表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/89

第43話 ヒロインの婚約に関わる話


風邪、引きました。

体調悪すぎてヤバいので、暫く不定期になります。

よろしくお願いします。







僕は先ほどエクリュ中佐に言ったように……早速、国王陛下と謁見することにした。


余談なんですけど、三大危険人物は比較的容易に陛下との謁見が可能なんです。

まぁ、多分?

暴れたら被害が増大なので、機嫌損ねないようにってことなんでしょうね。




謁見の間に通された僕は、国王陛下に挨拶するよりも……先に来ていたらしい人物を見て目を丸くする。

色素の薄い金髪に翡翠の瞳。

尖った耳が特徴的な……エルフ。

精霊術師団所属……《華姫》ルジア・ククゥールがそこにいた。


「こんにちは、華姫」

「…………こんにちは」


彼女は感情の乏しい顔で挨拶を返してくる。

そのまま、国王陛下へと向き直ってしまった。


「陛下、報告」

「………あぁ」

「精霊姫、いた」

「…………何?」


おや。

どうやら僕と同じ報告みたいですね。

それに付け加えるように、僕も口を開きました。


「こちらの報告も同じです。精霊姫ことアイラ・ジキタリスのことで報告に参りました」


その名前を聞いて陛下は驚いた顔をする。

そのまま僕は彼女のことを説明した。

エクリュ夫人の異母妹であり、エクリュ中佐に一目惚れしたようだということも含めて。


「………自分の姉の夫に、惚れたのか?」

「はい、僕が観察した限りでは間違いないかと。ですので、早々に王家で囲ってしまう方がよろしいかと」

「分かった。早急にクリストファーの婚約者にしよう。そうすれば、エクリュ侯爵夫妻への負担も減るだろうしな」


こういう時に英断できる賢王でよかったと思いますね。

婚約者がいる身分になれば、他の異性に近づくことはより難しくなる。

これで、少しでもお二人の不安が解消されればいいのですが……。

そんな考え事をしていたら、グイッと腕を引かれた。

そちらを向けば無表情の華姫がいて。

彼女は淡々とした声で、質問してきた。


「ルイン、元気?」

「…………は?」

「ルイン、元気なの?」


………何故、華姫がエクリュ中佐のことを気にするのでしょうか?

僕は怪訝な顔をしながら頷く。


「………元気ですが……どうしてですか?貴女に関係があるんですか?」

「………ルインはワタシの甥」

「……………は?」

「行方不明になった、姉の子供。姉が、里に、置いて行ったから」


その事実に僕だけでなく国王陛下も、絶句する。

…………おめでとうございます、エクリュ中佐。

貴方、三大危険人物全員と繋がりがあるみたいですよ。


「………それを、エクリュ中佐はご存知で?」

「さぁ?興味がなかったし。ルインに関わるのは、禁止されてた。ハーフだから」

「ハーフ…だから?」

「死ななかったハーフは、ルインが初めて」


…………なんか、深いエルフの闇を見た気がします。

ハーフエルフへの迫害が凄いと聞いていましたが……死なない方が珍しいなんて。

そんな酷い扱いをされてるんですか。


「《神妃》と、仲良くしてる?」

「神妃?」

「ルインの、花嫁」


つまり、シエラ・エクリュ夫人のことですね。

僕は更に怪訝な顔になってしまう。


「………仲良くしてますけど……エクリュ夫人をそんな大層な呼び方してるんですか?」

「だって、ルインは半神」

「……………はい?」

「精霊王は、神と同じ。世界の管理人。だから、その息子は、半神」


それを聞いた僕は壊れた人形のように国王陛下を見る。

陛下は苦笑しながらも、それを知っていたかのような顔をしていて。

僕は余計に硬直する。


「知っていたのか、ルジア殿」

「精霊の声なら、聞けるから」


………え?

陛下はエクリュ中佐が半神だって知ってたんですか?


「元気なら、それでいい」


華姫は固まった僕にそう言い残して、その場を去る。

残された僕と陛下は、互いに顔を合わせたまま見つめ合った。


「まぁ、そういうことだ。深く考えるな」


国王陛下は苦笑しながらそう言いますが、普通に無理だと思います。




思わぬ真実を知った今日この頃でした。





*****



その日、父上に呼び出されたわたしは、わたしの婚約者が決まったことを伝えられた。

その相手は……アイラ・ジキタリス伯爵令嬢。

つまり、シエラ・エクリュ夫人の異母妹だった。

わたしはそれを聞いて、身体がガクガクと震え始める。

この前、関わらないようにしようと決意したばかりなのに……。


「不服そうだな?」


父上が苦笑しながら聞いてくる。

いえ、不服なんじゃなくて……不安なんです。


「………つまり……エクリュ侯爵夫妻とは親戚になると」

「……まぁ、そうだな」


……………その事実に頼もしさを感じると共に恐怖を感じた。

………というか、嫌な予感がする。


「………だ…大丈夫なのでしょうか……?」

「何がだ?」

「途轍もなく、嫌な予感がします」

「……………………危機察知能力が長けてるのか?」


父上。

ボソッと呟いたつもりなんでしょうけど、思いっきり聞こえてますからね。

というか、やっぱり危険があるのか……。


「実は、アイラ嬢はエクリュ侯爵に惚れているらしい」

「…………………は?」


今、なんと?


「精霊姫を我が王家で囲うという目的の他に、エクリュ侯爵夫妻の安寧のためにもお前には頑張ってもらわねばならんのだ」

「………………つまり……」


王族の婚約者となれば……貴族同士の婚約と比べ、異性との接触はより厳しくなる。

精霊姫を手に入れる以外に、エクリュ侯爵に近づかせないために……わたしが彼女の心を手に入れなくてはいけないということですか?

この婚約の目的は、明らかに後者が理由だろう。

精霊姫を手に入れる云々よりもエクリュ侯爵が暴れる方が危険度が高いのだから。

わたしは気絶しそうになる意識をなんとか保ち、思いっきり足に力を入れる。

…………あぁ……ジェームズのように気絶したいと思ったのは、初めてかもしれない。


「世界平和のために頑張ってくれ」

「……………はい……」



ギリギリ、そう言葉を返すのが限界でした。






たかが一介の王太子に、世界の命運がかかるって………どういうことですか?





*****





王家からの婚約申し込みを聞いて、私は絶句した。

だって、私、なんの接点もないんだよ?

どうして急に……。


「お父様……あの……」

「拒否権はない」


お父様は酷く冷たい声で私にそう言い放つ。

でも……でもっ‼︎


「お父様っ‼︎結婚は好きな人とするものだと思うんです‼︎私はっ……」

「…………何を言っている?」


その声は、心底呆れているようで。

その瞳は……親の向ける視線じゃなかった。


「相手は王族で、お前は貴族令嬢だ。政略結婚が当たり前の世界で……そんな庶民のような考えは許されない」

「でも、お姉様はルイン様と結婚されたわ‼︎あの二人は相思相愛でっ……」

「…………あの二人の場合、ただの一兵卒でしかなかったエクリュ侯爵がシエラのために武功を立てたから成り立ったんだ」


………ルイン様は、そこまでしてお姉様を娶ろうとしたの?

その事実に、私の胸が痛みつつも……頼もしさに胸が高鳴る。


「とにかく、お前は王太子殿下の婚約者となることが決まった。分かったな?」

「………………」

「アイラ‼︎」

「……っ…‼︎……はい……」


本当は拒絶したい。

受け入れたくない。

だって、私はルイン様が好きなんだもの。

お姉様の旦那様を好きになるなんて……いけないことだって分かってる。

でも、好きになってしまったんだもの。



一体、私はどうすればいいのーー?






*****




とある休日の昼下がり。

アイラ・ジキタリスがクリストファー殿下の婚約者になることが発表された。


その発表を聞いて、私とルインは互いに顔を見合わせる。


「早かったわね、トイズ様」

「二週間ぐらいで婚約発表になったね」


トイズ様が国王に報告に行って、約二週間。

たったそれだけの短い期間で、王族の婚約が成り立つのなんて……異例じゃないかしら?


「ちゃんと精霊姫だって公表したから、表立った反発はないみたいだよ」

「でしょうね」


精霊姫とは精霊に愛される存在。

そんな彼女に反発しようものなら、精霊を敵に回すのと同義だもの。


「これでヒロインは王家に囲いこまれることが決定したから……簡単に俺に近づけなくなったはずだよ」

「………そうね」


私は息を吐いて、ルインの身体にもたれかかる。

これでひとまずは安心できたわ。

アイラはもう、簡単にルインに近づくことはできない。

でも、まだ気を抜いちゃダメね。

最後までどうなるかは分からないもの。






だってあの子は、ヒロインなんだから。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いやいや、どうすればいいの?……じゃないでしょ。恋人時代でも横恋慕なんて顰蹙物なのに
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ