。
「はぁ……疲れた……」
「疲れたわね、ルイン……」
「大丈夫か、ネッサ」
「…………えぇ。大丈夫、ですわ」
『みんな、お疲れ〜』
街の中央にある広場のベンチにぐったりと座り込む。
気を利かせた風の大精霊が細やかな冷風を吹かせてくれたわ。ふぅ……風が気持ち良い。
「それで?今の状況はどう?風の大精霊」
ルインが胸元を緩めながら、そんなことを問う。
ちょっとルイン。ここは広場ーー沢山の人の目があるのよ?人前で私以外の人に肌を見せるようなことはしないで頂戴。イケメンの色気にやられた女性達が顔を真っ赤にしちゃってるじゃない。
と、ルインの首元の服を詰め詰めしていたら、風の大精霊がカンペを取り出して『あっ‼︎』と声をあげた。
『勇者一行のおかげで、悩める人達は救われたみたい‼︎彼らは更なる人助けのために、《蓮の街》を後にしたのであったーー……だって‼︎』
《蓮の街》から出られるようになったことを聞いた私はガバッと勢いよく立ち上がる。
そして、大きな声で出立を急かしたわ。
「よしっ、直ぐに移動するわよ‼︎この状況で追加クエストなんか発生したら、また足止め喰らっちゃうもの‼︎」
「「「また足止めっ⁉︎」」」
「あり得なくもないわ‼︎だから、そうなる前に行くわよ‼︎」
「「「は、はいっ‼︎」」」
私の気迫と言葉にギョッとしたルイン達は、大急ぎで《蓮の街》を後にする。
そして、時々モンスターを倒しながら精霊王がいるダンジョンに向かったのにーー……。
「おぉぉぉ‼︎ドラゴンに攫われた姫様を助けに、勇者一行がいらしてくださったぞぉぉぉ‼︎」
「これで一安心だぁぁぁ‼︎」
「良かったぁぁぁぁぁぁ‼︎」
ヤギがメェ〜メェ〜鳴いてるような、なんの変哲もない村に集まった軍人さん達と厳つい格好の冒険者達。
そんな彼らに捕まった私はスンッと真顔になったわ。
普通そうな、どこにである感じの村で強制イベント発生とか……‼︎
精霊王をっっ……本当に殴ってやりたいっ……‼︎
「あの馬鹿親父め……何度も何度も進行の邪魔しやがって……ただでさえ無関係な人達も巻き込んでるのに、どこまでやるつもりなんだっ……‼︎」
ルインもブチ切れモードになったのか、ドスの効いた声で精霊王への殺意を迸らせる。
私とルインの纏う空気が危険になってきたからか、トイズ様が慌てて村人に事情を聞きに行った。
その結果、分かったのは。
王都で暮らす王女様が悪いドラゴンに攫われてしまって、攫ったドラゴンの棲家がこの村の近くにある山だということ。
だから、この村は現在、王女様救出のための拠点となっていて……王女を救って国王から褒美をもらおうとする人達が、たくさん集まっているんですって。
これを聞いた私は思わずにはいられなかったわ。
まさかの攫われネタ二連続っ⁉︎……ってね。
ネッサ様がもうやったんだから、やらなくてもよかったじゃない。もうお腹いっぱいよ。なんで王女様も攫われてるの?
いや、まぁ……確かに?悪いドラゴンに攫われる王女様なんて王道でしょうけど。攫われネタをやるスパンが短すぎるし、二番煎じ感が無駄に強いわ。
でも、それでも私達は王女様を助けなきゃならないみたい。だって……。
「勇者殿。どうか我らの代わりに王女殿下をお救いしてくれ」
NPC化してしまった討伐隊リーダーデルタ総帥まで出てきちゃったんだもの……。
これ、逃げられないでしょ……。
とまぁ、そんな感じで。
死んだ魚のような目をしながらそのクエストを受けて、草木が一つも生えてないような荒れ果てた山を登ったわ。
でもね……この時点で気づくべきだったの。
いいえ、思い出すべきだった。
攫われた王女ーーそれが、誰で。
彼女が誰と結ばれたかを。
ーーパチーンッ……パチーンッ……。
「あっ、あぁんっ……‼︎だめ、だめですっ……‼︎ご主人様っ……♡」
ーーパチーンッ、パチーンッ……‼︎
甘やかな声と、鞭の音が鳴り響く。
「あぁ……可愛いな、クリスタ。もっと啼け」
「はぁいっ……♡」
険しい山道を悲鳴をあげながら登った私達の目の前に現れたのは、山の頂上に〝ドーーンッ〟と建てられた豪華な屋敷。
玄関扉の上の部分、建物の真正面二階にあるバルコニーでは……完璧に【規制】が入る光景が、広がっていて。
「何してるのよぉぉぉぉぉ⁉︎」
「うわぁ……何してんだ、お前ら……」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ⁉︎」
「ネッサに変なモン見せんじゃねぇぇぇぇぇ‼︎」
年齢制限という言葉が真っ先に思い浮かんだ私の叫びと、人目に晒されるような場所で開けっぴろげにやらかしてる二人にドン引きしたルインの声と、初心なネッサ様の悲鳴と、トイズ様の怒鳴り声が響いたのは……ある意味、必然だったわよね。
【自主規制:只今、映像が乱れております。】
『少し待ってね〜‼︎』(※風の大精霊がお花畑を飛んでいる代替映像が流れております)
……。
…………。
………………ごほんっ。
こんな所で見ることになるとは思わなかった、まさかまさかの十八禁乙女ゲームらしい光景を強制終了させた私達は……屋敷の応接室で顔を見合わせていた。
目の前のソファに座っているのは金髪碧眼の美少女ーードラゴンに攫われたクリスタ王女。
彼女の隣にいるのは爬虫類のような金眼が特徴的な……アラビアン風な衣装を纏った、竜の頭ーー……。
服から覗く肌という肌が丸っと全て鱗で覆われた(リアルな)竜頭系竜人は、鋭い牙が生えた口元に笑みを浮かべながら、私達に声をかけてきた。
「やぁ、初めまして。わたしはシュラ。クリスタを攫ったドラゴンだ。君らはわたしを討伐しに来た勇者御一行かな?」
「なっ⁉︎シュラ様は討伐させませんわよ⁉︎わたくしはシュラ様に惚れて……自ら進んでついて来たのですから‼︎」
「クリスタ……」
「シュラ様……」
「「愛してる」」
うっとりとした顔で見つめ合う王女と竜人ーーもといシュラ皇子。
そうだったわ〜……。この王女様、隣国への留学でこの皇子に調教されちゃったのよね……。
でも、何気に初めましてなシュラ皇子が二足歩行する(リアルな)竜の姿で登場するとは思わなかったわ。…………現実は、ちゃんと人よね??
……。
…………。
…………えっと、とにかく。この二人は現実でも両想い(?)で、精霊王の夢の中でも両想いになったってことでいいのかしら?でもって、周りからは王女様がシュラ皇子に攫われたと思われてるってこと?
…………なんて傍迷惑な……。
これまた〝あるある〟すぎて、逆に驚く気力もなくなってしまったわ。
……でも、どうやらそう思ったのは私だけではなかったみたい。
「そう……。そういう、こと。なら、別に討伐とかしなくていいか……」
「えぇ。村に集まっている討伐隊の方々に事情を説明して解散してもらって……。加えて、王女殿下は一度ご帰還していただき。ご家族ともキチンとお話しなさった方がよろしいかと。本件はそれなりに大事になっていますし。きちんと挨拶とかなさってから、調きょーーごほんっ。イチャつかれた方が安心できると思いますよ」
「あぁ、うん。そうだね。結婚の挨拶だと思って、一回戻った方が良いんじゃない?そっちの方が楽だと思うよ」
ルインとトイズ様も呆れ顔をしながら、雑に話をまとめかかる。
分かる、分かるわ〜。とっとと終えたいわよね‼︎
ちなみに……ネッサ様はさっきの光景が刺激的すぎたのか、顔を真っ赤にして呻いていたわ。ちょっとトイズ様……初心な反応をするネッサ様を見て、ニヤニヤしてるんじゃないわよ。隠そうとしてるみたいだけど、隠せてないわよ。もう少し紳士の仮面を維持しておいて‼︎
まぁ、トイズ様のニヤニヤは置いといて。
そんな二人の説得(?)にシュラ皇子は「ふむ」と顎に手を添える。そして、チラリとクリスタ王女を見てから、視線をルイン達の方へと戻した。
「……別に討伐隊が組まれようが壊滅させれば問題なきと思っていたが。何度も討伐隊を送られる方が面倒か。分かった。君達の助言に従おう」
「シュラ様……」
「クリスタ。共に来てくれるな?」
「勿論ですわ‼︎例え、地の果てでも‼︎」
「「「「はっ⁉︎」」」」
そう言うなり、クリスタ王女を抱き上げてバルコニーから飛び出して行くシュラ皇子。
私達が駆け寄った時には、遥か上空を飛んでいく巨大な竜の後ろ姿しか見えなくて……。
「…………えっ?いや、早く解決するには越したことないけどさ……?えっ?まさかもう……山下り……??」
こうして、王女様のドラゴン誘拐事件は見事に解決したのだけれど……。
ルインの言う通りーーあんなに時間をかけて登った山を、もう下って行かなきゃいけないという現実に……私達は疲労に満ちた溜息を零さずにはいられなかったわ。




