第44.5話 物語の裏側(2)
第40.5話、割り込み投稿しました。
よろしくお願いします‼︎
殿下に言われた言葉が、頭の中でグルグル渦巻く。
私は、どうしたらいいんだろう?
どうしたいんだろう?
ううん、本当は分かってる。
この気持ちは胸にしまって、いつか〝あぁ、アレは初恋だったんだ〟って語れるようにしなくちゃいけないんだって。
でも、今、この胸に満ちる熱い想いは簡単に諦めることができそうになくて。
分からなくなる。
こんな自分が嫌になる。
「…………アイラ」
自室のソファに座って、泣きそうになっていた私は、名前を呼ばれて顔を上げた。
そこには、優しく微笑む彼がいた。
「………どうしたんだ?」
「………私……私っ、どうしたらいいかっ……‼︎」
私は彼に殿下に言われたことを、自分の気持ちを、拙い言葉で吐露する。
いつしか、私の頬には涙が伝っていて。
どうしてこんなに訳が分からなくなってしまうんだろう?
こうもままならないのが、恋というものなのかな?
彼は全てを聞き終えると……「少し待っていて」と言って部屋を出て行く。
しばらくして戻って来て彼の手には、ティーカップではなくマグカップが握られていて。
渡されたマグカップの中身は、どうやら温めたミルクのようだった。
「飲んだら少しは落ち着くと思う」
「……………ありがとう……」
私は言われた通りにホットミルクを飲む。
じんわりとした温かさと、甘さが……優しく私の身体を温める。
……………あれ……?
なんか……頭が………。
「…………ぁ…?」
「………少し、ブランデーを入れたから酔ったのかな?」
酔った?
よったって……どういうことだっけ?
「ねぇ……思うんだけどさ。アイラがその想いを隠す必要はないんじゃないかな?」
「…………?」
彼の声が麻薬のように、じわりじわりと私の頭に浸透していく。
「聞いた話によるとなんだけど……」
彼は語る。
王族の話を、お姉様の話を、ルイン様の話を。
それは私の頭に深く刻み付けられて……徐々に意識がハッキリしていく。
「…………それ、本当なの?」
「あぁ。少なくとも僕はそう聞いたよ」
「…………そんな……そんなこと、酷過ぎるわっっ‼︎」
「あぁ。だから、アイラが救ってあげないと」
…………あぁ、そうね。
彼の言う通りだわ。
この話を聞いた以上、私はあの人を救ってあげないと。
「それに、君は精霊姫だ。半精霊であるエクリュ侯爵だって、君を愛するに決まってる」
そう……そうよ。
私は精霊姫。
精霊に愛される存在。
だから、ルイン様だって私を愛してくれるはず。
「私、必ずルイン様を手に入れるわ」
そう言って微笑んだら、彼は「頑張れ」と優しく微笑んでくれた。
*****
アイラの部屋から出た彼は、酷く歪んだ笑みを浮かべて懐から小さな小瓶を取り出す。
それを見ながら、嘲笑するように鼻を鳴らした。
「あははっ、よく効いたみたいだ。精霊姫と言ったって所詮は人間だな。簡単に洗脳できた」
彼は小瓶を懐にしまい、歩き出す。
その瞳には憎悪の炎が燃え盛っていた。
「…………さぁ……舞台は整った。復讐の時間だ」
物語の裏側で、確かにそれは動き始めていたーーー。
黒幕もどきが動き出すよって話でした!




