表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/88

第4話 既成事実成立です。


沢山の方に読んでもらい、そして評価して頂きありがとうございます‼︎

今後とも頑張りますが、深く考えずに読んでくださいね‼︎

よろしくどうぞ‼︎







天気は快晴。

今日はルイン様に会いに、軍部に行くのです‼︎




と……意気込んだ私なんですが、まぁお目付役としてミネルバも一緒なんですけどね。

ミネルバにはルイン様のことは簡単にしか説明していないからなんだか、納得できていないみたい。

まぁ、私のお姉さんみたいな人だから心配なのかな?



昨日のお茶会については、帰宅後直ぐに手紙を出した。

精霊術を使ったから、直ぐに返事も返ってきた。

ルイン様はちゃんと王妃様に連絡して下さったみたいで、『人命救助のためならば仕方ないから気にしなくていい』とお返事をもらった。

多分、ルイン様の証言がなかったら私がお茶会から逃げるために言った嘘だと思われてたかもしれないからね‼︎

ルイン様のおかげです‼︎



とか考えている内に王宮に着いたので、王宮敷地内に入るための手続きを正門で行った。

一応、王宮敷地内の庭園は一般公開されてるけど、不法侵入がないように結界は張られている。

だから、その結界の出入り口となる正門で、手続きをしないと中に入れないのだ。

事前にルイン様が入るための通行証明書を用意して送ってくれていたから、手続きはスムーズにできた。

ルイン様、ありがとう……。



お昼が入ったバスケットを持ってスタスタと迷いなく軍部に向かう。

軍部が使っている建物は《黒水晶宮》と呼ばれていて、黒っぽい建物だ。

王宮って結構な広さがあるけど、馬車移動は禁止されてるから歩くしかないんですよね。




………と、無言で歩くこと数十分。

子供だからこれぐらい時間かかるよね。

ちょっと疲れ気味になりながら、黒水晶宮の門番さんに声をかけた。


「こんにちは」

「はい、こんにちは〜。誰かの娘さんかな?」


熊っぽい見た目のおじさんが私の目線に合わせるようにしゃがむ。

ごめんなさいね、娘が父親に会いに来たんじゃないのよ。


「ルイン・エクリュ二等兵に会いに来ました」

「…………エクリュ二等兵…に……って、え?もしかして、あいつから聞いてた大切な人が来るってのは、お嬢ちゃんか?」

「大切な人だなんて……」


思わず頬を押さえながらふにゃぁ〜と笑う。

おじさんはちょっとそれに狼狽しつつも、後ろのミネルバを見て納得した。


「…………あー…うん、そういうことか」


………おじさん。

今、完全にルイン様のことが好きな子供=私で、ルイン様が好きな女性=ミネルバみたいな方程式完成させてるでしょ?

あぁ、あれですか?

我儘娘について来た侍女と恋に落ちました、的な感じで考えてるんですか。

顔に出過ぎなんですよ、このやろーっ‼︎


「まぁ、話は通ってるから入ってくれ。多分、訓練場にいるだろ」

「…………どうも…」


通り過ぎる時にさり気なくミネルバに「頑張れよ」とか変なアドバイスしてんじゃないわよ。

あぁ、もうっ‼︎

確かにミネルバは美人だし、ルイン様の見た目と相応の身体つきだし……ナイスバディだし。

大切な人が私みたいな子供じゃなくて、ミネルバの方が納得するのかもしれないけどさぁ⁉︎


「最後の言葉はなんだったんでしょう?」


そうねー、ミネルバには分からないわよねーっ‼︎

ミネルバは悪くないって分かってるのに……。

ルイン様に会えると思って楽しみにしてたのっ……。


「…………ぅ…」


なんか泣きそうになってきた。

やっぱり、肉体年齢に精神年齢が引きずられてるなぁ……。

なんて、目尻に浮かんだ涙を手で擦ろうとしたら、パシッ‼︎とその腕を掴まれた。


「え?」

「駄目ですよ、赤くなっちゃう」


そこにいるのは優しい笑顔を浮かべるルイン様で。

彼は私の手からバスケットを奪うと、もう片方の腕で簡単に私を抱き上げた。



「どうしたんですか、シエラ様。そんなに泣きそうな顔をして」



そう言って、優しく目尻にキスをするルイン様はめっちゃイケメンで。

胸がキュンッとしながら、慌てて弁解した。


「うっ……違うんです…ちょっと、肉体年齢に精神年齢が引きずられて……」

「でも悲しかったんでしょう?精霊達が教えてくれました。俺が貴女を悲しませるモノ、全て始末してあげますよ?」


そう言って笑うルイン様がまぁ、怖いったらありゃしない。

イケメンなのに、目のハイライトが消えてるから。

でも、それは私を思ってのことだから……ちょっと嬉しく思ってしまうのも事実でして。

私は彼の首に腕を回した。


「そんなことしてる暇があったら、私のことを構って下さいませ」

「…………あ……はい…」


さっきとは打って変わって頬を染めてちょっと頼りなさげに微笑む。

あぁ、好き……と思いながら、彼の頬に頬を添えた。


「で、ルイン様はなんでここに?」

「精霊達がシエラ様が泣きそうだって慌ててたんで、抜け出してきちゃいました」


てへっ☆と笑うルイン様のあざとさよ……。

でも、原因は私なので。


「怒られたら私も一緒に謝ります」

「ふふっ、ありがとうございます」


と、そのまま歩き出したルイン様。

なんかね、もう好きで堪んない。

イケメンだし、優しいし……私が泣きそうだから訓練を抜け出してきちゃうなんて。

ルイン様、私のこと好き過ぎでしょう?



「お嬢様っ‼︎お待ち下さいっ‼︎」



しばらく歩いた後、凄まじい猛ダッシュで追いかけて来たミネルバ。

あ、存在忘れてた……。

彼女はバッ‼︎と私達の前に立つと、ルイン様を睨みつけた。



「お嬢様を拐うなど、何事ですっ‼︎」



というか、いきなり大声を出さないで。

おかげで「拉致だとっ⁉︎」とか言って周りに人が集まって来たじゃない‼︎


「いや、拐われてないわ。何言ってるの?」

「いいえ、こんな得体の知れない平凡な男が可愛らしいお嬢様を……」

「はぁ?平凡?」


ミネルバの美的センスが分からない。

だって、ルイン様は本当にイケメンだ。

サラサラの黒髪に宝石みたいな真紅の瞳。

整った顔立ちはそこらの女子より綺麗で……どこか平凡ですか。


「あぁ。今、認識阻害の術を発動してるからかもです」

「え、なんでですか?」

「なんか俺、よく仲間達に注目されるんですよね。その視線がうざったくて……やっと精霊術が使えるようになったので、かけたんです。ほら、周りもあいつ誰だ?的な雰囲気でしょう?」


確かに……ルイン様の言う通りに、周りの軍人さん達はルイン様のことを指差して「あんな奴いた?」とか言ってる。

………それ以前に注目されてたって……それってイケメンだから撲滅しろっ‼︎的な?


「……………ルイン様?つかぬ事をお聞きしますが……他の方達と仲はいいですか?」

「いいですよ?ちょっとスキンシップ激しめで……たまに夜中に部屋に乗り込んでこようとする奴がいますけど……」

「……………………」


それって、イケメン撲滅‼︎じゃなくて……軍部って男ばかりだから綺麗な顔してるルイン様に見惚れてるんじゃ……。

というか、夜中に部屋に乗り込んでくるって貞操の危機に晒されてますやん⁉︎


「まぁ、ボコボコにしてますけど」

「え?本当ですか?襲われてないですか?」

「襲われる?」


キョトンとするルイン様。

ちょっと幼い仕草も可愛い……じゃなくてっ‼︎

彼の耳元で「それってルイン様を性欲の対象にしてるんじゃないんですか?」って聞いたら、彼は大きく目を見開いた。


「…………よく、半裸でやってくる奴が多かったんです……それって……」

「アウトです」

「…………次からは去勢してやります」

「…………お任せします…」


ふふふふっ、と不気味な笑みを浮かべるルイン様はかなり怖いけど……まぁ、うん。

私のルイン様を襲うような奴らは、去勢されてしまえ‼︎


「あ、でも……俺はちゃんと清い身なので、初めてはシエラ様にあげます」

「あぅ……はい……」


いや…嬉しいけど、ルイン様はイケメンだから経験がお有りだと思ってました。

いや、初めてをもらえるって嬉しいけどっ‼︎



「だから、シエラ様の初めても……いつか下さいね?」



ふにゃぁぁぁぁぁっ⁉︎

ミネルバに聞こえないように、耳元で甘く囁かれて……腰が抜けそうになる。

イケメンボイスがゾワっと腰にクルんだよ……。

あぅ、ヤバい……。


「ちょっと聞いてますかっ⁉︎何さり気なく二人の世界に入ってるんですかっ‼︎」


ミネルバが叫ぶので、私は蕩けた顔で彼女を見た。


「大丈夫よ、私の好きな人だから」

「…………この男が、ですか…?」

「そうよ?」


疑うような目を向けないでよ、ミネルバ。

ルイン様に申し訳ないでしょ‼︎

そんな私の心を察してか、ルイン様は優しく微笑んだ。


「シエラ様はこの方に大切にされているんですね。ご家族もですか?」

「………どうですかねぇ。使用人達は優しいですけど……我が家は現在、冷戦状態ですから」

「そうなんですか?」

「そうなんです。一夫多妻制の弊害ですね」

「お嬢様っ‼︎家庭内の事情を話すのはっ……」


ミネルバに注意されちゃったのですが、まぁ簡単に。

お父様、本当は私のお母様だけを愛する予定だった……裏切ってしまったと後悔中。

お母様、お父様が第二夫人を作ったので裏切られたと引き篭もり中。

第二夫人、お父様を襲って妊娠し、責任感が強いお父様に責任を取ってもらった。

昼ドラもびっくりなドロ沼ですね。

精霊達が私の代わりにルイン様に我が家の家庭内事情を話してくれたみたい。

それを聞いたルイン様は……悲しそうな目で私を見た。


「馬鹿な大人達ですね。シエラ様には関係ないのに……シエラ様に悟られるような喧嘩をするなんて」

「でも、私はおばさんなのでそういうものだって割り切ってますよ?」

「そんなの割り切らなくていいです。もう……シエラ様だって俺と同じじゃないですか」

「…………っ…」


ルイン様と同じ。

それは……私が、家族に大切にされてないってこと?


「シエラ様が大切なら、そんな状態にならないでしょう?だって、家族なら幸せにならなきゃいけないんでしょう?」

「………それは……」


それは、私が目を背けていたことなの。

家族の……親達の仲が冷たくなった。

それに比例するように私も接してもらえなくなった。



だって、私はお父様とお母様が愛し合って産まれたから。


私という存在が二人の幸せの象徴だから。



でも、アイラは異母妹の同い年。


それが意味するのは、二人が愛し合った時期と同時期に、他人と愛し合ったということ。

だから……。


「ねぇ、シエラ様。貴女が望むなら俺がそんな冷たい場所から拐ってあげます」

「………ルイン、様……?」

「家族が愛してくれないなら、俺がいっぱい甘やかして蕩けさせて、逃げられないように……沢山、愛してあげます」


その言葉は甘美な響きで。



…………あぁ、酷い人。



目を背けていたことに目を向けさせて、傷ついた私を甘やかすなんて。

いいや、違うかもしれない。

この人は……私よりも家族の温もりを知らないから。

愛し、愛されることがなかったから。

その言葉が、私を傷つけているなんて……分かってないのかもしれない。


「俺は他の女なんか要りません。シエラ様だけでいいです。だから……」

「……………」


でもね。



「俺を愛して、俺に愛されて?」



私だけを見てそう言ってくれるルイン様の目が、闇を抱える真紅が本気を語ってくれているから。


「……………………はい……」


……その言葉はやっぱり、嬉しいんです。

ただ一人の大切な人と愛し、愛される関係って誰だって憧れるでしょう?

それが私が一目惚れして……まだ少しの時間しかいないけど、泣きそうになっていたら駆けつけてくれて……優しくて。

ちょっと怖いけど、でもそれは私を思ってくれてのことで。



……………その重さが、丁度いいなんて思ってしまう私も、ルイン様と同じで愛に飢えていたのかな。



もう遅いのかも。



「ルイン様」

「はい」

「好きです」

「俺も好きですよ」

「いつかお嫁さんにして下さいね」

「勿論です」


その言葉、頂きました♡


「《ルイン・エクリュ様に示す。私とルイン様が結ばれる未来を叶えることを》」

「………へ?」


ルイン様の両頬を押さえて、唇を重ねる。

彼の真紅の瞳が大きく見開かれて、目の前でキラキラしている。

私はそのまま舌を絡めて、八歳ならしちゃ駄目そう(精神年齢が三十代だからセーフだと願ってる‼︎)な大人なキスをした。


「んっ……ぅ…」

「………んぁ……」


まぁ、ここは軍部がある黒水晶宮で。

未婚の男女が人前でキスなんて、はしたない真似をしたら……まぁ、責任を取ってもらわなきゃいけない訳でして。



………周りの絶叫(主にミネルバ)が凄い。



そうだよねぇ。

ある意味、あの第二夫人と同じように既成事実を作ったんだし。

でも、後悔はしてません。

名残惜しげに離れた唇に、二人の唾液が糸を引く。



「シエラ様……」



蕩けるような顔をしたルイン様の、まぁ悩殺力の強さが凄い。

でも、私も負けてないのでもう一度触れるだけのキスをした。


「……ふふっ、既成事実成立です」

「…………既成事実、ですか?」

「未婚の男女が人前でキスしたら、責任を取ってもらわないと」

「…………それは…願ったり叶ったりですね」


蕩けモードのルイン様はヤバイほどの色気を醸し出していて……あ、ちょっと待って鼻血出そう。


「ついでにオリジナルですけど、呪文詠唱も捧げちゃったんで、ルイン様に逃げ道はありません」

「はい、構いません。呪文も、単にどういう現象を起こして欲しいかを教えてもらうためのものですから……俺が理解できれば問題ありません。貴女の呪文詠唱ねがい、聞き届けました」



クスクスと笑い合って、もう一度キスをしようとして……。



「ストーップッ‼︎」




ミネルバの絶叫で止められました。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ