第9.5話 後日余談、魔族と女軍人のファーストコンタクト
お久しぶりです!
タイトルだけで見るとまだ二人の話が続きそうでしょう⁉︎ でもこれ、単発話です(笑)
ごめんねm(_ _)m
まぁ、その代わりに……このシリーズの第四弾が始まります!
第四弾タイトルは……『捨てられエルフはヤンデレ保護者と生贄シナリオを回避する‼︎』です!
ぶっちゃけ、タイトル通りなので……敢えてあらすじは載せません(笑)実際に読んでみるまでのお楽しみってことで!
連載開始は来週、9月14日(月)の予定。
皆様、またよろしくお願いしますね!
では、魔族メノウ視点で始まります!
はっきり言って、あたしの扱い酷いと思う。
昨日の雨が嘘のように、今日の空は晴れ渡っていて。
あたしは泥だらけになりながら、訓練場(?)の地面に転がってる。
こうなっている理由は簡単。
ドラゴンスレイヤーことルイン・エクリュ中佐と騎神ことアダム・ネルック(ちょっと脳筋すぎて呼び捨てになってるわ)の模擬戦に付き合ってるからよ。
いや、まぁ……模擬戦に付き合うのは仕方ないの。
自業自得だし、あたしに与えられた罰だから。
本当は奴隷落ちしてもおかしくないことしたんだもの。
これに付き合う程度で済んでるんだから、文句を言っちゃいけないんでしょうね。
でも……‼︎
でもよ⁉︎
流石に連日(一ヶ月連続模擬戦中)はキツイものがあるわよっっっ‼︎
どんだけこの人達、体力有り余ってんのよぉぉぉっ‼︎‼︎
「あはははっ‼︎」
「本能に呑まれるな。攻撃が単調になって、読まれるぞ」
「うぐっ……‼︎」
ちらりと視線を横に向ければ、エクリュ中佐に叩き潰されて泥を跳ねさせながら地面に撃墜するアダムの姿。
…………うっわっ……いつ見てもエッグい……。
なのに、笑ってるアダムのドMっぷり……。
クレイジーワールドだわぁ……。
そんなことを考えている中、あたしの顔に影ができる。
横に逸らしていた視線を上げると……そこには、一人の軍人がいたわ。
「…………大丈夫ですか」
ズタボロ+地面に転がってる所為で泥だらけ+引きつった顔をしているであろうあたしを心配そうな顔で見つめながらタオルを差し出すその人。
茶色の短髪に、低めの声……普通な顔立ち。
あぁ……この子ね。
ずっとあたしを見てたのは。
「…………タオル、借りていいのかしら?」
「はい。余りにも、汚れているようでしたので」
「そうね。昨日は雨が降ったから、余計に汚れちゃったもの」
あたしは身体を起こして、タオルを受け取り頬を拭く。
そして、にっこりと笑って問いかけたわ。
「で?ずっとあたしを見ていた貴女は誰なのかしら?」
「っ……⁉︎」
彼女はその言葉にギョッとして……バツが悪そうな顔をする。
「…………いつから、お気づきで?」
「…………割と最初っからよ。流石のあたしもあんなに熱烈に見つめられてたら、気づくわ」
模擬戦が始まって少し経った頃。
いつからか色んな視線を感じるようになった。
まぁ、ドラゴンスレイヤーと騎神を相手にしてるんだもの。
好奇心から見ている人とかもいたんでしょうね。
でも、彼らが起こす騒ぎはある意味日常の一部だったのか……それは時間が経つごとに慣れへと変わり、向けられる視線は減っていって。
最後に残ったのは、この子の視線だった。
面白がるような雰囲気でもない。
心配するような、観察するような、困惑するような気配。
流石にあたしから接触したら困らせちゃうかと思って近づかなかったけれど……そちらから接触してくれるなら、話は別。
あたしはこの機会を逃すまいと、彼女に声をかけ続けたわ。
「んで?あなたは誰?あたしはメノウって言うんだけど」
「………あっ……失礼しました。私はジャクリーン・シャカンと言います」
「あら、可愛い名前ね」
「かわっ⁉︎」
「で?なんでずぅーっとあたしを見てたの?」
〝可愛い〟なんて言われ慣れてないのか、ジャクリーンは顔を真っ赤にして口を開閉させる。
だけど、少しして落ち着いたのか……目を逸らしながら、あたしの質問に答えたわ。
「………その……貴方は……目立つので」
「ふぅん?」
この子、嘘つけないのねぇ。
顔にはっきりとそれ以外の理由がありますって出ちゃってるわよ。
でも、上手く説明できないって感じかしら……?
そんなことを考えながらも、あたしは茶化すようにニヤリと笑う。
「やだわ〜。てっきり、あたしに惚れちゃったのかと思ったわ〜」
「…………惚れっっっ⁉︎」
ぶわりっ‼︎‼︎
一瞬で赤くなった彼女の顔と、涙目になった瞳。
あまりにも初心な反応に、思わず面を食らってしまう。
…………というか、何故かそんな反応をされたこっちが小っ恥ずかしくなるんだが……?
「いや、あの、そのっ……確かに見てたんですがっ……私、惚れたとかそのっ、そういうんじゃなくてっ……あのっ……‼︎」
面白いぐらいに動揺するジャクリーン。
あたしも思わず、変な感じになってしまう。
「あ、あぁ。うん、落ち着け。分かったから、うん」
「〜〜〜〜っっっ‼︎失礼しますっっっ‼︎」
「えっ⁉︎逃げたっ⁉︎」
ジャクリーンは完全にテンパったのか、全速力で走り去ってしまう。
こちらのことを一切放置して。
思わずポカンと固まるあたし。
だけど……徐々に彼女の反応が面白くなってきたあたしは笑い声を漏らしながら、お腹を抱えたわ。
「やっだ、面白すぎ。興味が湧いちゃったじゃない」
この日から、あたしはジャクリーンと積極的に関わっていくことになる。
その先に……夫婦になる未来が待っていたことを、その時のあたしは知らなかったわ。




