第6話 ヤンデレの原因判明
いつも沢山の方に読んで頂きありがとうございます‼︎
コメディ感がある回になったかもしれませんが、著者はゆるーい感じで書いてるのでご容赦下さい‼︎
今後も楽しんで頂けるよう、頑張ります‼︎
よろしくどうぞ‼︎
柔らかな日差しが暖かい今日、この頃。
王宮の応接室にて。
質素ながらも品があるその部屋で、ソファに座った私、ルイン、総帥、女男、お父様……そして、金髪碧眼のキラキラした男性……国王陛下の六人で互いに顔を見合わせていた。
え?なんでかって?
それはこの間のルインのプチ暴走が原因ですよ。
で、なんでクリストファー殿下を大人にしたverである国王陛下が出てくるかが分からない。
「さて、本日この場に揃ったのは他でもないエクリュ二等兵とシエラ嬢に関してだ」
そう言ったクリストフ国王陛下は、にっこりと笑う。
いやいやいや、国王陛下が気にすることじゃないよね?
彼は私とルインを見て、話を続けた。
「なんでも、エクリュ二等兵は威圧だけでその場にいた者達を気絶させたとか?」
「やった自覚はありませんけどね」
「エクリュ二等兵‼︎国王陛下に無礼だぞっ‼︎」
ルインの態度に、デルタ総帥(やっと今日、名前を知った)が怒る。
だが、国王陛下は大声で笑った。
「あははっ、我に対してそのような無愛想な態度に出るか。まるでヨルハのようだ‼︎」
「お止め下さい、国王陛下‼︎そのような混ざり物と同等の扱いなどっ……」
ギロリッ……と私が睨むと、女男はビクッと動揺する。
まだ私のルインにそんなこと言うの?
「あぁ、そういえば……聞いた話だとハーフエルフらしいな」
「………えぇ、俺はハーフエルフです」
「なんのハーフなのだ?」
「……………」
国王陛下はニヤリと笑う。
ルインはどう反応しようと困っているようで……「はぁ……」と息を吐いて、周りにいた精霊達に声をかけた。
「どう思う?」
『うーん……ちょっと待ってね‼︎』
精霊達はキラキラと舞うと一陣の風が吹く。
あ、これまたあのパターンか……と思った次の瞬間には、私達の座っていたソファが消えて花畑に瞬間移動していた。
無様に倒れる国王陛下達と、なんとなく察して立ち上がっていた私とルイン。
国王陛下達は驚いた顔で周りを見回していた。
「まさかここは……《精霊の花園》っ⁉︎」
興奮気味の女男が煩い。
そこに大精霊達が現れるもんだから、余計に悲鳴に近い声をあげていた。
流石の出来事に国王陛下、総帥、お父様も絶句している。
『ルイン……お前、シエラのことが好き過ぎだろ……』
『さり気なく世界を滅ぼしかねないか…お姉さん、心配なんだけど?』
「え?滅ぼそうなんて……いや、シエラと引き離されそうになるならするかもしれないけど」
『………ルイン君、素直過ぎなの……』
『その負担が儂らにくるんじゃけどなぁ……』
大精霊達も溜息モノって相当よね?
で、彼らからルインが話しかけられているもんだから……女男は超激怒していた。
「大精霊様っ‼︎何故そのような混ざり物に声などっ……」
『ルインは我らの大切な仲間だ。混ざり物などと罵倒するな』
火の大精霊が淡々と言い放つ。
その言葉に女男は絶望したような顔をする。
『そうよ。だから、余りこの子に喧嘩を売らない方がいいわ』
『そうだよ?仲間である云々以前に、ルイン君は軽く世界を滅ぼせるから〜』
『お前達が下手な行動して、世界が滅ぶのは遠慮して欲しいのぅ』
………あははー。
精霊に好かれてるから庇ってる以前の問題だったー。
世界を滅ぼす認定されてますよ、ルイン。
いや、《穢れの王》になる可能性があるからそうなのかもしれないけど。
『と、言う訳で……ルインの身の保証は我ら精霊がしよう』
その言葉に国王陛下は何か考えているようで。
そして、彼は人が食えないような笑みを浮かべた。
「大精霊様、お聞きしたい」
『なんだ?』
「何故、そこまでエクリュ二等兵を気にかけるのですか?」
『………この時点で、大体は分かっているのに聞こうとするのだな』
「えぇ。我としてはちゃんとした確証が欲しい」
『…………………』
大精霊達の纏う空気がピリッと危険なものになる。
…………これ、ヤバイんじゃないかな?
と、思った次の瞬間……。
『なら、わたしが説明しよう』
サァァァアッ‼︎
強い風が吹いて、そこに一人の男性が現れた。
艶やかな長い黒髪に、真紅の瞳を持つ……二十代くらいの男性。
その顔は、どこかルインと似ていて。
大精霊達は驚いた顔をしていた。
『精霊王様……何故、ここに⁉︎』
「え?精霊王?」
それを聞いた私とルイン以外の人達は、勢いよく頭を下げた。
え?何事?
『精霊王様‼︎貴方様がここに来るなら、事前におっしゃって下さらないと‼︎各自、持ち場へ行けっ‼︎』
火の大精霊が怒りながら叫ぶと、大精霊達は勢いよく飛んでいく。
いや、本気で何事?
『この場にわたしがいるということは世界の管理の仕事が止まっているということだからな。わたしの代わりに仕事をしに行っただけだ』
…………つまり、この人の代わりに世界を支えるために急いで消えたと。
仕事しろよ。
精霊王は、私とルインを見ると柔らかく微笑んだ。
『会いたかったぞ、我が息子よ』
「………………は?」
ルインがその言葉に冷たい声音と目線を返す。
向けられてないのにビクッとしてしまったんだけど……。
『おぉ……その冷たい目‼︎ルーナにそっくりだ‼︎』
………それを向けられている精霊王はキラキラとした笑顔で頷いていた。
な・ん・で・や・ね・ん。
なんであんな嫌悪オーラ全開を向けられてるのに、そんな嬉々とした表情なんですか。
っていうか……精霊達をまとめる存在よね?
今、ルインのこと我が息子って言った?
『そうだ、わたしは精霊王。正確にいえばこの世界の管理者。神だな』
「………………」
………うん、そうなのね。
神様だったのか、うん。
『君の話も知っているぞ、シエラ』
つまり、私の前世の話も理解済みだと。
というか、ルインは半精霊かと思っていたら半神だったと?
『正確には精霊と呼ばれる者達はわたし、神の端末だ。ゆえに精霊も神の一部分だな』
「シエラの心の声、俺の許可なく読むなよ」
「勝手に私の心の声を読まないでくれます?」
『………息子と息子嫁が酷い……』
呆然としている国王陛下達……いや、正確には私のお父様に、精霊王は言う。
『さて、シエラの父上殿』
「はっ…はいっ‼︎精霊王様‼︎」
精霊王に声をかけられたお父様は緊張した声で返事をする。
それを見て、精霊王はクスッと笑った。
『我が息子にそなたの娘御を嫁に頂けるか?こいつはわたしの力を引き継いでいるがゆえ、簡単に世界を滅ぼせるのだ。シエラがいれば多少のことは問題ないだろう』
「………何故、シエラなのですか……」
『そんなの簡単だろう?こいつらは相思相愛だからだ』
『は?』
………いや、相思相愛って…そうだろうけど、なんでそれが世界滅亡を救うの?
『知らぬのか?愛の力とはそういうもんだ』
「……………えー……」
『正確に言えばルインはルーナの血を引いてる所為か、ヤンデレだからなぁ。シエラがいないと結局、デッドエンドだ』
親公認のヤンデレってなんなの……。
というか、ルーナってもしかしてお母さんのこと?
つまり、ルインのお母さんもヤンデレだったと。
あははっ、ヤンデレは遺伝するのか。
「…………俺、ヤンデレなんですか……」
そしてルイン、今気づいたのね……。
いや、ヤンデレとか本人は気づかないものなのか。
『あぁ、言っとくが治そうと思っても無理だぞ。そのヤンデレはもう一種の性質だ。エルフとわたしの血が混じったからか、なんかそういう特性ができてしまったのだ。まぁ、ルーナの性格が特性になったんだと思うけどな。もう治らん』
「……………」
ルインは絶望した顔で崩れ落ちる。
うん、いきなり貴方はヤンデレですって言われたらそうなるよね。
というか、普通ヤンデレの人にヤンデレを自覚させることなんてないんじゃないの?
ヤンデレって気づかないよね?
うん?なんかよく分からなくなってきたぞ?
『ルインのヤンデレは勝手に発動するタイプの特性だから、ルインっていう生物に付与されている属性だと思え。だから、なんか深く考えても仕方ないのだ。というか、なんでわたしにもそんなもんがついたか分からない。もう長ーく付き合うしかない』
「…………なんだ、それ……」
『まぁ、ファイト‼︎』
「煩ぇ、クソ親父っ‼︎」
ルイン〜……口調が酷くなってますよ〜。
精霊王は『親父と認めてくれるのか……‼︎』とへにゃっと笑う。
ルインはそれを無視して、私に声をかけてきた。
「シエラ……俺、もしかしてシエラに凄く迷惑かけてる?」
「え?」
「だって俺、自分がヤンデレだって知らなかったし……シエラ関連なら世界を滅ぼ……うん、滅ぼすかもしれないけど……俺、シエラの迷惑になるんじゃ……」
泣きそうな顔で私に問うルインは、本当に不安そうで。
私はクスッと笑って、彼の頬に手を添えた。
「でも、それは私のことが好きだからでしょ?それに、私もルインが好きだからあまり気にしないわ」
「でもっ……」
「ふふっ、大丈夫よ?ルインが暴走しそうになったら私が刺し違えても止めてあげるから」
「えっ、刺し違えるの前提で止めるの?」
「だって……世界を滅ぼしかけたらルイン、絶対処刑されるじゃない。貴方がいなくなったら嫌だし、なら私も一緒に死にたいわ」
うん、ルインがいなくなるのは嫌だからね。
どうせなら一緒に死にたい。
あれ?これって私もヤンデレ?
『………おおぅ…シエラもソフトなヤンデレだったか……』
「ソフトなヤンデレって何よ」
『ルイン関連のヤンデレのこと?』
「そしたらルインもソフトでしょう?」
『いやいやいや、世界滅ぼしかけるのはソフトじゃないだろう?』
…………よし、開き直ろう。
ヤンデレカップル上等ですよ‼︎
『という訳で、シエラよ‼︎お主の存在がこの世界の命運を分けるのだ‼︎励めよ‼︎』
てってれ〜ん‼︎
って感じの効果音が似合いそうなドヤ顔をされて、若干……いや、かなりイラっとする。
ルインも同じようで苛立ちを隠さない笑みを浮かべていた。
『さて。これでルインとシエラは結婚できるかな』
「………貴方が姿を現したのは、そのためか?」
『当たり前だろう?人というのは出自を気にする。ルインがどこの誰か分からないと、貴族というのは結婚しにくいのだろう?』
国王陛下は思案顔になる。
多分、この国にとって。
国王にとっての、私とルインの利用価値について考えてるんでしょうね。
まぁ、上手くいかないでしょうけど。
「………ふむ。下手に手を出すと我が身を滅ぼしそうだな」
『おや、人間の王は話が分かる奴だったか』
「話が分かる以前に精霊に関係する者に下手に手を出せば、その身を滅ぼしかねないのは当たり前のことだろう?」
『そうだな。かつて精霊に好かれている者を殺した男は精霊の恩恵を受けられなくなったからなぁ。下級精霊は知能が低いから、何も考えずに力を貸すことはあるが。まぁ、一様に精霊達は好きな者を優遇する』
「ならば我はあくまでも何もしないことを宣言しよう。エクリュ二等兵、武功でも立てて爵位を得て、シエラ嬢を娶れるように頑張るがいい」
「元よりそのつもりです」
国王陛下はお父様にも「それでいいな?」と確認する。
お父様も渋々といった様子で頷いた。
『では、余計な者達は立ち去れ。あぁ、ルインの出生は秘密にしろよ?』
精霊王が腕を横に薙ぐと、私とルインを残してその場にいた人達が消える。
私はチラリと精霊王を見た。
「なんで私達を残したんですか?」
『あぁ、君の前世の話がしたいからだ』
「……………何か気になることでも?」
『他の者への影響を考え、君の前世の話はしないで欲しいということと、その知識を使ってチートとかはやっていいということを言おうと思ってな』
「………え、普通はチートとかしちゃ駄目じゃないの?文明が〜……とか」
精霊王は『あぁ』と納得した様子で頷くと、溜息を吐いた。
『オーバーテクノロジーとかは気にしなくていいぞ。若干、この世界の発達は遅れてるんだ。マグノール帝国とかいう国には科学が存在するが……まぁ、あそこは精霊術が廃れ始めて逆に問題になり始めてるが』
「………え?」
『精霊術というのは、精霊が人から精霊力をもらう。そして現象を発動する……というのが人達の見解だろうが、我々からすると少し違うのだ。もらった精霊力を、世界を廻すための力としているんだ。そのお礼に現象を起こしてやっているという意味合いが強い。昔から強力な精霊術師がいる国は、豊穣だったり平和だったりするだろう?沢山、力を貰っているからお礼が多いってことだな』
「…………」
まさか、精霊術にそんな事実があったとは……。
なんかちょっと某税金みたいね。
ルインも知らなかったみたいだね。
なんか驚き過ぎてスンッ。って顔してるし。
『あぁ、ついでにその知識を使って君の異母妹もなんとかするといい。君的な言葉で言うならあの娘の行動によってはフラグ?が立つのだろう?それを折ってしまえ。我が息子が《穢れの王》になる確率なんて撲滅してもらいたいからな』
「世界が滅びるかもしれないものね」
『それもそうだが……父というのは子を思うものだろう?』
ルインはそれを聞いて驚いたみたいだ。
精霊に、そんな考えがあるとは思わなかったから。
『わたしは世界への過干渉は許されていない。これでもかなり限界なんだ。すまないな、ルイン』
「……いや、人ではない存在である貴方にそこまで期待していません。というか、その言葉だけで充分です」
『そうか』
精霊は、たしかに人間ではない。
だけど、今の精霊王の行動は……少しだけ、人間じみていて。
私は少しだけ、笑ってしまった。
「じゃあ、精霊王認定のフラグクラッシャーとして頑張るわ」
『なんか無駄にかっこいいな……』
ちょっと子供っぽい声で言われて私は笑ってしまう。
ついでに気になっていることを聞いてみた。
「そういえば……なんで過干渉が禁止なのに、エルフと子供を作ったの?」
そう、人と違う存在が子供を作ったのは何故なのか?
もしかして、ゲーム補正なのかなぁ……なんて思ってたら予想以上に斜め上の答えが返ってきた。
『む?それは……その時はまだ干渉が許されていたというか。子を作ったから禁止されたんだ』
「「……………え?」」
『凄かったぞ‼︎ルーナがナイフを持って脅してきて……〝私と子供を作るまでは逃がしませんわ〟と、わたしを押し倒しながら向けてきたあのドス黒い瞳を見た瞬間、ぞくっとしてしまったのだ。多分だが、惚れたというものに近いのだろうな‼︎是非ともそれが子供にも引き継がれるといいなぁ…なんて思わず精霊術を発動させる程度にー……』
「なんで俺がヤンデレになったか分からねぇって言ってたけどっ‼︎俺のヤンデレはテメェが原因じゃねぇか、この馬鹿阿呆クソ親父ィィィィィイ‼︎」
ルインのヤンデレは、精霊王がヤンデレ好きだから付与したみたいです。