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第42話 ハイエナを巻き込んだら、その行動力が凄かった


ちょっと著者の事情により、暫く不定期になります……ご了承下さいm(_ _)m

よろしくお願いします‼︎






休憩することになって、他の生徒達は総帥が用意した会議室に。

私はルインの執務室に来て、ソファに座った彼の膝の上に乗った。


「で?何が目的で私に話を合わせてって口パクで言ったのかしら?」


私がそう聞くと、ルインはにっこりと微笑む。

そして、あんな茶番劇・・・をした理由を話してくれたわ。


「まぁ、精霊術を使わ(念話し)なかったのは《精霊姫》であるシエラの異母妹対策だね」

「…………あぁ…」

「俺達の会話から、同じことができる人として接触してくるかもしれないからね」


《精霊姫》であるアイラは私達と同じように精霊の姿を視認し、言葉を交わすことができるわ。

だから、ルインは精霊術をあの子の前で使わないようにしたらしい。


「私、あの子の前で精霊に声をかけちゃったわ」

「あー……まぁ、でも?姉妹だから同じことができるって誤魔化せるんじゃないかな?」


…………そうよね。

異母妹にできるなら、姉である私もできるって納得してくれるかも。


「で。目的は俺がどんだけシエラを愛してるかを見せつけるためだよ」


曰く、ヒロインと攻略対象が恋をするなら、恋をする気持ちを削いでやろう作戦だったらしい。

他の女の人とイチャイチャしてれば、好きになることはないだろうと。

私はそれを聞いて、思わず苦笑してしまったわ。


「………それ、誰が思いついたの?」

「トイズだよ?」

「そうよねぇ」


ルインは私だけを見てるから、クラスメイトの男子のこととか気にしないと思ったの。

やっぱり、気にしたってことは誰かの言葉があったから……というか、トイズ様が協力してるからなのね。


「ちなみに、トイズ様にはどう話したの?」

「シエラの異母妹が惚れっぽくて。もしかしたら、俺やトイズ、アダムに恋をして略奪しようとするかもしれないから、対策考えてって」


…………まぁ…客観的に見たら間違いじゃないわよね。

婚約者がいる男性と睦まじくなって、結ばれるんだもの。

ネッサ様を愛してるトイズ様からしたら、そんな事態は積極的に回避しようとするでしょうし。


「だから、取り敢えず……アダムから先に気絶してもらったんです。こいつは直情的だから、どうなるか分からないですし」


と、そこで丁度……トイズ様が入ってくる。

その片手には地面に引きずられたアダム様。

…………扱いが酷いわね。


「よいしょっと」


トイズ様は(気絶したままの)アダム様を部屋の隅に転がして、紅茶を入れてくれる。

そして、彼は困ったような顔をした。


「いやぁ……最初はなんの冗談かと思いましたけど、エクリュ中佐のお話は本当でしたね。確か、ピンクの髪に翡翠の瞳の女子生徒ですよね?遠くで観察してましたが……彼女、エクリュ中佐を見る目が恋する乙女って感じでしたよ」

「「え゛」」

「第三者から見て、アレは完全に惚れてると思います」


…………嘘でしょ?

仲睦まじい私達の姿を見せても、惚れるって……普通はあり得ないでしょう?


「………ルイン…」


私は彼の服を掴みながら、見上げる。

声が若干震えていたし、きっと……涙目にもなっていると思うわ。

だって、それほど不安なんだもの。

あの子は《精霊姫》で、ヒロインで。

そして、私は当て馬なんだから。



「大丈夫だよ。俺にはシエラだけだから」



ルインは私を安心させるように優しく頬を撫でてくれる。

分かってるけど……恐い。

ルインがあの子に奪われたらって、嫌な未来を想像するだけで……おかしくなってしまいそう。

だって、私にとってルインはいなくちゃならない存在だから。

私の顔を見てルインは、困ったように笑う。

だけど……次の瞬間には、色っぽい笑みを浮かべていた。


「シエラ」


熱を帯びた声で名前を呼ばれる。

私の頬の輪郭を指先がゆっくりと辿る。

腰に回った腕が、私を捕らえて逃がさないように……。

彼は、飢えた獣のような雰囲気で私の唇にキスをした。


「………んっ…ぅ……」


深く、深く、吐息さえも奪うようなキスに目眩がしそう……。

ゆっくりと離れたルインは、そのまま私の耳元で囁いた。



「不安なら今から俺の想いを伝えるけど?」



肌が粟立つ感覚ってこういうのを言うと思う。

…………最近のルインの色気は尋常じゃないから、もう少し抑えて欲しいわ。

じゃないと、私、いつか心臓が止まってしまいそうなんだもの。


「…………ルインが想いを伝えてくれるのは嬉しいけど、離れられなくなっちゃうから……駄目」

「……………っ…‼︎」


本当は不安がなくなるまで、想いを伝えて欲しいし抱き締めていて欲しい。

でも、恥ずかしいって気持ちも確かにあって。

あぁ、もう……自分の感情なのに、持て余しちゃうわ。

そっと目を逸らしたのと同時に、むぎゅっ‼︎とルインに抱き締められた。


「あぁ……シエラ、可愛い‼︎」

「きゃぁっ⁉︎」

「今すぐ、ぐちゃぐちゃのドロドロに甘やかしたい‼︎可愛い‼︎」


…………えっと…どうしたのかしら?

なんか、急に……ルインがおかしくなった?


「ル……ルイン?」

「どーせ、シエラは俺が君だけだって言ったって不安がるだけだし?俺の言葉を、俺自身を信じてくれないシエラにとっても腹が立ってたけど……もういっそのこと、そんな不安になるシエラも可愛がろうと思って開き直ったんだよ」

「………………」

「という訳で、シエラをいっぱい可愛がるね?」


その言葉の通りにルインは〝可愛い〟を連呼しながら私の色んなところにキスの雨を降らせる。

頬に、額に、目尻に、指先に、首筋に、耳朶に、唇に……。

えっと……うん。

信じてない訳じゃないんだけど、不安がり過ぎてたってことね。

ルインはそれに怒ってたってことね?


「ルイン……ごめんなさい……。ルインを信じてない訳じゃないの……」

「いいよ。前世の記憶の中で、こんな展開の話がいっぱいあるから不安で仕方ないってだけなんでしょ?」

「……………えぇ……そうよ」

「なら、俺がそんな展開がこないようにぶち壊してあげればいいだけだからね。うん、そうしよう」


そう言ったルインはとても晴れやかな笑顔を浮かべていて。

きっと、私のこの不安は異母妹ヒロインの相手が決まるまで……ゲームが終わるまで続くんでしょうね。

だって、それだけルインが大切だから。

取られたくないって、本気で思っているから。



でも……………………ゲームのシナリオ云々以前に、ルインが世界を滅亡させないかを不安がった方がいいかもしれないわ。

なんか、後者の展開になりそうな可能性の方が高いんだもの。



「話の腰を折るようで悪いのですが……あの、前世の記憶とは?」

「「あ」」


そこで私達はハッとする。

そういえば、トイズ様がいたんだったわ。

………ルインは「うん、巻き込んじゃった方がいいかな?」と呟くと、彼に私達のことを話し始めた。

私の前世の記憶に、ゲームのこと。

今までの行動について。

そして……ヒロインと、攻略対象、悪役令嬢のこと。

その話を聞いたトイズ様はポカンっとしつつも……自分が攻略対象の一人で、ネッサ様が悪役令嬢という事実に衝撃を覚えているみたいだった。


「………つまり…エクリュ中佐が仰った惚れやすい……というのは、攻略対象と恋をするかもしれないということで。ネッサはその恋を邪魔する存在、または煽るための存在……そして、最後は断罪されるべき存在だと?」

「それがシエラの前世の世界にあったゲームの中の話ね。俺達はそれを回避するために動いてたんだよ」


トイズ様は顎に手を添えて考え込む。

そして……怒ったような顔になって、ルインを睨んだ。


「どうして、もっと早く話してくれなかったんですか」

「現時点でかなり条件が変わってるからね。そもそもの話、ここが本当にゲームの世界なのかも怪しいし、本当にヒロインが現れるかどうかも分からなかったんだよ。だって、俺は現にヒロインじゃなくてシエラに恋をして結婚してる。トイズはロータル嬢の婚約者になったし、アダムだって結婚したしね」


…………確かに、かなりゲームの条件とは変わっているわね。


「シエラ曰く強制力云々ってよく分からない力が働くらしいし……ヒロインが現れた。そうなると対となる悪役令嬢……ロータル嬢にも被害があるかもしれない。だから、トイズも巻き込もうと思って。協力してくれる?」

「………えぇ。ネッサに害を及ぼす可能性があるなら、潰します」

「そっか……良かったよ。まぁ、相手は貴族令嬢だし、《精霊姫》だから殺すとかしたら面倒だからね。それ以外の方法で排除しよう」


ルインとトイズ様は、黒い笑顔を浮かべる。

…………うわぁ、凄い。

なんか、とっても恐いわ。


「現時点でエクリュ中佐はどう動くおつもりで?」

「まぁ、第三者トイズの目線から見て、俺に恋をしたって言うなら……攻略対象として標的にされてるのは俺だよね?なら、徹底的に拒絶するかな」

「…………血の繋がった姉の夫に恋するなんて、精神を疑いますけどね。ですが、それでは甘いです」


トイズ様はブツブツと何かを呟きながら思考する。

そして、思いついたように頷いた。


「相手は《精霊姫》……つまり、国が両手もろてを上げて手に入れたい存在です」


強力な精霊術師であり、なおかつ精霊に愛された存在。

そんな存在がいれば、国はドンドン豊かになるし……他国への牽制にもなる。

国が欲しがるのも当たり前ね。



「ですから、国を巻き込んでしまえば……貴族令嬢である彼女は、逆らえない。強制的に王族に嫁ぐことになりますよ。あぁ、丁度いい年齢の王太子兼攻略対象がいますね。そいつを使いましょう」



そう言ったトイズ様は、とっても獰猛な笑みを浮かべていて。

まさに、ネッサ様を守るためにハイエナの本気を見せていたわ。

………彼は「では、早速行動しますね」と言って執務室を出て行く。

私とルインは神妙な顔で、見つめ合ったわ。


「…………………これ、初めからトイズに話しておけば面倒ごとも全部解決してたんじゃないかな?」

「…………そうね」




取り敢えず……ネッサ様のためなら、トイズ様(ハイエナ)の行動力が凄い。





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