第54話 ヤンデレ化レベルアップ
はい‼︎皆さん、こんばんは‼︎
という訳で、「伯爵令嬢はヤンデレ旦那様と当て馬シナリオを回避する‼︎」は次で最終回とします‼︎
急ですみません。
そうしたら、第二部へと続くのですが……まぁ、第二部が始まるのはもう少し待っててね‼︎
続きは、後書きに。
では、よろしくどうぞ‼︎
またしてもどれだけ用意周到に準備していたのかと質問したいぐらいの速さで、クリストファー国王とセシリー(養女となったから呼び捨てをするようにした)の婚約が執り行われた。
えぇ、そうよ。
エクリュ侯爵家に来た翌日には婚約成立よ。
という訳で、今は各国の要人達をご招待した国王の婚約披露パーティーが開かれていたわ。
煌びやかなシャンデリアの明かりの下。
美しい青のドレスを着たセシリーは幸せそうな笑顔を浮かべて、彼の隣に立っている。
陛下も嬉しそうな顔をしていて。
うふふっ……幸せそうな顔をしているわねぇ。
「シエラ」
「あら?どうしたの?」
「あいつらばっかり見てないで?」
ルインは黒の軍服を着て、私の隣に立っている。
とっても格好良くて素敵なのだけど、その顔はちょっと拗ね顔で。
……あら。
陛下達の方を気にし過ぎたかしらね?
「ごめんなさいね?ほら……一応、セシリーの義母になったじゃない?気にしてあげるのが義母の務めかと思って」
「………大丈夫だよ。心の中ではどんなに罵倒して、悪意を抱いてても表には出さないよ。俺達の養子だからね……言葉にしてしまうことで起こるであろう報復を恐れてる」
………あら。
ルインは周りにいる人達の本心を分かってるのかしら?
「まぁね。見えないようにしてるけど、擬似精霊を放ってるから……何かあっても直ぐに対応できるよ」
「うわぁ……それは凄い」
「うん。もう何人か捕まえてるし」
「………え?」
「影から護衛するにしてもちゃんと申請しといて欲しいよねぇ。暗殺者かと思って捕まえちゃうから」
ルインは困ったように言うけれど、それは仕方ないんじゃないかしら?
一応、影ってヤツなんだと思うし……。
「あ」
そんな時、ルインが声を漏らす。
何事かと思って……彼の方を見ると……。
………凄まじく面倒そうな顔をしていたわ。
「…………ルイン…?」
「……………殺すか……あいつ……」
ルインはボソッと呟く。
それを聞いて、私はギョッとした。
「ちょっと待って、ルイン‼︎一体、どうしたの?」
「あいつ」
ルインはクリストファー陛下達と話している男性を指差す。
燃え盛るような赤毛の、凛々しい男性。
………って、陛下達の顔色がかなり悪い?
「………誰?」
「マグノール帝国の皇帝」
マグノール帝国は隣の大陸にある多種族国家で……治めているのは確か竜と人の姿を持つ竜人種という一族だったわね。
あの国は豊富な鉱脈があるし、竜の姿で空を飛ぶことができるから貿易が盛んだって有名だったはず。
「で。近頃、精霊に関する問題が起き始めているから……俺達のどちらかを派遣して欲しいって」
「…………あぁ」
つまり、ルインがヤンデレモードに入ったのは私と離されると思ったからなのね?
もう……ルインったら、私のことが好きね。
「……相手は一国の王だから問題になるかな…?あぁ、でも。俺には関係ないか……」
そう呟くルインは段々と不吉な空気を纏い始めていて。
足元から黒い粒子が溢れ出す。
周りの……正確にはこの国の貴族達がルインの様子に気づき、ギョッとしながら後ずさる。
流石にこの騒ぎに気づいたのか、誰かと話していたクリストファー陛下もこちらを見てギョッとした。
「待っ……待ってくれ、エクリュ侯爵‼︎もしかして、今の話をっ……」
「……………」
「だ、大丈夫だから‼︎ちゃんとわたしがなんとかするから、病まないでくれ‼︎」
クリストファー陛下の威厳がかなりなくなり始めてるけど、まぁルイン相手じゃ仕方ないわよね?
マグノール皇帝も、無表情で危険な雰囲気を纏うルインを見て身体を硬直させた。
「なっ……」
「ねぇ、お前……俺からシエラを離そうとしてるよな?なんで?シエラと離そうとするんだよ。ふざけるなよ。シエラは俺のなんだよ?離れるなんておかしくない?殺されたいの?死にたいの?」
「っっっ……⁉︎」
無表情のまま首を傾げるルイン。
うわぁ……仕草自体は普通なのに、顔が無表情だから凄い怖いわぁ……。
というか、ルインったらなんかいつもよりもヤンデレモードの不気味さがレベルアップしてるわね?
………《穢れの王》を吸収したからかしら?
「って‼︎冷静に見てないで、エクリュ夫人っ‼︎止めてくれ‼︎」
「あら。ごめんなさい?」
私は黒い粒子を纏うルインに抱き着き、その唇にキスをする。
そして、彼の両頬に手を添えて微笑んだ。
「ルイン。私を見て」
「…………ぁ…?」
光の宿らない仄暗い真紅の瞳。
そんな瞳が私を見つめるのが、何故だか優越感を与えてくれる。
……………ルインのヤンデレが可愛くて仕方ないなんて。
私も相当、ルインに毒されてるわね。
「うふふっ。ルインったら、離されるかもしれないってだけで……ヤンデレ化しちゃうんだから」
「…………だって…シエラと俺を引き離そうとするんだよ?なら……殺さなきゃ。シエラを、俺から奪わないように。奪われないように、シエラを閉じ込めなきゃ」
あらあら……とうとう私を閉じ込めるとか言い出してるわね?
まぁ、そんだけ独占したいってことなんでしょうけど。
私はルインの首に腕を回して……耳元で囁く。
「駄目よ?そんな奴を殺す暇があるなら、私を抱き締めて」
「……………抱き締め……」
「抱き締めてくれないの?その腕、使えないの?使えないなら……いっそ斬り落とす?」
こてんっとあざとく首を傾げたら、ルインは段々とその瞳に光を宿し始める。
闇色の粒子を霧散させながら、ルインはガバッ‼︎と勢いよく私を抱き締めてくれたわ。
「駄目だよ‼︎シエラを抱き締めるのに腕がないと困るから‼︎」
「そうねぇ。流石の私も、ルインを傷つけるのは嫌だわ」
「あ……でも、シエラに消えない傷を刻まれるのは興奮する……」
恍惚とした表情を浮かべるルイン。
確かに……ルインに消えない傷を刻むのは、私のモノって証拠みたいでちょっと気分がいいわね……。
でも。
「ルインの肌は綺麗だから傷は残したくないわね。代わりにキスマークを残しあいましょう?」
「うん」
ふわりと笑うルインに抱き締められながら、私も笑う。
周りでガクブルと震えるエディタ王国の人達……いや、全員ね。
彼らをチラリと見て、私はニッコリと微笑む。
「どうやら皆さんを怖がらせたみたいね?でも、他の国の皆さんも早めにルインのことが分かったからよかったと言うべきかしら?」
「………エクリュ夫人……」
クリストファー陛下は胃を押さえながら、名前を呼んでくる。
セシリーも困惑気味だけど……でもね?
「先にちゃーんと言っておかない陛下が悪いわ」
「…………あぁ…そうだな……」
そう……これは先に、他国の人にルインのことを話してなかったのが悪いわ。
ここに来ているのは、偉い人ばかりだもの。
自国のことを考えている人ばかりだもの。
取引的な話を持ちかける人がいるでしょう?
我が国に協力を求めたり……同盟を結んだり。
半精霊であるルインを利用したいと思う人だっているでしょう?
でも、そんなルインの逆鱗は私なのよ。
それを教えておかないで……ルインが怒るようなことになってしまったら……危ないのは、自分達なのよ?
…………まぁ、新米国王様だから仕方ないかしらね。
「そうね……丁度他の国の方もいらっしゃるし。伝えておきましょう」
私はルインの頬を撫でながら、周りに向けて笑う。
「私達を離そうとしたら。私を傷つけようとしたら。ルインの精神状態が病的になってしまうの。それこそ簡単に……その原因となる人を殺そうと。世界を滅ぼそうとするぐらいにね?だからね?私達に何かをしようと思わない方がいいわ」
脅しに近い言葉だけど、ルインの異常さを見た彼らはよ〜く理解したでしょうね。
私はガクガクと震えるマグノール皇帝に、ニヤリと笑う。
「さぁ、マグノール皇帝?それを踏まえた上で私達に関わる話をしなさい?」
*****
………ちなみに。
このマグノール皇帝が持ってきた話が、前に話したとある少女と関わる理由となったのだけど……。
それはまた次の物語で語りましょう。
一応、第二部は作中に出てきたローデント帝国が舞台になります‼︎
タイトルは「(元)暗殺者侍女は腹黒わんこ王子と滅亡シナリオを回避する‼︎」です。
詳しくは次の最終回で。
最後までよろしくどうぞ‼︎




