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第6話 ハイエナは月が欠けた夜、事件を解決する(2)


あれ……シリアスが崩壊してない……?

ま、いっか。


よろしくねっ☆








行方不明事件ーーーー。




調べていく内に、行方不明になった人達にはある共通点があることに僕は気づきました。

それは、行方不明になったのは女性だけ。



そして、彼女達は総じて恋人や夫、婚約者と不仲であったこと。



このことから僕は、僕自身を囮にして……犯人を釣ることにしたのです。










「貴女っ……何をしようとっ……⁉︎」


彼女達の救世主とも言えるこの人を縛ったからか、女性達の顔に動揺が走ります。

僕はつけていたウィッグを外しながら……ゆっくりと頭を下げました。


「ご機嫌よう。僕の名前はトイズ・フェンネル少尉。軍部・特殊部隊所属の軍人ですが……ハイエナと言うべきでしょうか。この度、行方不明事件の担当をすることになった者です」

『っっっ⁉︎』


言葉を詰まらせる女性達。

けれど、その中に〝ハイエナ〟という名に顔面を蒼白にした女性が二人。

やっぱり。

()()()()()()()()()()()()()()


「さて。どなたかがこの事件の真相は大事おおごとではないと言いましたが……それは間違いです」


ビクリッ‼︎

顔面蒼白になった女性二人が震え出す。

分かっていたのなら、なんで直ぐに帰ってこなかったのでしょうね。


「行方不明になった人の中には、貴族令嬢がいたんです。貴族は外聞を気にするものですし、()()()事情があって公にされてませんが……それでも貴族令嬢まで連れてきてしまったのは間違いでした。彼女達が行方不明になったがゆえに、貴方は指名手配(国の敵と)されているんですよ」

『えっ……⁉︎』


連れてこられた女性達はそれを知らなかったのか、全員が顔面蒼白になる。

それどころか……縄で縛られている赤毛さんも、目を見開いて固まってしまいました。


「なんで貴方まで驚いてるんですか」

「だっ……だって‼︎あたしはただ、逃げ場を提供しただけよ⁉︎それなのにっ、指名手配なんてっ……‼︎」


………あぁ、驚いた。

まさか、そこまで深く考えていなかったのでしょうか。

当事者と周りの人達との見え方は違うというのに。


「……逃げ場を提供しただけで、彼女達は何もされていないのが真実だとしても。周りの人の目から見たら、貴方は貴族令嬢すらも誘拐した犯人なんです」

「か、()()は悪くないわ‼︎殺さないで、ハイエナ様‼︎」


貴族令嬢の片方が縛られたその人に駆け寄り、庇うように言います。

いやいやいや、僕がそんな簡単に人を殺すような人間に見えますか?

………あ。ハイエナの悪名の所為か。

………というか……少し気になることが。


「…………ちょっと聞きますが」

「な、何よっ……‼︎」



「この中で、その人が〝()()〟だと認識できてる人、何人います?」



『………………え〝?』


ザザッ‼︎

赤毛さんに駆け寄った貴族令嬢が勢いよく離れます。

あ、よかった。

流石に貴族令嬢らしく男女の距離感はちゃんと置くタイプの人でしたね。


「お、男……?この人、が……?」


皆さんがプルプルと震えながら、赤毛さんを見つめます。

中性的な顔立ちに、華奢な身体つき。

ここ最近では平民女性でもズボンを履く人がいるようですし……ハスキーではありますが、喋り方も相まって疑いもしなかったのでしょう。

ですが、僕は分かります。



こいつは……間違いなく、男性です。



「ちょっと‼︎男女差別する気⁉︎」


赤毛さんは憤慨するように叫びます。

この状況でその態度……中々に大物ですね。


「というか……男女差別と言うには、何か間違ってる気がするのですが……」

「確かにあたしの身体は男よ‼︎でも、心はオネエさんなのよ‼︎」

「いや、そういうことが聞きたいんじゃなくてですね?」

「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎嘘ぉぉぉぉぉぉぉお‼︎」」


うるせぇ。(←微妙に本性出てる)


「ちょっ、ど……どうしたの⁉︎」

「こっちの子も今にも倒れそうよ⁉︎」


顔面蒼白でその場に崩れ落ちる二人と、オロオロする女性達。

………はぁ……面倒くさいですね……。

どうやら、同性だと思っていたから……そこまで重く受け止めていなかったと見ました。

僕は渋々、貴族というモノの説明をすることにしました。


「………貴族というのは色々としがらみがあります。まぁ、特権階級ってのは贅沢な暮らしができる代わりに民を守る義務がありますから……柵があるのは仕方ないですよね。でも、その義務のために貴族は家の力を強めようと、子を結婚させるという手段を取ります。ですが、逆に家同士の繋がりを断ちたい第三者(政敵)の手によって誘拐されることも多々あるのです。貴族社会では誘拐された令嬢が暴行され、望まぬ子を孕まされたり。死にかけたり、自殺したり、殺されたりするのも過去にあった話なのですよ。だからこそ、何もされてないと言っても、信じてもらえない。誘拐された貴族令嬢はほぼ例外なく、修道院に送られてしまうのです」

「えっと……つまり?」

「犯人が男=されてなくても襲われたと見られる。婚約解消、強制修道院入り。以上」

『嘘ぉっ⁉︎』


平民女性達よ、これが貴族です。


「き、キゾクって……そういうものなのっ⁉︎」


赤毛さんは驚愕しながら、質問してきます。

やっぱり……この人。


「赤毛さんはこの国の人じゃないんですか?」

「…………えぇ。違うわ」


僕は彼の耳元にそっと唇を寄せて、他の人に聞こえないように小さな声で呟く。


「やっぱり、魔族ですか?」

「っっっ‼︎」


分かりやすいほどに、赤毛さんはぶるりと震えます。

その反応が答えですね。


「別に魔族だからといって特段何かをする訳ではありませんから、ご安心を。ただ、もう一つだけ質問します」


僕は彼から距離を置いて、さらに質問をする。


「貴方の国には貴族制度はありますか?」

「………ない、わ」

「ふむ。分かりました」


僕は考え込みます。

貴族制度がない国では、身分というモノがよく分かってなかったと言い訳できるでしょう。

……流石に、このまま赤毛さんを犯人として処理したらここにいる彼女達に恨まれそうですし。

…………僕が恨まれたら、僕の妻になるネッサ様に迷惑をかけそうですし(こっちが本音)。

…………仕方、ありませんね。


「……これから上手く事態を収めるための作戦会議を開始します」

『えっ⁉︎』

「あ、言っときますが……上手く事態を収めたいのは私欲のためですので、悪しからず」

『えぇぇぇぇっ⁉︎』


この人達、無駄に反応いいですね。


「ちょっ……ちょっと待ってよ‼︎一体、何がしたいの⁉︎事件を解決するって……あたしを捕まえるんじゃないのっ⁉︎」


縛られているというのに、赤毛さんは器用に僕に詰め寄りながら叫びます。

ですが、僕はその顔をグイッと押し退けながら答えました。


「え?だって、赤毛さんは彼女達に逃げ場を用意してあげただけで何かをした訳じゃないんでしょう?」

「そうよ‼︎」

「加えて、貴族制度がない国から来たから、身分というものがあまり分かっていなかったとすれば、情状酌量の余地ありと言えるじゃないですか。まぁ、だとしても……主犯であることは誤魔化せませんから、罰としてドラゴンスレイヤーと騎神と暫く模擬戦をしてもらいますが」

『え〝……』

「えっ?えっ?ドラゴンスレイヤー?騎神?」


僕の言葉の意味を理解できたのか、顔面蒼白を通り過ぎて土色に変わった女性達。

赤毛さんは意味が分かってないみたいですね。

ぶっちゃけ、自分がいる国のことぐらい知っとけよという感じですが。


「多分、貴方の処分を決める人達は……普通に裁かれるより二人の相手をする方が罰になると判断してくれると思うんです」

「え?その二人との模擬戦ってそんなに危険なの?あたし、死ぬの?」

「死にはしませんよ。ただ……騎神が戦闘狂なだけで。…………ドラゴンスレイヤーと模擬戦ばっかりしてるので、その強さが天元突破し始めてるだけで」


僕はそっと目を逸らします。

既に模擬戦による余波(人災地震)は黒水晶宮の日常と化してますからね……本当、どこまで強くなるつもりなんだ、あの二人。

この国の住人である女性達はドラゴンスレイヤー(エクリュ中佐)のヤバさが分かっているからか……まるで葬式のような沈痛な顔をしてました。


「貴族令嬢を誘拐した犯罪者として処分されるよりはマシだと思うんですが?」

「………それは、そうだけど……」

「なので、貴族令嬢達のためにも……赤毛さんは女性ということにしますね。赤毛さんを中心に意気投合した女性達が協力しあって、不仲であった恋人や夫達から姿を眩ましたということにしましょう」

「…………なんで、あたし達のためにそこまでしてくれるの?」


赤毛さんは疑うような目でこちらを見てきます。

………まぁ、そう思うのも仕方ないですよね。

でも、別に僕は赤毛さん達のことを思ってこんなことをしてるんじゃない。

事件を解決して爵位を上げたいから。



…………そして。



………()()()ネッサ様が()()()と婚約したままだったらと考えてしまったから。



…………もしかしたら、赤毛さんは()()()()()()()()()()()()()ネッサ様を救うような存在だったんじゃないかって……。

何故かそう思ってしまったから、あまり酷い扱いをしようと思えないできないだけなんです。

……………まぁ、今のネッサ様には関係ないことですけどね。


僕は後者の本心隠して、不敵に笑う。

そして、前者の本音だけを告げました。



「あははっ、忘れたんですか?僕は私欲のためだと言ったでしょう。僕は好きな人と結ばれるためにとっとと事件を解決して、爵位を上げたいんです。だから、僕に恩ができた貴方達は僕や僕の伴侶となる女性に何かあったら協力してくださいね。同じ女性同士なら彼女の助けになるでしょうから」




赤毛さんと平民女性はよく分かってないようですが……貴族令嬢二人組の方は噂を知っていたのか、納得したような顔……というか、ちょっと興奮したような顔になってます。

…………女性って、恋バナ好きですよね。


「あ、貴族令嬢二人は君らの父君に僕の爵位が上がるように言ってくれてもいいんですよ。君らの父君は陛下の重臣ですから」

「「っっ‼︎えぇ、いいわよ‼︎」」

「(恋愛絡むと女性は決断が早いですね……)では、行きましょうか」






まぁ……そんなこんなで。


行方不明になった女性達は無事に軍部に保護され……彼女達は恋人や夫、婚約者と上手くいってないもの同士で意気投合し、姿を眩ましたということで処理されました。







(3)=(行方不明事件後始末編)に続く〜


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