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第40話 どうやら異母妹は何も知らなかったらしい


よろしくね‼︎







「あ、お姉様‼︎」



教室に向かっている途中で、アイラが声をかけてきた。

彼女は私の腕に抱きつく。


「おはようございます、お姉様‼︎」

「………おはよう…アイラ……」


ちょっと……いや、ルインの愛情表現の所為で寝不足の私に、この子の(大)声はキツイわ。

私の体調に気づいたのか、侍従のブルーノが慌ててアイラを諌めた。


「アイラ様。姉君であれど、エクリュ夫人です。それなりに相応しいご挨拶を……」

「あぁ、そうです‼︎それが言いたかったんです‼︎」


彼の言葉にハッとしたアイラ。

そして……ムスッとしながら、私に向き直る。

何かしら……?



「どうして結婚してるんですか‼︎」



『「…………………」』


一応言っておくわ。

教室に向かっている途中だったから、ここは廊下なの。

つまり、他にも生徒がいる訳で。

周りの人達もアイラの言葉に絶句していた。

まぁ、ね?

どうして結婚したのかって怒られてるみたいなんですもの。

異母妹に結婚したことを怒られるってどういう状況よね。


「あの……私はどうしてそう言われてるのかしら?」

「だって、私、お姉様が結婚しただなんて聞いてません‼︎」

「……だって、私じゃ連絡しようがないわ。私、お父様に嫌われてるから。私が結婚しようがどうでもよかったから、お父様は貴女に伝えなかったんだと思うわよ?」

「えっ⁉︎」


アイラはそれを聞いて目を見開く。

そして、思いっきりブルーノの方に振り返った。


「ブルーノ君‼︎どうしてですか‼︎」

「いや……その……」


………あぁ…そういえば。

お父様とお母ラティナ様の話は結構有名だものね。

私とアイラは、第一夫人の子と第二夫人の子。

そう簡単に全てをアイラに話せないってことかしら?


「授業が始まってしまうわ。先に行くわね」


私は話すのが面倒になって、歩き出そうとする。

しかし、アイラはムギっと私の腕を掴んだ。



「駄目です‼︎お姉様には離婚してもらわないと‼︎」



「ヒィッ⁉︎」


…………ん?

隣を見ると、顔面蒼白なひよこ。

昨日に引き続き気絶しそうになってるわよ?


「おっ……お前は何を以てしてエクリュ夫人を離婚させようとしてんだぁっ‼︎」

「ひゃうっ⁉︎」


ひよこは顔面蒼白のまま、アイラの肩を掴む。

そして、鬼気迫る顔で彼女を睨んだ。


「どーして離婚なんて単語が出てくる‼︎」

「え?だっ……だって‼︎貴族の結婚は政略結婚だって……そんなの、お姉様が可哀そーー」

「何も知らない癖に馬鹿言ってんじゃねぇよ‼︎エクリュ夫妻は恋愛結婚だわ‼︎つーか、軽々しくあの二人を離そうとするな‼︎もし、この場にエクリュ侯爵がいたらどうなってたかっ……‼︎」


………最近真面目になったと聞いていたひよこが、口調が崩れるくらいに慌ててるわね。

ルインの危険性をよぉーく理解してるからかしら?


「えっ……恋愛結婚?本当に?無理やりじゃないんですか?」

「そうだ‼︎逆にお前が恋愛結婚の邪魔してるわ‼︎」

「……だっ…だって‼︎お父様は何も教えてくれないし、使用人達もっ……‼︎」

「話せる訳ねぇだろ‼︎お前の父上とエクリュ夫人の母上が離婚した原因に‼︎」

「……………え?」


アイラは目を見開いて固まる。

あら……この反応は知らなかった感じなのかしら?

………って、思っていたらひよこが私に土下座してたわ。

え?何事?


「どうなさったの?」

「…………人様のお家事情に他人が口を出してしまったので……大変申し訳ございません……」


………あら……本当にあの俺様は真面目になったのねぇ。

私は笑ってその謝罪を受け入れた。


「別にいいわよ。私はもうジキタリス家の者じゃないし」

「ですが……」

「他の皆さんが知ってるような事情だし……逆にアイラがそれを知らなかったことに驚きだわ」


面倒になりつつも私はアイラにジキタリス家の事情を話す。

私の両親は本当は恋愛結婚で。

第一夫人……私のお母様だけを妻にすると宣言したのに、同い年の娘が現れたこと。

それが原因でお父様とお母様の間に深い溝ができて、関係修復ができなくなったこと。

このままではお母様が自殺しそうだったから、両親の離縁を手伝ったこと。

それが原因で、離縁してもお母様を愛しているお父様に憎まれて嫌われたこと。

だから、私が何をしようがお父様は放置で。

結婚式さえジキタリス家の者は誰も来なかったことを話した。

余りにも簡単に事情を話してしまうものだから、周りの人達もギョッとしてしまったわ。


「あの……エクリュ夫人?そんな簡単に話しちゃっていいんですか……?そういうの弱みになるんじゃ……」

「いいんじゃないかしら?どうせ、社交界でも有名な話だし」


ふぅ……と息を吐くと、アイラはポロポロと泣き出していた。

……うわぁ…なんだかあざとさMAXの涙だわ。


「そ……そんなの、知りませんでした……だっ…だって‼︎お母様は、お父様と第一夫人は政略結婚だって……‼︎」

「貴女のお母様が何を言ったかは知らないわ。興味がないもの。私としては自分の母があのままだと自殺しそうだったから、離縁を唆しただけだしね。とにかく、私の結婚は恋愛結婚だから貴女に離婚しろと言われる筋合いはないの。分かったかしら?」

「ごっ……ごめんなさっ……私……私っ‼︎うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ‼︎」


アイラはとうとうしゃがみ込んで、ボロ泣きし始める。

…………どうしましょう……凄く面倒くさいわ。

私はブルーノに視線を向けて、苦笑した。


「後はお願いしてもいいかしら?これ以上ここにいたら、本当に遅れてしまうわ」

「えっ⁉︎」


彼の顔にはこの状況をどうしろと?って書いてあるけど、私はそれを無視して歩き出す。

だって、面倒だもの。




…………あぁ……というか、これ、ゲームのシナリオになかったわね。

これからどうなるのかしら?




「あの……いいんですか……あの異母妹ひと……」


いつの間にか後ろに来ていたひよこが恐る恐る聞いてくる。

私は彼の方を向かずに頷いた。


「だって、昨日、あの子に抱きつかれたからルインが怒っちゃったのよ?とっても大変だったの」

「ひぃ……エクリュ侯爵が怒るなんて……」

「ところで」

「はい?」

「普通に会話してるけど、大丈夫なの?」

「……………きゅぅ……」


ひよこは勢いよく倒れる。

………どれだけ私が…というか、ルイン関係がトラウマになってるの?



丁度よくすれ違った先生にひよこを託して、私はそのまま教室に向かったわ。





*****




「朝は凄かったみたいね?」



カフェテリアでサンドウィッチを食べながら、ネッサ様が苦笑する。

他学年にも広まっているのね……。

ちなみに、気絶したひよこと……アイラとブルーノは午前中、教室に戻ってこなかったわ。

私も溜息を吐きながら、頷いた。


「まさか、ジキタリス家の事情を知らないとは思わなかったの。お父様もお話ししてなかったみたい」

「それはそれで問題ね」

「まぁ、私には関係ないわ」


お父様とは音信不通だし、どうなってるか知らないけれど。

でも、それぐらいは教えていたと思っていたわ。

でも、これからどうなるかしらね?

ゲームではアイラはジキタリス家の事情を知る機会がなかったもの。

ゲームの強制力は怖いけど……あんまりグズグズしてると、またルインに……。


「シエラ様、顔真っ赤よ?」

「っ……‼︎」


私はプイッと顔を背ける。

クスクスと笑うネッサ様はどうやら私が顔を赤くした理由をなんとなく察しているみたいね?

それが少し憎くて……私は反撃に出ることにしたわ。


「あ、ネッサ様。首に赤い跡が……」

「っっっ⁉︎」


ガバッと勢いよく首を手で隠す。

ネッサ様の顔はそれこそ、茹で上がったタコみたいに真っ赤になっていて。

それを見て私はニヤァ……と笑った。


「ふぅん?その反応からして見ると……跡が残るようなことはしているってことね?」

「シ……シエラ様っっっ‼︎」

「お互い恥ずかしい思いをしたから、おあいこでしょう?」

「…………シエラ様はあんまり恥ずかしがってないみたいなのだけど……?」


ジトッとした目で見られて、私は考え込む。

………なんか、こういう可愛い顔されると…もう少し虐めたくなるわね。

私はワザとらしく頬に手を添えると、ふっと目を伏せた。


「あら?恥ずかしいわよ?だって……ルインの男らしい顔を思い出しちゃうと……」

「〜〜〜っ‼︎刺激が強過ぎるから、止めて下さるっっ⁉︎」

「うふふっ、冗談よ?だって、ルインの全部が私のモノだもの。他の人に話さないわ」


なんか、ネッサ様って可愛らしい反応なさるから揶揄からかいたくなっちゃう。

ネッサ様の可愛い反応に周りの男子が頬を赤く染めているけど……残念ね。

この人には怖ーいハイエナがいるから。




そのまま、私達は他愛ない会話をして、昼食を終えた。



ちなみに……午後は、ひよこしか戻ってこなかったわ。

アイラとブルーノはどうしたのかしらね?






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