第7.5話 魔族からの祝福を貴方達に
ネッサ目線じゃなくて、何故かメノウ目線というな。許しておくれ。
諸事情につき、明日は更新できないかもしれません。
では、よろしくどうぞ‼︎
あたしは魔族のメノウ。
いろんな国を旅して、その度に男に傷つけられた女性達に協力をしてきた。
その理由は簡単。
あたしの心は女だけど、やっぱりあたしは男で。
あたしとおんなじ男が女性を傷つけるのが……申し訳なくて。
あたしが彼女達を傷つけた訳じゃないけど、罪悪感から女性達の心の傷が少しでも癒えるようにと手を貸してきた。
でも、それはあたしが傷つけられてる女性達を見て、嫌な気分になってるから……自分の不快感を解決するために、手を貸してるだけ。
押し付け、エゴ、偽善。
そう言われるものでもあるの。
だから……こんなことになっちゃったんでしょうね。
悲しんでいる女性達に救いの手を差し伸べることは、いいことだけど。
でも、周りの目を気にしなかった。
自分本位な行動すぎて、周りの人がどう思うかを考えてなかった。
だから、ここまで大事になってしまった。
本当に反省してる。
だけど、彼はそんなあたしを犯罪者とするのではなく。
国すらも丸め込んで、事件を上手い具合に落とし所をつけた。
ただの軍人とか言ってたけど、本当にただの軍人なら国を丸め込めるはずがないでしょう⁉︎……と思ったあたしは悪くないわよね?
というか……奴隷として扱われるより、模擬戦の相手を務める方が罰になるって、最初は意味が分からなかったんだけど……今なら分かる。
模擬戦、油断すると命が散るタイプの模擬戦だわ。
「あはははっ‼︎あはははははははははっ‼︎」
「アダム、煩い」
「申し訳ありませんっ、エクリュ中佐‼︎」
晴れやかな空の下、訓練場の中。
剣と剣、拳と拳が鬩ぎ合う度、衝撃波が起きて地面が揺れる。
ねぇ、ここは世紀末なの?
地面がめくれ上がってるんだけど、ねぇ、一体どうなってんの⁉︎
なんで、あたしとも模擬戦した後なのにあんなに体力残ってんの⁉︎
というか、あたしと戦った時より強くないかしらっ⁉︎
「やべぇよ……こいつら……」
思わず男口調が零れ落ち、地面に大の字になったあたしの顔が陰る。
閉じていた目をゆっくりと開けると……そこにはニヤニヤと笑うフェンネル少尉がいた。
「だから言ったでしょう?奴隷より厳しい罰だって」
「こんなに厳しいなんて聞いてないわ」
「でも、奴隷としてこの国に縛りつけられるよりはマシかもしれませんね」
奴隷より厳しい罰で、奴隷よりマシな罰って意味が分からないのだけど。
というか、あたし、死にそう。
「…………聞いていいですか?」
唐突にフェンネル少尉がそんなことを聞いてくる。
彼があたしに何か聞きたいことなんてあるのかしら?と思いながら、「………何かしら?」と首を少し傾げる。
「何故、あんなことを?」
あんなことって……女性達に協力してたことよね。
あたしが助けてた理由は……。
「あたしの偽善の押し付けよ」
「……………」
「それ以上でもそれ以下でもないわ」
薄っすらと笑いながら、あたしは答えを返す。
フェンネル少尉は探るような視線を向けていたけれど……急にふっと笑い、「そうですか」と答えた。
「まぁ、なんでもいいですよ。貴方がどう答えようが、何か言いたかった訳ではありませんし。………貴方が彼女達に寄り添ったことで、女性達も救われたと思いますよ」
………あたしは大きく目を見開く。
……あぁ、あたしの自分本位な行動は……彼女達のために、少しぐらいはなったのね。
「では、この後もあの二人の模擬戦相手を頑張ってくださいね」
…………え?
なんか、ちょっと良いムードになったのに彼に突きつけられた言葉で、あたしの身体は恐怖心(?)からか本能的に震え出す。
今日の模擬戦はまだ続く感じなの……?
………マジかぁ……。
「僕はこれから、彼女にプロポーズする綺麗な場所を探さなきゃいけないんで」
…………そういえば。そんなこと言ってたわね。
プロポーズしたい人のために、今回の事件を解決しにきたって。
………あたしのこと、助けてくれた(?)し……。
「ねぇ、フェンネル少尉」
「なんですか?」
「綺麗な場所、知ってるんだけど」
「えっ?」
あたしは今までの人生の中で見てきた光景の中で、一番美しかった場所を話す。
まぁ、ぶっちゃけ。
この国の中は中でも辺境の地だから、行きにくいかもしれないけど……あたしはあそこ以上に綺麗な場所を知らないわ。
「……成る程……移動手段はエクリュ中佐に協力してもらえば問題なさそうですね。メノウさん、いいことを聞きました。ありがとうこざいます」
「どう致しまして。貴方の好きな人、悲しませんじゃないわよ?」
「ははっ、勿論です。もし彼女を悲しませるような事があれば……まぁ、僕の全力で潰しますから」
フェンネル少尉はゾッとするほど冷たい笑みで答えて、その場から去って行く。
………こっわ。
まぁ、でも……その言葉に嘘はなかったから。
フェンネル少尉に好かれちゃってる女性はとんでもなく大変そうだけど……大変な分、いっぱい愛されそうね。
「どうか、若き二人に幸せな未来が訪れることを」
あたしはそう呟いて、フェンネル少尉と彼の恋人が幸せになれることを祈ったわ。




