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【コミカライズ・書籍化】伯爵令嬢はヤンデレ旦那様と当て馬シナリオを回避する‼︎  作者: 島田莉音
番外 ギャグコメレベルはMAXだよ、精霊と勇者伝説(笑)!《勇者と愉快な仲間達》
82/89

何故か続くよ、精霊と勇者伝説!《仲間を集めてみよう!》


楽しんでいただけてますかね〜?


誤字脱字報告、ありがとうございます!

今後もよろしくお願いします〜m(_ _)m







ーーブチ切れていたところで、話は進まない。


ということで、私達は渋々‼︎それはもうほんとーに嫌々と、森から出発することになったわ。



森の中に出来ていた獣道を、気をつけながら進んで行く。

隣を歩いていたルインは、「そうだ」と足を止めぬまま、こちらを見た。


「一応、改めて確認しておこう。俺は精霊王を助ける勇者(?)ってヤツで……」

「あぁ……私は勇者の仲間である精霊術師らしいわ。まぁ、殆ど現実と変わらないわね」

『そしてわたしは、勇者の相棒こと勇者パーティーの案内役って役割になってるよ〜‼︎』


改めて考えると、本当にRPGっぽいわね。

勇者には相棒は付き物だし、仲間に魔法使い(=精霊術師)がいるのも当然。王道って感じだわ。

となると……他に仲間になるのは、治癒師とか盗賊とか、そういったポジションの人達になるのかしら?どんな人が仲間になるのか、少し楽しみね。


「成る程ね。仲間を集めろってことだったけど……他の仲間はどこにいるんだろうね……?」

『そこはわたしの出番だよ〜‼︎』


ルインの呟きに、頭上を飛んでいた風の大精霊が元気よく挙手をする。

彼女はポケットから再びカンペを取り出すと、ズビシッと私達が歩く、獣道の先を指差した。


『次の仲間はこの道の先にある街にいるよ‼︎どうやら二人、仲間になるみたい。お願い事もされるかもしれないね‼︎頼まれたら勇者として、助けてあげようね‼︎……だって』

「…………いや。情報くれるのはありがたいんだけど……なんでそんなに詳しいの?実は親父と共犯だったりする?」

『ぎゃぁぁ⁉︎そんな訳ないじゃん‼︎わたしも巻き込まれてる側‼︎被害者側だよ⁉︎』

「だって……親父の夢の世界なのに、無駄に詳しい……」

『そんなの知らないよー⁉︎勝手に知識が出てくるんだもん‼︎自分でも〝なんでわたし、知ってんの⁉︎気持ち悪っ‼︎〟とか思ってるけど、早く起きるためにも使えるモノは何でも使うしかないじゃん‼︎なのに、精霊王様と共犯とかっ……あんまりだよー⁉︎⁉︎』


若干半泣きで『冤罪だー‼︎精霊王様と共犯なんて嫌だー‼︎』と心底嫌そうに叫ぶ風の大精霊を見て、一瞬共犯を疑ってしまったルインは申し訳なさそうな顔になる。

あまりの哀れさに、彼は慌てて謝罪を口にした。


「ご、ごめんな。疑って。でも、こんな状況じゃ……疑ってしまうのも仕方ないと思わないかな?風の大精霊だって、こちらの立場だったら……多少疑うだろう?」

『うぐぅ……それは確かにぃ〜……。わたしだったら、もっと力技で情報吐かせてたかも……』


疑うんかい。

というか、力技で情報吐かせるとか……貴女の方が数倍乱暴ね⁉︎

ルインは「そうだろう?」と言いながら、小さな風の大精霊の肩にポンっと手を置いた。


「でも、今の反応で風の大精霊も俺らと同じ被害者だって分かったよ」

『本当……?』

「あぁ。なんでそんなに詳しいのかは、相変わらず謎だけど。でも、とっとと起きて親父を殴るために。そのよく分からない力を貸して欲しい」

『……うんっ‼︎任せて‼︎わたしもなんでこんなに詳しいのか分からないけど‼︎便利なのは変わらないもんね‼︎』

「そうだね」

『だから……わたし、勝手に出てくる知識が不気味だとも思うけど……それでも頑張るよ‼︎その代わり、わたしの分も、精霊王様を殴ってね‼︎』

「勿論だよ、風の大精霊」


ーーガシッ‼︎

ルインと風の大精霊は〝殴ろう、精霊王〟の目標を掲げて、強く握手を交わす。

…………私はそれを、大人し〜く横から見守っていた。


RPGに出てくる勇者の案内役は旅に役立つアドバイスやヒントをくれるものだって知っていたけれど……折角上手く(?)まとまったところでそれを言うのは、邪魔でしかないものね。


言うタイミングを逃してしまった所為で〝拗れたかしら……⁉︎〟って内心焦っていたけれど。

上手くまとまったから良いってことにするわ、えぇ。


…………仲違いとか起こさなくて……本当に良かったわ……。







そんなこんなで辿り着いた、夢の世界での初めての街。

森を抜けた先に広がった美しい光景に、私達は目を奪われずにはいられなかった。


「まぁ……‼︎」

「これは……‼︎」

『すっご〜‼︎』


キラキラと輝く大きな湖。

その中央には美しい街が広がっており……街を囲う純白の外壁から、サラサラと水が流れ出ている。

街に入るための大橋の前に立った私達は、驚きの声を漏らした。


「凄いわね、ルイン……」

「そうだね、シエラ……」

『この街は湖の真ん中にあるだけじゃなくて、街の中にも水路が張り巡らせられててね〜‼︎湖にも水路にも蓮の花が浮かんでるんだよ〜‼︎だから、この街の名前は《蓮の街》って言うんだって‼︎』

「へぇ。親父の夢の中の話なのに、ちゃんと街の名前あるんだ……」

『変なところをこだわってるよね〜』


あら?なんか今の会話、ちょっと引っかかる感じがするわね……?でも、それがなんなのかが分からない……。

この引っかかりは何かしら?と首を傾げている間に、ルインに手を引かれて街に入るための列へと並んでいた。

目の前になった街は、遠目で見たよりも大きい。まぁ、私達が暮らす王都ほどではないけれど。それでも、充分な大きさね。

賑やかな声と音楽が聞こえて、知らない場所を旅するドキドキ感が湧き上がってくる。

そうして街に入る順番が回ってきたところで、私達ーーいいえ。ルインはとうとう、勇者として声をかけることになったわ。


「そのサークレット……もしや貴方は勇者様では⁉︎」


大橋の先、大門の前で警備をしていた兵士ーーもとい、我がエクリュ侯爵家の執事ギークとコックであるハンスの姿に、私達は思いっきり噴き出す。

ルインはゴホゴホッと噎せながら、ギークとハンスを交互に見た。


「ちょっ、なんで君らが⁉︎はぁ⁉︎」

「確かに間違いない‼︎領主館に伝えてくる‼︎」

「あぁ、頼んだぞ‼︎ハンス‼︎」

「えっ⁉︎ちょっと⁉︎待って頂戴、話を聞いてぇっ⁉︎⁉︎」


なんて私達の訴えも虚しく……。私の制止を無視して、ハンスは街中へと消えていく。

そこから先は途轍もなく早かったわ。あれよあれよと言う間に、私達は《蓮の街》中央にある領主館へと連れて来られていた。

そして、そこで顔を見合わせた人達に……またもや噴き出す羽目になったの。


「わたしがこの《蓮の街》を始めとした領地を収めているネイサンという者だ。よくぞいらした、勇者一行殿」

「「………………」」


豪華な執務室。中央奥に鎮座する執務机に座っているのは……どこからどう見てもネッサ様の父親であるネイサン・ロータル侯爵にしか見えない。

私はそこでやっと、《蓮の街》という名前で感じた引っかかりを理解した。

ロータスとロータルが似てるから……引っかかったのね……。これぞ正しくフラグってヤツだったんだわ……。

遠い目をしている私を無視して、話は進んでいく。

ルインは早速、勇者として領主から依頼を頼まれているようだった。


「実は……我が娘が盗賊ハイエナに拐われてしまったんだ……」


やっだー‼︎またもや察しちゃったわー⁉︎


「どうか我が娘を盗賊の下から救い出してくれないだろうか……?」

「………」


でしょうねー。そう言ってくると思ったわ。本当、王道展開ね。

でも、ロータル侯爵の娘ってことは……ネッサ様でしょう?

その彼女を誘拐したのはルインの補佐官でもある三大危険人物が一人《ハイエナ》のトイズ様……。

…………両想いの二人だから、問題ないのでは?

あっ。ここは現実じゃないから、問題ないとも言えないのかしら?

それでもあの二人ならどんな状況であろうとどうにかしてしまいそうな力強さがあるのよね。やっぱり問題ない気がしてきたわ。


「あの、ロータル侯爵……あの二人なら問題ないのではーー……」


ルインも同じことを思ったのか、それを口にしようとする。

けれど、言葉を紡ぎ終える前に。私達は耳を疑わずにはいられない状況へと陥った。


「実は……我が娘が盗賊ハイエナに拐われてしまったんだ……」


…………え?


「どうか我が娘を盗賊の下から救い出してくれないだろうか……?」

「「…………」」


私とルインは顔を見合わせる。

暫く黙っていると、ロータル侯爵はまたもや同じ台詞を繰り返し始める。


「実は……我が娘が盗賊ハイエナに拐われてしまったんだ…… どうか我が娘を盗賊の下から救い出してくれないだろうか……?」


ま・さ・か・の‼︎NPC扱い⁉︎⁉︎⁉︎

ロータル侯爵は延々と、延々と同じ台詞を繰り返し続ける。

いっそ狂気すら感じるその姿にドン引いていると、風の大精霊が頬を引き攣らせながら耳元で囁く。


『これ、受けないと永遠に終わらないらしいよ。ルイン君、引き受けますって言って‼︎』

「ひ、引き受けます‼︎」

「おぉ、そうか‼︎ありがとうございます、勇者様‼︎ハイエナの根城はここにあります。どうか我が娘を救い出してください‼︎」


そこから先も最初のように早かったわ。

地図を持たされ、支度金を持たされ、領主館の前にポポイッと放り出された私達。

ルインは若干遠い目をしながら、呆れ様子で呟いた。


「誘拐された場合って初動が大事なのに……根城も分かってんなら、自分達で助けられるんじゃ……?」

「……ルイン。ルインの言ってることの方が正しいけれど、これはほら……。精霊王が望む展開シナリオだから……」

「……改めて……面倒くさいなって、思っちゃったよ。シエラ」

「そうね……面倒くさいわね……ルイン……」

『本当にねぇ〜……』



そう会話を交わしつつ、全員が遠い目をしながら空を見上げる。

陰鬱な空気を纏う私達に反して、見上げた空はどこまでも晴れ晴れとしていたわ……。






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