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第7.8話 ドラゴンスレイヤーですが、地味にいいように使われてます(笑)


……何故か、ネッサ目線にならずルイン目線というな。


本編主人公シエラ差し置いて、その旦那目線って何⁉︎

でも、なんか気づいたらこの話ができてるしっ……‼︎


いい加減、番外編主人公ネッサ(?)目線書けやと思う人もいるかもですが、よろしくねっ‼︎










「ねぇ、ルイン?フェンネル少尉はまだ動き出さないの?」





欠けた月が薄っすらと姿を見せ始めた夕暮れ時。

屋敷に帰って直ぐに玄関まで迎えに来てくれながら、そう聞いてきたのは……俺の愛しい妻であるシエラ。

葡萄酒色ワインレッド翡翠エメラルドのオッドアイに真剣な光を宿して。

お帰りと言うよりも先にそれって。

…………俺は少し拗ねた気分になりながら、こくりと頷いた。


「……俺が一言言ったから、今夜にでも動き出すよ」

「そうなの⁉︎なら、直ぐにネッサ様とフェンネル少尉は婚約するわね‼︎」


シエラは嬉しそうに笑うが、俺は益々拗ねた気分になる。

ここ最近、シエラは友人であるロータル侯爵令嬢のことばっかり考えてる気がするんだよね……。

なんというか……気に喰わない。

そんな俺に気づいたのか。

彼女は俺の顔を見てキョトンとしながら、僅かに膨らんだ頬をツンツンと突いてきた。


「ルイン?なんで拗ねてるの?」

「そりゃ拗ねるでしょ。俺のことより、友人のことを優先するとか」


……………嫉妬しない方が無理だよなぁ……?


「ふふふっ。相変わらず可愛いんだから」


俺の本音を見抜いたのか……蕩けるような笑顔を浮かべながら、俺の頬を撫でる彼女の手。

白くて、小さくて……温かくて。

ほんの少しだけ心の中で滲んだ仄暗い感情が、その温もりで簡単に霧散する。


「ルインが私の一番だって分かってるでしょう?」

「それは疑ってないよ?でも、嫉妬はまた別だよ」


トイズとロータル侯爵令嬢がいつまでも結ばれないと、いつまでもシエラが二人のことを考えそうだから……俺はトイズに一言言ったんだ。

トイズのためじゃない。

揺るぎなく、自分のため。



シエラに俺のこと、もっともっと考えて欲しいから。


余計な人に向ける感情を、少しでも俺の方に向けて欲しいから。



だから、俺はトイズにとっとと動き出すように発破をかけた。


「もう。本当に、この旦那様は独占欲が強いんだから」


………とか言っておきながら、シエラの瞳には仄暗い恍惚とした光が宿っていて。

………あぁ、可愛いなぁ……。

俺がシエラに病んだ愛情を捧げていることはもうどうしようもないことだけど。

シエラの中にも歪んだ愛情があることに……俺の重い愛を受け止めてくれることに嬉しさを隠せない。


「ルイン。私がネッサ様を気にかけるのは……彼女が()()()()()()()からよ」


シエラは転生者というものらしい。

異なる世界の……前世記憶を持ち、この世界で生まれ変わった。

前世の世界では、この世界はオトメゲームとかいう恋愛シミュレーションだったらしいけど……シエラは当て馬令嬢、ロータル侯爵令嬢は悪役令嬢だったとか。


「でも、私達が関わったことで……ネッサ様は悪役令嬢とは言えなくなったわ。だけど、強制力が怖いの」


シエラは物語通りになってしまう力……強制力というのをとても恐れてる。

俺がシエラ以外の人を好きになってしまうんじゃないかって。

自分は当て馬になってしまうんじゃないかって。

………そんなこと有り得ないのに、不安が拭えないみたいだ。



「今後、気づいたら私は当て馬になってしまっているかもしれない。ネッサ様も自分の意思に反して……何もしてなくても、悪役令嬢扱いされちゃうかもしれない。だからね……そうなってしまう前に、ネッサ様はネッサ様だけの大切な人と結ばれて欲しいの。自分の味方だと思える人が側にいてもおかしくない環境にしてあげたいの。お節介だって分かってるけれど……私はこうしてルインと結ばれたから。結ばれたことで、私の隣に貴方がいるのが当然となったから……かなり不安が解消されたのよ?だから、ネッサ様にもネッサ様の好きな人(フェンネル少尉)と結ばれて欲しいのよ。だからね、ルイン。あの二人に協力してあげて」



…………あー、もう。

こうまで言われたら、俺は何も言えないよ。

というか……首っ丈である愛しい妻にそんなこと言われたら、最初っから俺に拒否権はない。

それに……。


「まぁ……俺も協力するのはやぶさかではないよ」

「……そうなの?」

「そうだよ。だって、ロータル侯爵令嬢と会わないトイズは面倒くさいから。トイズの仕事パフォーマンスを向上させるために、ロータル侯爵令嬢と結ばれてもらわないとね」

「あ、そういう理由なのね」


シエラは苦笑する。

ごめんね、トイズのことを思ってじゃないんだ。

俺の中にあるのは基本的にシエラのことばかり。

それが異常だって理解はしてるけど……クソ親父に付与されたヤンデレ属性ってのは、これが普通だから仕方ない。

まぁ、だとしても。

シエラ以外ではトイズとアダム、ロータル侯爵令嬢……後は屋敷の使用人くらいはちょっとは気にかけてるよ。

まぁ、トイズに協力する理由は……ロータル侯爵令嬢と拗れてトイズが無能になったら、書類仕事が滞るからだって理由だけど。

普段が有能だから、恋愛に惚けてポンコツ化されたら……仕事が面倒くさくなる。

実際に少しの間会ってなかっただけで、結構酷かったし。



だから、俺が協力することで……二人が無事に結ばれるなら。


協力するのも吝かではないんだ。



「ふふふっ。ルインも素直じゃないわねぇ?」

「なんのことかな?」

「なんでもないわ。さぁ、ご飯にしましょう」


シエラはふわりと笑って俺に手を差し出す。

その手を握り返しながら……俺達は食堂に向かうのだった。





まぁ、そんなこんなで。

その日の夜に行方不明事件はハイエナの手で解決に導かれ……。




翌日には、何故か事件の犯人(?)と模擬戦をすることになって。



ついでに……俺はトイズからロータル侯爵令嬢にプロポーズする場所への転移をお願いされて、それを了承するのだった。





…………なんか、協力というよりはいいように使われてる気がしたけど……深く考えたら負けな気がした。うん。







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