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第48話 混沌渦巻く作戦会議(1)


シリアスかも?

明日、病院行くので投稿できないかもしれないです。


よろしくお願いします








精霊姫の暴走ゆえに、急遽休学になった学園。



そして……ルインの執務室に戻ってきたら、なんかルインが凄いことになっていたわ。




「シエラ……シエラ、シエラ、シエラ‼︎無事でよかったよぉっ‼︎」

「ぐぇ……ルイン……苦しいわぁ……」


そう……ルインが泣きそうな顔をしながら、私から離れないのよ。

思わず、令嬢らしからぬ声が出るくらいにルインは私の身体を強く抱き締めている。

………こんなに、心配させちゃったのね。


「心配させて、ごめんね」

「ううん……シエラが無事なら問題ないよ……怖かったでしょう?」

「……………」


…………えぇ、怖かったわ。

洗脳されているとはいえ、異母妹に殺意を向けられたんだもの。

怖くない、はずがない。

死ぬ気はなかったけど、確実なものなんて何もない。

もし死んだら……もう二度と、ルインに会うことはできなかった。

さっきまではその感覚を鈍らせていたから動揺していなかったけど……今は……後になって、恐怖が襲ってくる。

怖かった。

生きてて、よかった。


「お帰り」

「…………ただいま」


ルインが〝お帰り〟と言ってくれる。

それだけで、私は帰ってこれたのだと……安心する。


「次からは俺も一緒に行くね」

「うん……うん?」


だから、その言葉に何も考えずに反応して……ピシッと私の動きが止まった。


「………それは……ダメなんじゃないかしら?精霊姫が相手なのよ?」

「大丈夫だよ。俺、強くなったしね?」

「…………え?」


それから、ルインはこの短時間で起きたことを語ってくれる。

異なる世界線の《穢れの王》がルインに成り代わろうとして、逆に吸収した?

え?どういうこと?


「…………ごめんなさい……ちょっと理解できないわ……」

「まぁ、精霊姫なんかに惑わされることがなくなったってことだよ。俺もよく分かってないから、アバウトでいいんじゃないかな?」

「……………」


ニコッとルインは笑うけど、それってアバウトでいい話なのかしら?

…………まぁ、ルインがいいって言ってるから、いいとしましょう。

…………深く考えたら負けな気がするもの。


「ごほん。じゃあ、お二人の愛を確かめ合ったところで話を始めましょうか」


………と、そこで今までずっと黙っていてくれたトイズ様が声をかけてくる。

………凄いわね、完全に気配が消えてたわ。


「待たせてごめんね、トイズ」

「いえ、お気になさらずに。取り敢えず……この話を始める前に転移させて欲しい方が」

「「?」」

「ここから先、重要になる人物ですよ」



……………そう言ったトイズ様は、とっても悪い笑顔を浮かべたわ。





*****




唐突に、わたしの身体を眩い光が包み込む。



タイミング悪く、今は自室で休憩していたため……一人っきりで。

次の瞬間には、わたしは違う場所にいた。


「えっ⁉︎はっ⁉︎えぇっ⁉︎」

「ご機嫌よう、クリストファー殿下」


そこにいるのはエクリュ夫妻に、ハイエナ。

………騎神はいないが、先程、アイラ・ジキタリスの侍従に投げ飛ばされたという報告を受けている。

大事をとって医務室にいるのかもしれない。

……いや、それよりも。

今、この場にこの三人と共にいることに震えが止まらない。

というか、胃がキリキリする。

最近、胃に優しい食事や飲み物のおかげで少しばかり胃痛が改善されたというのに……ストレスがかかったら、また再発してしまうじゃないか……。

一体……これから何が……。


「急にお呼びして申し訳ありません。今回の件で貴方様に協力して頂きたいのです」


………そう……ハイエナが言って微笑む。

えっと…今回の件というのは、精霊姫の暴走についてだよな?

一体、わたしに協力して欲しいこととは……。









それから、わたしが聞いたのは……衝撃的な事実だった。


王太子であった父上が恋をした侍女。

しかし、その侍女を王太子妃である母上が国外追放……。

しかし、その侍女のお腹には父上の子供が宿っていた。

それが精霊姫の侍従……つまり、異母弟。

今回は、異母弟の復讐が目的。

精霊姫が洗脳されたのも、復讐が理由。

彼女を利用して、この国を滅ぼそうと……。


「…………そんな…父上が……母上が……」


わたしは、愕然としてしまった。

全ての始まりは、父上と母上、その侍女の三角関係が原因だったのだ。


「………ブルーノ君の母君は、ブルーノ君を産んで……違法奴隷として酷い目に遭って死んでしまったらしいです。彼自身は、奴隷廃止運動により、違法奴隷から救出されたそうですが……」


ハイエナの言葉に、わたしは目を伏せる。

この国に限らず、奴隷制度というのは禁止している国が多い。


「……ブルーノ君は、隣国ナハームに身を寄せているらしい。向こうは、精霊姫の意向を精霊の意向だと曲解させて、この国に戦争を仕掛けるつもりらしいよ?」

『え?』


エクリュ侯爵の言葉に、わたしだけでなく……夫人もハイエナも目を見開く。

どういう、ことだ?


「中佐?それは一体……」

「今、ナハームの王宮に俺が作った擬似精霊を飛ばしてるんだよ。普通の精霊じゃないから、精霊姫には見つからないよ」


ちょっと待ってくれ。

擬似精霊ってなんですか。

そんなの、聞いたことがないのだが?


「精霊姫が俺を欲してるのは知ってるよね?で、俺が半精霊ってのも有名な話だ。この国が俺を使って戦争をしようとしてるから……精霊のためにも、精霊姫のためにも、この国の戦争を未然に防ごう。俺を救おうとか抜かしてるみたいだ」

「………そうきましたか……」


ハイエナは頭を抱える。

つまり、向こうは精霊姫とエクリュ侯爵を理由にこの国に攻め入ろうとしているということか?


「ブルーノ君が使用していたのは、精霊術が使えない者達……つまり、魔族が使っている《魔術》と呼ばれるモノでした」

「………なるほど…確かに、魔術なら精霊術にも対抗できるわね」

「おや、エクリュ夫人もご存知でしたか?」

「えぇ……まぁ……」


エクリュ夫人がちょっと言いにくそうな顔をする。

エクリュ侯爵も、若干似たような顔をしつつ……ごほんっと咳払いをした。


「隣国が協力している理由は、至って簡単だね。彼らはこの国を支配下に置きたいんだ」

「…………二十年前に終戦した戦争も、目的はこの国の植民地化でしたからね」

「で……今回は精霊姫も味方にいるから、半精霊の俺も敵じゃないと思ってるのかな?」


エクリュ侯爵は優しい笑顔を浮かべる。

しかし、その笑顔は酷く優しいのに、途轍もなく背筋が凍りそうなほどに怖かった。



「あははっ、ふざけてるなぁ……?」



…………ヒョェッ。

自分に向けられているものではないと、分かっていてもガクガクと身体が震える。

胃がキリキリじゃなくて、ズキズキする。

というか、背後から黒いモノがっっ……。


「ルイン、落ち着いて。黒くなってるわ」

「おっと、いけない」


エクリュ侯爵は、夫人に抱きつかれて纏い始めた闇を霧散させる。

そのまま二人は甘い空気で抱き締め合って。

…………さっきまでの威圧は、一体どこへフライアウェイしたのか。

怖かった。

とっても、とっても、怖かった。


「………エクリュ中佐の威圧が……強くなっている……?」


………あ、そうなのか?

ハイエナもなんか、困惑顔で。

……………なんか、もう……分からない。


「まぁ、とにかく?シエラを殺そうとしたんだから、精霊姫は殺しちゃっていいのかな?」

「ぶふっ⁉︎」


さっきまでの話とまるっきり違う流れでそんな言葉が出てきて、わたしは王族にあるまじく噴き出してしまう。

ハイエナもギョッとしていた。


「いえ、暴走したとはいえ精霊姫は象徴的な存在です。彼女を害したとなると、今度はエクリュ中佐の立場が悪くなる」

「でも、シエラを殺そうとした。俺のシエラをだ。殺そうとするなら、殺される覚悟もしているはずだろ?」


ぞわりっ……。

エクリュ侯爵の真紅の瞳に、仄暗い翳が宿る。

顔は笑っているのに、目が笑っていない。

本能的に逃げ出したくなる。


「ルイン。あんまり、人殺しはしないで欲しいわ」

「分かった」


しかし、そんな危険な雰囲気もエクリュ夫人の一言で霧散して。

……………これ、エクリュ夫人がこの国最強なんじゃないか?


「………えっと……取り敢えず。我々の目的は戦争回避と、国王夫妻及びにご落胤の関係性の改善ですかね」


ハイエナの言葉に、目的が定まる。

だが、ふっとわたしは思い出す。


「…………ところで……わたしが呼ばれた理由は……」

「あぁ、簡単です。ブルーノ君の復讐を成り立たせてあげようかと思いまして」

「…………ん?」


その言葉にわたしは首を傾げる。

異母弟の、復讐を、成り立たせる?


「そのために、まず……」


ハイエナはわたしを指差す。

そして、この国に仕える軍人としては有り得ない言葉を口にした。





「クリストファー殿下には、国王に、なって頂きます」






どうしよう、胃痛が止まらない。







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