第9話 悪役令嬢にならない彼女は、狡いハイエナと幸せに生きていく
おしまーい‼︎
もっとイチャつかせようかと思ったけど、無理だった‼︎
まぁ、イチャつかせたくなったら、書き直すor追加書きます。
では、解説は後書きに‼︎
よろしくねっ☆
※番外編第0話、第1話のタイトル変更
キラキラと左の薬指で輝く、オリーブ色の宝石がついた指輪。
プロポーズの後、あの美しい湖畔で渡された愛の証。
わたくしは手の平を日に翳しながら、その指輪を見つめ……頬を緩ませたわ。
「嬉しそうですね、ネッサ」
「あら。嬉しいに決まっているでしょう?貴方からのプレゼントだもの」
「……………そこまで喜んでもらえるなら、贈ってよかったです」
あのプロポーズから次の休日。
わたくしとトイズ様は初めてのデートの時に訪れたカフェに、再度訪れていた。
目の前に座ったトイズ様は、わたくしの姿を見て嬉しそうな顔をする。
けれど……ほんの少しだけ頬を赤く染めながら、テーブルに肘をつき口元を手で隠したわ。
「でも、僕の前でそうするのは止めてくれません?なんか、嬉しい反面恥ずかしくもなるんで」
トイズ様はそう呟きながら、そっと目線を逸らす。
…………どうやら、自分が贈ったモノにわたくしが喜ぶのが嬉しいけれど、そんなに喜ばれると少し恥ずかしくなるみたい。
でも、わたくしはにっこりと笑って拒否したわ。
「うふふっ、嫌よ?恥ずかしがるトイズ様が可愛いんだもの」
「……………はい?」
「自分より歳上の婚約者が、わたくしの言葉、行動で慌てたり頬を赤くしたりするのって……とっても気分が良くなるの」
「………………はぁっっっ⁉︎」
トイズ様はさっきよりも顔が赤くなる。
あぁ、いつも飄々としている彼を翻弄できるのはわたくしだけでしょう。
彼のこんな顔、見れるのはわたくしだけでしょう。
こういう気持ちを優越感、と言うのね。
「ふふっ……女は男を転がすぐらいが丁度いいってお母様に教わったけれど、その通りね」
「いや、お前の母親は娘に何を教えてるんだ」
「とっても楽しいわ」
「お前っ、今、すっごい悪い笑顔を浮かべてるぞっ⁉︎」
「ふふふっ。そうね……わたくし、本当は悪い子なんだわ」
トイズ様はわたくしの言葉の意味が分からないのか、キョトンとした顔をする。
けれど、わたくしはそれを気にせずに続ける。
「だってね?こんな気持ち、初めてなの。やっと婚約者になれたからか……元々、わたくしもエクリュ侯爵に負けないぐらいに病んでいるのかは分からないけれど……。わたくしは貴方を翻弄できることが楽しくて、嬉しくて、どうしようもないわ」
にっこりと微笑むけれど、自分でも分かるくらいに今のわたくしの笑顔は歪んでいる。
「でも……貴方がとっても好きだから。凄く愛してるから。貴方がわたくしから離れようとしたら。他に好きな人ができようものなら、きっと滅茶苦茶にしちゃうと思うの」
トイズ様と結ばれた日から、漠然と胸の中に滲んだ不安感。
これが何かは分からない。
けれど、本能が囁く。
わたくしはーーーー恋に狂う〝悪役〟なのだと。
「だから、わたくしを本当の悪い子にさせないでね」
この不安を誰かに話せたら少しは心安らぐのかもしれない。
けれど、本当に漠然としすぎていて……言葉にすることも上手くできなくて。
こんな風に言うしかできない。
「………………」
トイズ様はわたくしの言葉を聞いて、大きく目を見開きながら黙り込む。
そして……その頬を、耳を、首を……というか、全身が湯気が出るんじゃないかってぐらいに赤くしながら、ガンッッッ‼︎と勢いよくテーブルにおでこを叩きつけたわ。
…………えっ……痛そう……。
「…………なんだ、その殺し文句ぅ……」
彼は呻くように呟くけれど、わたくしは首を傾げずにいられない。
「…………殺し文句だったかしら?」
ただの物騒な言葉でしかなかったと思うのだけど。
しかし、ガバッと勢いよく顔を上げたトイズ様に睨まれて、わたくしはむぐっと黙ったわ。
「…………殺し文句だろ。だって、オレの他人に見せない一面を見て喜んでるだけだし。もしオレが他の女と親しくなれば……ネッサはおかしくなってしまうほど、オレが好きだって言ってるだけじゃないか」
「………………」
わたくしはそう言われて、じわじわと頬……というか、全身が熱くなっていく。
………まぁ、えぇ。
わたくしの言葉の簡略化に間違いはないけれど。
なんかっっ、無駄に恥ずかしいわねっ⁉︎
「ネッサ」
「はっ、はぃーーーー」
チュッ。
「っっっ⁉︎」
テーブルに身を乗り出しながら、わたくしの唇に軽く彼の唇が触れる。
至近距離で絡まった、熱を帯びた彼のオリーブ色の瞳。
他人の目があるとか、どうしてこんなところでとか色々と文句を言いたくなるけれど……彼の蕩けるような笑顔で、わたくしは言葉を失ったわ。
「オレは一生、お前に捕らわれたままだよ。だから、お前は悪い子にはならない」
「…………そんなの、分からないでしょう?」
「(他の女に目を向ける気なんて微塵もないから自信があるんだが……それを言っても信用はならないか)……まぁ、一生かけて証明していくってことで」
トイズ様は意地悪そうな笑顔を浮かべながら、そう告げてくれる。
じわりと滲んでいた不安感が、その笑顔に、その言葉にどこかへ飛んでいくようで。
わたくしは何故か泣きそうな気持ちになる。
ーーーーあぁ、きっと……わたくしは悪い子にならないで済むわ。
「トイズ様」
「どうした?」
「ありがとう。大好きよ」
「…………オレも、大好きだ」
そう言って微笑みあったわたくし達は、きっと誰が見ても幸せそうな恋人同士に見えたことでしょう。
叶うことなら……彼と共に、ずっと幸せに生きていきたい。
いいえ、違うわね。
わたくしは、これから……狡いハイエナと幸せに生きていく。
ネッサは前世、乙女ゲーム云々は知らなかったけど……本能的に不安感(悪役令嬢になるんじゃないかって)を感じていたということです。
分かりづらいね、ごめんね。




